機械設計を行う上で重要な考え方の一つが 「部品の共通化」 です。
これは、異なる装置や製品であっても
「同じ規格や同じ部品をできるだけ使う」
という設計手法のことを指します。
例えば、同じサイズのねじやベアリングを採用すれば、
製作や組立の効率が向上し、在庫管理も簡単になります。
部品共通化の基本的な考え方とメリット・注意点を初心者向けにわかりやすくまとめます。
部品の共通化とは?
部品共通化とは、機械や装置を構成する
ねじ・ベアリング・軸・フレーム・カバーなどをできるだけ統一して設計することです。
🔍 例)
- M5のねじを多用し、M4やM6を極力使わない
- 複数の装置で同じモーターやギアを使う
- フレームのアルミ形材を同じ断面寸法で揃える
つまり「選択肢を絞り、種類を減らす」ことが共通化の基本です。
部品を共通化するメリット

在庫管理が楽になる
同じ部品を使い回せるため、部品点数が減り、倉庫や現場での管理がシンプルになります。
コスト削減につながる
大量に購入できるため、仕入れコストを下げやすくなります。
加工部品であっても「同じ治具や工具で加工できる」ため製造コストが下がります。
組立・保守が簡単になる
現場作業者が使う工具の種類が減り、組立作業が効率化します。
さらにメンテナンス時も同じ部品で修理できるため対応が早くなります。
設計工数の削減
新しい製品を設計する際にも「すでに使っている部品」を流用できるため、
設計にかかる時間を短縮できます。
部品共通化の具体例とメリットをわかりやすく解説
機械設計では「部品をできるだけ共通化する」ことが重要です。
部品をバラバラにすると在庫管理や製造コストが増える一方で、
共通化することで作業効率やコスト削減につながります。
ここでは、実際の設計でよく行われる 部品共通化の具体例 を紹介します。
1. ねじの呼び径を統一
ねじのサイズを統一することは、共通化の最もわかりやすい例です。
🔍 例えば「M5のねじで統一」すると…
- 工具が同じで済む → ドライバーや六角レンチを使い分ける必要がない
- タップ加工が楽になる → 下穴径やタップが共通になり、加工効率アップ
- 組立作業がスムーズ → 作業者がねじを間違えるリスクを減らせる
もしM4、M5、M6が混在すると、
それぞれに工具やタップが必要になり、管理も煩雑になります。
2. ベアリングのサイズを揃える
ベアリングもできるだけ同じサイズを選ぶことで大きなメリットがあります。
🔍 例)「φ20 のベアリングを標準化」
- 在庫が一種類で済む
- 設計がシンプル → 同じ軸径・ハウジング寸法で統一できる
- 保守が楽 → 故障時にすぐ交換可能
もちろん荷重や回転数の条件によって最適なサイズは異なりますが、
できるだけ共通化すると現場の運用が楽になります。
3. フレーム材を統一
装置や筐体を構成する アルミフレームや鋼材 を揃えるのも効果的です。
🔍 例)「アルミフレームの断面を40×40で統一」
- 加工や組立がシンプル → 同じブラケットやボルトで取り付け可能
- 部品管理が容易 → 長さだけ変えれば使い回せる
- 設計の自由度も残せる → 強度計算もしやすくなる
異なる断面をバラバラに使うと、それぞれ専用の金具やボルトが必要になり、
在庫や調達の手間が増えます。
4. モーター・減速機の統一
モーターや減速機も、トルク帯を考慮して型番を共通化すると効果的です。
👉 例:「標準的なトルク帯をカバーするモーターを採用」
- 複数の装置で流用可能 → メンテナンス部品が共通化できる
- 仕入れコストを削減 → 同じ型番をまとめて購入できる
- 設計の手間を削減 → 過去の設計データを流用できる
ただし、装置ごとに必要な出力が異なるため
「オーバースペックになりすぎない範囲で統一」することがポイントです。
部品の共通化は、
- ねじ → 工具やタップの統一
- ベアリング → 軸径・ハウジングの統一
- フレーム材 → 加工性・在庫管理の簡素化
- モーター・減速機 → 保守性・コスト削減
といった形で実践できます。

共通化することで コスト削減・効率化・保守性向上 が実現できますが、
無理に統一するとオーバースペックや設計制約につながることもあるため、
性能と効率のバランス を考えながら採用することが大切です。
部品共通化の注意点とは?デメリットと対策をわかりやすく解説
機械設計では「部品の共通化」は効率化やコスト削減につながる大事な考え方です。
しかし、何でも共通化すれば良いというわけではありません。
むしろ、間違った共通化は コスト増・性能低下・在庫の無駄 を生むこともあります。
ここでは、部品共通化の注意点とデメリット をわかりやすく解説します。
1. 性能が最適化されない場合がある
部品を共通化することで「必要以上の性能」を持たせてしまうケースがあります。
🔍 例):モーターを共通化した場合
- 小型装置には「大きすぎるモーター」が搭載される
- 結果として コストが無駄 にかかる
- 装置全体が 重くなる ため、使い勝手や省エネ性も悪化
つまり、共通化が必ずしも「最適化」ではなく、
時には オーバースペックによる非効率 を生むのです。
2. 設計自由度が下がる
共通化は効率的ですが、その分 設計の選択肢を制限する ことになります。
🔍 例)
- フレーム材を共通化 → 強度的に余裕が足りず、補強が必要になる
- ねじをすべてM5に統一 → 装置によっては「強度不足」になる場合がある
このように、共通化を優先しすぎると
本来の性能や使いやすさが損なわれる 可能性があります。
3. 過剰在庫のリスク
共通化は在庫管理をシンプルにしますが、逆にリスクを生むこともあります。
🔍 例)
- ある共通部品を大量に仕入れたが、製品仕様変更で使わなくなる
- 生産中止になった製品用の部品が 余剰在庫 となり、管理コストが増える
共通化によって「在庫の種類」は減りますが、
需要がなくなったときに 在庫量そのものが無駄になるリスク があるのです。
部品共通化は大きなメリットがありますが、以下のような デメリットや注意点 も忘れてはいけません。
- 性能が最適化されない → オーバースペックや無駄なコスト
- 設計自由度が下がる → 本来の性能や使いやすさが損なわれる
- 過剰在庫のリスク → 管理コストや保管スペースが無駄になる

ポイントは「どこまで共通化すべきか」を見極めることです。
効率化と最適化のバランス を意識して設計に取り入れると、
共通化のメリットを最大限に活かせます。
部品共通化を成功させるコツとは?効率化のための工夫とルール化
部品の共通化は、コスト削減・効率化・標準化に大きな効果を発揮します。
しかし、やみくもに進めると「オーバースペック」「在庫の無駄」などの
デメリットを招くこともあります。
そこで今回は、部品共通化を成功させるための具体的な工夫とルール化のポイント を解説します。
1. 標準部品の選定ルールを作る
まずは「基本的に使う部品」をルール化することが大切です。
🔍 例)
- ねじは M5 六角穴付きボルト を基本とする
- ベアリングは φ20・φ30 のサイズを標準とする
- フレームは 40×40アルミフレーム を優先採用する
こうして 標準サイズ・型番を明確化 しておくことで、設計者ごとにバラつくことを防げます。
2. 部品表(BOM)を横展開する
既存の製品やプロジェクトで使用した部品を
部品表(BOM)として整理し、再利用できる仕組み を作りましょう。
👉 ポイント
- 過去設計のBOMをデータベース化する
- 共通化候補の部品に「優先採用」のタグをつける
- CADライブラリと連携してすぐ呼び出せるようにする
こうすることで、「同じような部品を新しく選び直す」ムダを減らせます。
3. オーバースペックを避ける
共通化では「大は小を兼ねる」で大きい部品を選びがちですが、それは失敗のもとです。
👉 対策
- 使用条件ごとに 標準サイズを複数パターン用意 する
例)- 小型機械用モーター(100W)
- 中型機械用モーター(400W)
- 大型機械用モーター(1kW)
- 強度・耐久性を満たす「最小限のサイズ」を基準に選ぶ
無理に1種類に絞らず、標準化の階層をつくる ことが大切です。
4. 部品番号や呼称ルールを統一する
共通部品は「識別のしやすさ」も大事です。
呼称や部品番号にルールを設けると、現場での混乱を防げます。
🔍 例)
- ねじ → 「M5-20-SUS」など径・長さ・材質を含めた規則的な番号
- 左右勝手のある部品 → 「BRKT-R」「BRKT-L」と記号で区別
- 標準採用品には「STD」を付与する(例:STD-BRKT-01)
設計・調達・組立のどの現場でも ひと目で判別できる工夫 がポイントです。
5. 設計段階から現場を巻き込む
共通化は設計者だけで決めると失敗します。
調達・製造・組立現場の意見を取り入れる ことで、
無理のない共通化が可能になります。
🔍 例)
- 調達 → 入手性の良い型番を優先する
- 製造 → 加工や溶接がしやすい形状を選ぶ
- 組立 → 工具交換の少ないねじサイズを揃える
「設計視点の最適化」ではなく、全体最適 を意識することが成功のカギです。
部品共通化を成功させるには、以下の工夫とルール化が大切です。
- 標準部品の選定ルールを作る
- BOMを整理して横展開する
- オーバースペックを避ける
- 部品番号・呼称ルールを統一する
- 調達・製造・組立も巻き込む
共通化は「効率」と「最適化」のバランスが重要。

部分最適ではなく全体最適を意識して、
設計段階から仕組みとして取り入れると効果的です。
まとめ
部品共通化は、機械設計において
コスト削減・効率化・作業性向上 を実現する重要な手法です。
✔ メリット → 在庫削減・コストダウン・組立や保守の効率化
✔ 注意点 → 性能やコスト最適化を損なうリスクもある
つまり「何でも共通化すればよい」わけではなく、
必要十分な性能を満たしつつ、
効率化できる部分を共通化することがポイントです。
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