【樹脂】ヘリサート(インサート)の特徴と選定ポイント【アルミ】

機械要素

ネジ穴の補強や修復に使用されるヘリサート(Helisert)は、機械設計において重要な要素の一つです。特に、アルミや樹脂などの軟質材へのネジの耐久性を向上させる目的で広く用いられます。本記事では、ヘリサートの特徴、メリット・デメリット、選定ポイントについて詳しく解説します。


ヘリサートとは?

ヘリサートとは、コイル状の金属インサートをネジ穴に挿入し、ネジの強度や耐久性を向上させる部品です。

  • 主にアルミニウム、マグネシウム合金、樹脂などの低強度材料に使用される
  • オーバートルクによるねじ山の損傷を防ぐ
  • 破損したねじ山の修復にも活用可能

ヘリサートの一般的な材質

材質特徴用途
ステンレス(SUS304)標準仕様、耐食性良好一般用途
インコネル高温・耐摩耗性航空宇宙、エンジン部品
リン青銅耐腐食性・導電性電気部品

アルミニウム・マグネシウム合金・樹脂などの低強度材料に最適

機械設計において、ねじの締結部は強度や耐久性が求められる重要なポイントです。しかし、アルミニウムやマグネシウム合金、樹脂などの低強度材料は、ねじの繰り返し使用による摩耗や、過大な締付けトルクによる破損のリスクが高くなります。

そこで、こうした問題を解決するために「ヘリサート」が活用されます。本項では、ヘリサートが低強度材料に適している理由とその利点について詳しく解説します。


低強度材料にヘリサートが必要な理由

アルミニウム合金

特徴

  • 軽量で加工しやすいが、鉄やステンレスと比較して軟らかく、ねじ山が摩耗しやすい
  • 繰り返しのねじ締めや強いトルクがかかると、ねじ山が潰れる

ヘリサートの利点

  • ステンレス製のねじ山を形成することで、耐摩耗性が向上
  • ねじの抜き差しによる摩耗を防ぎ、繰り返し使用が可能
  • アルミ部品の寿命を延ばし、設計の自由度が向上

マグネシウム合金

📌 特徴

  • 非常に軽量で強度も高いが、ねじ部の強度はアルミよりも低い
  • 酸化しやすく、ねじ山の劣化が早い

ヘリサートの利点

  • ねじ山の強度を大幅に向上させ、繰り返し使用でも破損しにくい
  • 酸化によるねじ部の劣化を抑える
  • 締結部の強度向上により、設計時の補強が不要になる場合がある

樹脂(プラスチック)

📌 特徴

  • 軽量で絶縁性があるが、ねじ山の保持力が低い
  • 熱や摩耗に弱く、長期間の使用でねじ部が変形しやすい

ヘリサートの利点

  • 樹脂部品でも高強度のねじ締結が可能になる
  • 長期間の使用でも変形しにくく、耐摩耗性が向上
  • ねじのトルク管理がしやすくなり、締結強度の安定化に貢献

ヘリサートの適用事例

アルミ製の機械フレームにおけるボルト締結部
マグネシウム合金製の部品のねじ補強
樹脂製筐体のねじ止め部分の強度向上
エンジンブロックやシリンダーヘッドの補修


ヘリサートは、アルミニウム・マグネシウム合金・樹脂などの低強度材料におけるねじ山の補強に非常に有効です。これにより、締結部の強度が向上し、繰り返しの使用や高トルクでの締結にも耐えられるようになります。

特に、軽量化が求められる航空宇宙、自動車、電気機器などの分野では、ヘリサートを活用することで設計の自由度が広がります。適材適所でヘリサートを活用し、より強固で信頼性の高い設計を目指しましょう!

ヘリサートのメリットとデメリット

メリット

ネジの耐久性向上

  • アルミや樹脂などの軟質材でも繰り返しの締結が可能
  • ボルトの抜き差しによる摩耗を抑制

ねじ山の修復が可能

  • 既存のねじ穴が摩耗・破損した場合でも修理できる

耐振動性の向上

  • 一部のヘリサート(ロックタイプ)は、自己ロック機能があり、ゆるみ防止に効果的

軽量材料の使用が可能

  • 強度が不足しがちなアルミフレームや樹脂部品に適用可能

デメリット

🚫 取り付けが面倒

  • 専用工具(タップ、挿入工具など)が必要
  • 作業ミスするとヘリサートが脱落する可能性がある

🚫 コスト増

  • 通常のタップ加工に比べて部品コスト・作業コストが増加

🚫 耐衝撃性は低い

  • 高い衝撃が加わるとヘリサートが抜けるリスクがある

ヘリサートの種類と用途

ヘリサートには、いくつかの種類があり、用途に応じた選定が必要です。

標準タイプ

特徴

  • 一般的な用途に最適
  • ねじの摩耗を防ぎ、耐久性を向上

📌 用途

  • アルミ部品、樹脂部品、汎用機械部品

ロックタイプ(スクリューロック)

特徴

  • セルフロック機能(締結後にネジが緩みにくい)
  • 高振動環境での使用に適する

📌 用途

  • 自動車、航空機、振動が多い機械部品

ねじ山修復用タイプ

特徴

  • 破損したねじ山の補修専用
  • 既存のねじ穴を再利用可能

📌 用途

  • 機械メンテナンス、修理作業

ヘリサートの選定ポイント

ヘリサートを選定する際には、以下のポイントを考慮する必要があります。

材質の選定

  • 一般用途 → ステンレス(SUS304)
  • 高温・高耐久が必要 → インコネル
  • 電気的特性が重要 → リン青銅

ネジサイズの選定

ヘリサートのサイズは、使用するボルトのネジサイズに合わせて選定します。

例:M6のボルトを使用する場合
→ M6用のヘリサートを選定(挿入後の内径がM6になる)

🚫注意

  • ヘリサートを挿入するためには、専用の下穴加工が必要(通常のM6タップとは異なる)

取付け環境の考慮

  • 振動が多い場合 → ロックタイプを選定
  • 取り付け後に調整が必要 → 標準タイプ(フリーランニング)を選定
  • 修理用途 → ねじ山修復タイプを選定

工具の準備

ヘリサートの取り付けには、以下の工具が必要になります。

🔧 必要な工具

工具役割
専用タップヘリサート専用のねじ穴を作る
挿入工具ヘリサートをねじ穴に挿入
折り取り工具挿入後、タング(取り付け用の突起)を折る

🚫 通常のタップではヘリサート用のねじ穴は作れないので注意が必要!


ヘリサートの活用事例

用途活用例選定タイプ
アルミフレームのねじ補強アルミ製機械カバー標準タイプ
高振動環境でのゆるみ防止エンジン部品、航空機部品ロックタイプ
破損したねじ山の修復機械のメンテナンス修復タイプ

代替品を徹底比較!エンザート・イリサートの特徴と選び方

機械設計において、アルミや樹脂などの軟質材にねじを使う際、ネジ山の強度を確保するために「ヘリサート」がよく使われます。しかし、ヘリサート以外にも似た役割を持つ製品があり、それぞれ特性が異なります。

本項では、「エンザート」「イリサート」 の2つのヘリサート類似製品について、それぞれの特徴や選定ポイントを解説します。


エンザート

エンザートは、金属や樹脂に直接ねじ込んで使うインサートナットです。外側にタップが切られているため、ねじ込むだけで強固に固定できます。

メリット

✅ 高い引張強度とねじ込み強度を持つ
✅ 追加工なしでそのままねじ込める
✅ 特にアルミや樹脂への取り付けに最適

デメリット

❌ ヘリサートよりも加工精度が必要
❌ 一度挿入すると取り外しが難しい


イリサート

イリサートは、超薄肉のインサートナットで、ヘリサートに似ていますが、よりコンパクトな設計が可能です。

メリット

✅ 薄肉部品でも使いやすい
✅ 精密機器や航空機部品など、軽量化が求められる場面で有利
✅ 特殊な材料にも適用可能

デメリット

❌ 専用の取り付け工具が必要
❌ 高強度な材料には適用が難しい場合がある


ヘリサートと類似製品の選び方

製品名特徴適用材質取り付け方法主な用途
ヘリサートばね状のスリーブでねじ山を補強アルミ・樹脂・鉄タップ穴に挿入精密機器・航空機・エンジン部品
エンザートねじ込み式のインサートアルミ・樹脂・軽金属ねじ込み式工作機械・家具・樹脂成形品
イリサート超薄肉のねじ補強精密部品・特殊素材専用工具で挿入軽量部品・航空機・特殊用途

  • 高強度で一般的な用途なら「ヘリサート」
  • 簡単にねじ込み可能で強固な固定なら「エンザート」
  • 薄肉部品や精密機器には「イリサート」

用途に応じて最適な製品を選べば、より強固で長寿命な設計が可能になります。適材適所で使い分けて、機械設計の精度を向上させましょう!

まとめ

ヘリサートは、アルミや樹脂などの軟質材にネジをしっかり固定するために使用される
標準タイプ・ロックタイプ・修復タイプの3種類があり、用途に応じて選定が必要
取付けには専用工具が必要で、正しい加工が求められる
振動環境ではロックタイプ、高温環境ではインコネル製を選定するのがポイント

ヘリサートを適切に活用することで、ねじの耐久性を向上させ、メンテナンスコストを削減することができます!


はじめ
はじめ

ボルトやナット、軸受け、ギアといった基本的な要素部品の機能と選び方を詳しく紹介します

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