リニアブッシュは、シャフト(軸)を摺動面とし、
直線運動を滑らかに行うための直動部品です。
ボールが内蔵されており、低摩擦での運動を実現します。
高精度な直線運動を必要とする
工作機械、FA機器、医療機器などで幅広く使用されています。
リニアブッシュの特性
低摩擦
ボールがシャフトとの接触面で転がる構造のため、
滑らかで軽い動作を実現。摩擦抵抗が非常に小さいのが特徴です。
高精度な直線運動
ボールとシャフトの隙間が極めて小さく設計されているため、
高い位置決め精度が得られます。
コンパクトな設計
小型で軽量な設計が可能であり、省スペースな機械設計に適します。
多様な形状・タイプ
スタンダードタイプ、フランジ付き、
角型、開口タイプ(軸の変形に対応するため)など、
さまざまな形状が揃っています。
簡単なメンテナンス
グリースニップルや潤滑穴が設けられているため、
定期的な潤滑が容易です。
リニアブッシュの選定ポイント
リニアブッシュを選定する際の主なポイントを以下に示します。
✅ 使用荷重
荷重が大きい場合は、過負荷にならないようリニアガイドの選定も検討。
✅ 速度と加速度
高速運動や頻繁な加速・減速が必要な場合は、ボールの耐久性や潤滑性能を考慮する。
✅ シャフトとの適合
精度の高いシャフトが必要です。
メーカーの適合はめあい公差を必ずチェックしましょう。
適合不良は運動の滑らかさを損ないます。
✅ ハウジングとの適合
ブッシュ外径とのはめあい公差の確認。
精度が高いブッシュでは高い精度が必要になります。
メーカーの推奨はめあい寸法を必ずチェックしましょう。
✅ 環境条件
粉塵が多い環境では、シール付きタイプを選定し、
異物の侵入を防ぐ必要があります。
クリーンルームでは低発塵仕様を選択。
✅ 潤滑の管理
適切な潤滑が摩耗を抑え、寿命を延ばします。
定期的な給油が必要です。
✅ コストと耐久性
低コストなものから高耐久なものまで多様な製品があり、
用途に応じたバランスを考えることが重要です。
リニアブッシュの主なタイプと用途例
| タイプ | 特性 | 用途例 |
|---|---|---|
| スタンダード | 一般的なリニアブッシュで、幅広い用途に対応可能。 | 工作機械、FA機器、搬送装置 |
| フランジ付き | フランジがあることで取り付けが簡単。省スペース化を実現。 | コンパクトな機械や小型の搬送装置 |
| 開口タイプ | シャフトのたわみを吸収しやすい構造で、負荷分散が可能。 | 長尺シャフトを使用する装置 |
| 防塵シール付き | 異物侵入を防ぎ、粉塵環境でも使用可能。 | 木工機械、建設機械 |
| 低発塵仕様 | 特殊素材や構造でクリーンルーム対応。 | 医療機器、半導体製造装置 |
リニアブッシュのボールの脱落に関する注意点
リニアブッシュの使用において、
ボールの脱落は注意すべきトラブルの一つです。
以下に、ボール脱落が発生する原因と対策について詳しく解説します。
ボール脱落が発生する主な原因
シャフトの抜き取り
リニアブッシュの構造上、シャフトが完全に抜き取られると、
ボールが保持されなくなり脱落します。
特に、分解や整備時に誤ってシャフトを引き抜くことで脱落する可能性があります。
過度な負荷や衝撃
設計範囲を超えた負荷や衝撃が加わると、
ボールが転動面から外れることがあります。
これにより、正常な動作が損なわれる場合があります。
適合精度不良
使用するシャフトが適切な寸法公差(一般的にh7)を満たしていない場合、
ボールが正しくガイドされず、脱落するリスクが高まります。
取り扱い時の不注意
リニアブッシュを保管または取り扱う際に、
落下や衝撃を受けることで内部のボールが外れる場合があります。
ボール脱落を防ぐための対策
シャフトを完全に抜かない
メンテナンスや組み立て作業時には、
シャフトをリニアブッシュから完全に引き抜かないよう注意しましょう。
もし引き抜く必要がある場合は、
専用の保持用治具を使用することを推奨します。
適正な負荷設計
仕様に基づいた荷重条件で設計を行い、
過負荷や衝撃がかからないよう配慮します。
負荷の方向が適切であることを確認してください。
シャフトの精度確認
使用するシャフトの公差が適切であることを事前に確認し、
摩耗や変形のあるシャフトを使用しないようにします。
丁寧な取り扱い
リニアブッシュは精密部品のため、
取り扱いには細心の注意が必要です。
特に落下させたり、
乱雑に扱ったりしないよう注意してください。
シール付きタイプの選定
ボールが脱落しにくいシール付きタイプを選定することで、
脱落リスクを軽減できます。
これにより異物侵入防止の効果も得られます。
ボールが脱落した場合の対応
万が一ボールが脱落した場合、以下の対応を行います。
脱落したボールがすべて回収できているか確認し、
損傷がない場合は再装填を検討します。
内部構造に損傷がある場合や適切な再装填が難しい場合は、
リニアブッシュの交換を検討し、メーカーに相談することを推奨します。
注意点のまとめ
リニアブッシュは、高精度な直線運動を実現するために
ボールの保持構造が繊細に設計されています。
シャフトの抜き取りや過負荷に注意し、
適切な取り扱いを行うことでボール脱落を防ぐことが可能です。

設計段階で適正な負荷条件や環境を考慮し、
選定と使用方法を正確に守ることが、
装置の信頼性向上につながります。
主なメーカー
THK株式会社 メーカーページはこちら
日本トムソン株式会社 (IKO) メーカーページはこちら
まとめ
リニアブッシュは、低摩擦、高精度、省スペース設計が特徴の
直動部品であり、幅広い用途に対応可能です。
選定の際には、使用条件(荷重、速度、環境)に応じた仕様の
リニアブッシュを選ぶことが重要です。
特に、シャフトとの適合性や潤滑管理は、
性能を最大限発揮するためのポイントとなります。
適切なリニアブッシュを選ぶことで、
装置の信頼性と効率を大幅に向上させることができます。




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