機械設計を学び始めると、よく目にする単位に「kg(キログラム)」「kgf(キログラム重)」「N(ニュートン)」があります。
一見すると同じ「力や重さ」を表しているように見えますが、実際には意味や使い方が大きく異なります。
初心者の方が最も混乱しやすいポイントが、質量(kg)と力(Nやkgf)の違い です。
設計計算を正しく行うためには、この違いをしっかり理解しておく必要があります。
本記事では、機械設計における kg・kgf・N の違いと使い分け を、初心者にもわかりやすく具体例を交えて解説します。
kg(キログラム)とは?
kgの意味
- 質量の単位(国際単位系 SI 単位)
- 物体そのものが持つ「重さのもと」を表す量
- 場所(地球・月など)が変わっても変わらない
🔍 例)
- 水1リットルの質量 = 1 kg
- 鉄の塊5 kg → どこに持っていっても5 kg
注意点
設計計算で「kg」と書かれていたら、それは「力」ではなく「質量」を表しています。
N(ニュートン)とは?
Nの意味
- 力の単位(SI単位)
- 1 N = 1 kg の質量に 1 m/s² の加速度を与える力
- 力を表すときの国際的に標準的な単位
重力加速度を使って質量から力に変換できます。
\( \displaystyle F=m×g\)
ここで、
- m:質量(kg)
- g:重力加速度(9.80665 m/s²)
🔍 例)
- 質量 1 kg の物体 → 地球上では 9.81 N の力で地面を押している
kgf(キログラム重)とは?
kgfの意味
- 力の単位(重力単位系)
- 「質量1 kg の物体が地球上で受ける重力の大きさ」を1 kgfと定義
つまり…
\( \displaystyle 1kgf=9.80665N\)
なぜ使われるのか?
- Nは初心者にとって直感的にイメージしづらい
- 「10 kgf の力」と言えば「10 kg の物を持ち上げるときの力」と直感的に理解できる
- 古い設計資料や工具の仕様(例:トルクレンチ)では今でも kgf が使われることがある
kg・kgf・N の違いを表で整理

単位 | 種類 | 意味 | 例 |
---|---|---|---|
kg | 質量の単位 | 物体そのものの量 | 5 kgの鉄 |
N | 力の単位(SI) | 物体に働く力 | 5 kgの物体が地球上で 約49 Nの重力を受ける |
kgf | 力の単位(重力単位系) | 1 kgの質量に働く重力 | 1 kgf ≈ 9.81 N |
換算入力フォーム
kgf➡N(ニュートン)
N(ニュートン)⇒kgf
機械設計での使い分け
基本はN(ニュートン)
- 国際単位系(SI単位)で標準化されている
- JISやISOの規格でも力はNで表記される
- 設計図やCAE解析ソフトでも基本はN
kgfが使われる場面
- 古い図面や設計資料
- ボルトの締付けトルク(kgf·cm, kgf·m)
- 直感的な説明が必要なとき

ただし新しい設計ではNやN·mに統一するのが推奨されています。
よくある注意点
- kgとkgfを混同しない
- 「100 kgの力」と書いてある資料は、正しくは「100 kgf(≒ 981 N)」のことが多い
- 換算を必ず確認する
- 1 kgf = 9.81 N を忘れない
- トルクや応力計算ではN系を使う
- 応力:N/mm²(= MPa)
- トルク:N·m
具体例で理解する
例1:質量から力に変換
質量10 kgの物体があるとき、地球上での重さ(力)は?
- Nで表す
\( \displaystyle F=m×g\)
- kgfで表す
\( \displaystyle 10kgf\)
👉 設計図では「98.1 N」と表記するのが正しい。
例2:ボルトの締付けトルク
古い工具に「10 kgf·m」と書かれていた場合、N·mに直すと?
\( \displaystyle 10×9.81=98.1 N\)
👉 現代のトルクレンチや解析では「N·m」が標準。
まとめ
✔ kg は質量の単位、Nとkgfは力の単位
✔ 1 kgf = 9.81 N で換算される
✔ 機械設計では基本的に N(ニュートン)を使うのが国際標準
✔ 古い資料では kgf が残っているので換算に注意
✔ kg(質量)と kgf(力)を混同すると、設計ミスや安全性低下につながる
初心者は「質量=kg、力=N」という基本を押さえ、必要に応じて kgf との換算を正しく行うことが大切です。
コメント