油圧リフターと電動リフターの違いを徹底解説!特徴・仕組み・選定のポイント

動力選定

機械設計において、リフター(昇降装置)は荷物や設備の高さを
調整するために欠かせない要素です。

その中でも特によく使われるのが
「油圧リフター」「電動リフター」 の2種類。

どちらも昇降を行う装置ですが、
動作原理や性能、メンテナンス性、コストが大きく異なります。

この記事では、設計者が知っておきたい
油圧式と電動式の違い・特徴・選定ポイント を、
初心者でもわかりやすく解説します。


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油圧リフターとは

特徴と仕組み

油圧リフターは、油圧ポンプで圧力をかけた作動油(オイル)
シリンダに送り込み、その圧力でピストンを押し出して
荷重を持ち上げる仕組みです。

主な特徴

項目内容
動作原理油圧による力の増幅
特徴大きな荷重をスムーズに上げ下げできる
メリット高トルク・高出力、安定した動作、衝撃吸収性に優れる
デメリットオイル漏れや温度変化の影響を受けやすい、メンテナンスが必要
主な用途建設機械、産業用リフト、プレス機、射出成形機など

油の圧力を利用するため重いものを持ち上げる力に優れ
産業用や大型装置に多く使われます。


油圧リフターについての記事はこちら

電動リフターとは

特徴と仕組み

電動リフターは、モーターやボールねじ、
リニアアクチュエータを使って昇降を行うタイプです。

電気エネルギーを直接機械的な動作に変換して動作します。

主な特徴

項目内容
動作原理モーターやアクチュエータによる直動
特徴電気制御が容易で、位置決めが正確
メリットクリーン、メンテナンスが少ない、省エネ、制御性が高い
デメリット大出力には不向き、コストが高め
主な用途位置制御が必要な装置、医療機器、FA機器、クリーンルームなど

電動式は油を使わないため清潔・静音で、制御性に優れるのが特長です。
最近では、省エネや環境面から電動化が進んでいます。


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油圧リフターと電動リフターの比較表

比較項目油圧リフター電動リフター
動力源油圧ポンプ(オイル)電動モーター
出力特性高出力・高トルク精密制御向き
動作スピードやや遅いが力強い高速で滑らか
メンテナンスオイル交換・漏れ点検が必要ほぼ不要(定期点検程度)
騒音油圧ポンプ音あり静音性に優れる
清潔性オイル漏れのリスクありクリーン環境に適する
コスト比較的安価初期コスト高め
用途重量物・大型装置精密機器・軽量装置

リフターを選ぶ前に確認!選定ポイントを徹底解説

リフター(昇降装置)を設計・選定するときは、
性能やコストだけでなく、用途や環境条件に合わせた最適化が重要です。

ここでは、油圧式と電動式のどちらを選ぶべきかを判断するための、
4つのチェックポイントをわかりやすく解説します。


① 持ち上げる荷重(荷重条件)

リフター選定で最も基本となるのが「持ち上げる重さ(荷重)」です。
荷重が大きい場合は油圧式、比較的軽い荷物を扱う場合は電動式が適しています。

条件適した方式理由
数百kg~数tの重量物油圧リフター油圧は高圧力を発生でき、
コンパクトな構造で大きな力を出せる
数十kg~数百kg程度電動リフターモーター制御で十分対応でき、
エネルギー効率が良い

油圧リフターは「力に強い」、
電動リフターは「軽快で効率的」と覚えておくとよいでしょう。

また、上昇だけでなく下降時の制御(スムーズな降下)も
考慮するのが設計上のポイントです。


② 位置制御の精度(制御性能)

次に重要なのが「どのくらい正確に高さを制御したいか」です。
微妙な位置合わせが必要な用途では、電動リフターが圧倒的に有利です。

比較項目油圧リフター電動リフター
位置精度油の圧縮性により誤差が出やすいモーター・エンコーダ制御で高精度
制御性比較的アナログ(比例弁制御)デジタル制御が容易(PLC連携も可能)
位置再現性±1mm程度(条件により変動)±0.1mm程度も可能

たとえば、位置決めが必要な自動機や搬送装置では、
位置制御のしやすい電動式が選ばれることが多いです。

反対に、単純に持ち上げるだけの用途なら油圧でも十分対応できます。


③ 作業環境(使用条件)

作業環境もリフター選定の大きなポイントです。

特に「油漏れ」や「騒音」、「清浄度」などの
要件によって選択が分かれます。

環境条件適した方式理由
クリーンルーム・食品工場電動リフター油を使わないため、漏れや汚染の心配がない
屋外・重作業現場油圧リフター粉塵や温度変化に強く、堅牢性が高い
低騒音が求められる現場電動リフターモーター駆動で静音性が高い

また、油圧リフターは油の粘度変化(温度依存性)により
動作速度が変わることがあります。

一方、電動リフターは温度や環境に左右されにくい安定した動作が特徴です。


④ コストとメンテナンス(運用性)

最後に、導入後のコストとメンテナンス性を考えることも大切です。
「初期費用」と「ランニングコスト」はどちらが安いかを比較しておきましょう。

項目油圧リフター電動リフター
初期コスト比較的安価高価(モーター・制御装置含む)
運用コストオイル交換・漏れ点検が必要メンテナンスが少なく省エネ
故障リスクオイル漏れ・ホース劣化電装部品の寿命(モーター・ねじ摩耗)
長期運用コストメンテ頻度が高い長期的にはコストを抑えられる傾向

油圧リフターは初期費用が安い分、
定期点検やオイル交換の維持コストがかかります。

はじめ
はじめ

電動リフターは初期投資が高いですが、
長期的にはメンテナンスが少なく省エネ運用が可能です。


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最適なリフターを選ぶために

リフター選定では「力・精度・環境・コスト」の4点をバランスよく考えることが重要です。

チェック項目油圧リフターが有利電動リフターが有利
荷重が大きい
高精度な位置制御
クリーン環境で使用
低コスト重視
省メンテナンス重視

👉 まとめると…

  • 力重視 → 油圧リフター
  • 精度・クリーン重視 → 電動リフター

設計段階で「何を最も重視するか」を明確にすれば、
最適なリフター方式をスムーズに選定できます。

よくある質問(Q&A)

Q:最近はどちらが主流?

産業全体ではまだ油圧式が多いですが、
FA(自動化)分野やクリーン機器では電動式が増加中です。


Q:電動リフターのデメリットは?

大トルクが必要な場合には不向きで、
モーター容量やボールねじの耐久性が制約になります。


Q:油圧式のメンテナンス頻度は?

通常は半年~1年ごとにオイルの状態確認と漏れ点検を行います。


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まとめ

油圧リフターと電動リフターは、
どちらも昇降機構として優れていますが、
用途と目的に応じた選定が重要です。

特徴油圧リフター電動リフター
強み高出力・大荷重対応高精度・クリーン・制御性
弱みメンテナンスが必要大出力が苦手・高コスト
向いている用途産業用・重量物リフト精密装置・自動化設備

重いものを確実に動かすなら油圧式、
精密な動作や環境重視なら電動式。

設計段階で「求める性能」「設置環境」「メンテナンス性」を整理し、
最適なリフターを選定しましょう。


はじめ
はじめ

モーターやアクチュエーターなど、
機械の駆動源に関する基礎知識と
選定基準をまとめています。

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