【周波数制御】インバーターの機能と特性【省エネ】

動力選定

インバーターは、現代の機械設計において欠かせない装置の一つです。

かつては固定回転数でしか運転できなかったモーターも、
インバーターの導入により、回転数や出力の調整が可能になりました。

これにより、設計の自由度が高まり、
機械システム全体の効率性や
省エネルギー性能が飛躍的に向上しました。

さらに、インバーターは、急激な負荷変動や
衝撃を防ぐ機能も備えており、
モーターや機械の寿命延長にも寄与します。

この記事では、インバーターの基本機能や特性に加え、
モーターの回転数を計算する方法、
また具体的な用途例について詳しく解説します。

これにより、機械設計におけるインバーターの重要性を理解し、
最適な選定や活用方法を見つける手助けとなることを目指します。

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インバーターの基本機能

インバーターは、交流電源(AC)の周波数と電圧を変換して、
モーターの回転数や出力を調整する装置です。

以下が主な機能です。

周波数制御による回転数調整

インバーターは、電源周波数を任意に調整することで、
モーターの回転数を制御します。

これにより、固定速回転しかできない通常のモーターが、
柔軟に速度を変えられるようになります。

周波数の基本的な説明

周波数は、モーターを動かす電源の交流信号が
1秒間に何回変化するかを示す指標であり、
単位はヘルツ(Hz)です。

日本では、地域によって以下のように電源周波数が異なります。

  • 50Hz
    • 主に東日本(東京を含む)で
      使用される周波数
  • 60Hz
    • 主に西日本(大阪を含む)で
      使用される周波数

この違いにより、同じモーターを使用しても、
地域ごとに回転数が異なる場合があります。

周波数の変化による影響

  1. 回転速度の変化
    • 周波数を上げると回転数が速くなり、下げると遅くなります。
    • これは、ポンプやファンの流量、圧力、速度を調整する場合に活用されます。
  2. トルク特性への影響
    • トルクはモーターの設計や負荷の特性によって異なりますが、
      一般的に周波数の低下とともにトルクが減少する傾向があります。
    • そのため、低周波での運転時には注意が必要です。
  3. 発熱・振動への影響
    • 周波数を通常の範囲外で使用すると、
      モーターが過剰に発熱したり、
      振動が大きくなったりする場合があります。

周波数と電圧の関係(V/f制御)

インバーターでは、周波数を変える際に
電圧も比例的に調整(V/f制御)します。

これにより、モーターの磁束が一定に保たれ、
効率的で安定した運転が可能となります。

たとえば、50Hzで200Vのモーターを40Hzで運転する場合、
電圧は次のように計算されます。

\( \displaystyle V=\frac{200} {50}×40=160V\)

この制御により、低周波での運転でも
適切なトルクが確保され、安定した回転が実現します。

周波数はモーター性能の調整において極めて重要な要素であり、
その理解が適切な機械設計に直結します。


省エネルギー効果

インバーターを使用することで、
モーターの負荷に応じた最適なエネルギー供給が可能となり、
省エネルギーを実現します。

インバーター使用で省エネになる理由

インバーターは、モーターの回転速度や出力を精密に制御する装置です。

これにより、モーターが必要以上のエネルギーを消費することを防ぎ、
省エネルギーを実現します。以下に詳しく説明します。

負荷に応じた回転速度の最適化

従来のモーター制御では、
モーターは常に一定の回転速度(定格速度)で動作します。

この場合、負荷が小さい場合でもフルパワーで動作し、
エネルギーを浪費してしまいます。

インバーターを使用することで、
負荷に応じた適切な回転速度で運転することが可能になります。

例えば、ポンプやファンでは以下の関係が成り立ちます。

  • 流量は回転数に比例
  • 圧力は回転数の2乗に比例
  • 消費電力は回転数の3乗に比例

このため、回転数を10%下げるだけで、
消費電力は約27%も削減できます。

負荷に応じて回転数を制御できるインバーターは、
この特性を活かして大幅な省エネを実現します。


ソフトスタートによる電力ピークの削減

インバーターを使用しない場合、
モーターは始動時に大量の電流を一気に消費します(いわゆる突入電流)。

これにより、電力システム全体に大きな負荷がかかり、効率が低下します。

インバーターは、モーターの回転速度を
ゆっくりと上昇させる「ソフトスタート」を可能にします。

これにより、以下の効果があります。

  • 突入電流が抑えられるため、電力の無駄を削減
  • 設備への負荷が減り、モーターや配線の寿命が延びる
  • 起動時や停止時の急激な電流変動を防ぎ、
    モーターや機械部品への負荷を軽減します。

必要以上の電圧・電流供給を防止

インバーターは、周波数と電圧の比率(V/f比)を最適に調整します。

これにより、負荷に応じた必要最低限の電圧と
電流だけが供給されるため、エネルギー効率が向上します。

たとえば、軽負荷状態で定格電圧を供給すると
過剰な電力消費が発生しますが、インバーターはそのような無駄を防ぎます。


効率的な温度管理

インバーターを使用すると、
モーターが必要以上に加熱することを防げます。

回転数を最適化することで、以下の点でエネルギー効率が高まります。

  • 冷却ファンの回転速度を最適化することでさらなる省エネが可能
  • モーターの冷却装置が必要な場合でも消費電力が抑えられる。

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インバーターによるモーター回転数の調整

モーターの回転数 (N) は、次の公式で計算できます。

\( \displaystyle N=\frac{120×f} {P}\)

  • N: モーターの回転数 (rpm)
  • f: インバーターで設定する周波数 (Hz)
  • P: モーターの極数

計算例

4極モーターを50 Hzで使用している場合

\( \displaystyle N=\frac{120×50} {4}=1500rpm\)

インバーターで周波数を40 Hzに設定すると

\( \displaystyle N=\frac{120×40} {4}=1200rpm\)

このように、周波数を変えることで回転数を柔軟に調整可能です。


インバーターを導入する際の注意点

モーターとの相性

インバーター対応モーターを選ぶことで、トラブルを防止できます。

周波数範囲の確認

モーターは設計上、許容できる周波数範囲が定められています。

過度な高周波や低周波での運転は、
発熱や振動の原因となり、故障リスクが高まります。

設定可能な周波数範囲を超えた運転は、
モーターの寿命を縮める可能性があります。

ノイズ対策

インバーターは高周波ノイズを発生するため、
適切なシールドケーブルやフィルタを使用することが重要です。


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まとめ

インバーターは、モーターの柔軟な速度調整や省エネルギー運転、
機械寿命の延長に寄与する重要な装置です。

設計時には、モーターの仕様や運転条件を考慮し、
適切なインバーターを選定することが求められます。

機械設計における動力の効率化と最適化を実現するために、
インバーターの特性をしっかり理解し、活用しましょう。



はじめ
はじめ

モーターやアクチュエーターなど、
機械の駆動源に関する基礎知識と
選定基準をまとめています。

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