ねじ・ボルトのトラブルの原因と対策 5選 【なめ・破損】

機械要素

ねじは最も基本的な締結部品ですが、
「ねじまわりのトラブル」は現場でも設計でも非常に多いです。

この記事では、機械設計や組立現場でよく起こる
以下の5つのトラブルと、その原因・対策を初心者でもわかりやすく解説します。

▶ ねじ山がつぶれてしまった
▶ ねじの頭をなめてしまった
▶ ねじ軸が破断してしまった
▶ ねじが錆びついてしまった
▶ ねじを斜めに締付けてタップが破損してしまった


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ねじ・ボルトのトラブルの解明

ねじ山がつぶれてしまった

原因

  • 過大なトルクで締めた
  • めねじとおねじのピッチが合っていない
  • 異物やゴミがかみこんでいる
  • 材質が柔らかく、強度不足(特にアルミや樹脂など)

対策

  • トルク管理を行い、適正トルクで締め付ける
  • ピッチの確認を行い、ねじ規格(M6×1など)を必ず一致させる
  • めねじ側に異物が入らないよう清掃や保護キャップを使用
  • 強度不足の母材には、インサートナット(ヘリサート)などの補強金具を使用

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ねじの頭をなめてしまった

原因

  • ドライバーや工具のサイズが合っていない
  • 工具が斜めに入っている
  • ねじが固着している状態で無理に回した
  • 安価で品質の悪いねじを使っている

対策

  • 工具は正しいサイズ・規格のビットを使う
    (例:プラス2番など)
  • 回すときは工具をまっすぐ押し込みながら操作する
  • 潤滑剤(ラスペネなど)で固着を緩めてから作業する
  • 材質に注意し、強度等級のある信頼性の高いねじを選定する
    (例:SCM435の10.9など)

ねじの頭をなめてしまった!取り外せないときの対処法まとめ

ねじを外そうとしたら、ドライバーが空回りして
「頭がつるつるになってしまった…」という経験はありませんか?

この状態を「ねじの頭がなめる(潰れる)」といいます。
なめてしまうと通常の方法では外せなくなり、
作業が進まない厄介なトラブルです。

はじめ
はじめ

なめてしまったねじの取り外し方を、わかりやすく手順ごとに解説します。
あわせて、再発防止のポイントも紹介します!


ねじの頭がなめたときの基本対処フロー

状況に応じて、次のような方法を順番に試していくのがポイントです。


方法1:ゴムや輪ゴムを噛ませる

【難易度:★☆☆(初心者向け)】

ドライバーとねじの間に輪ゴムや滑り止めシートを挟んで回します。
摩擦が増えることで空回りを防ぎ、意外とこれで外れることもあります。

押し付ける力をしっかりかけながら、垂直にドライバーを当てる。


方法2:プライヤーやモンキーレンチで直接つかんで回す

【難易度:★☆☆】

ねじの頭が出っ張っていれば、プライヤーやモンキーでガッチリつかんで回すのも有効です。

特に六角ボルトや皿ねじ以外のなめたねじに使いやすい方法です。

つかむ位置はねじの根本に近いほど力がかかりやすい。


方法3:ねじすべり止め液(グリップ剤)を使う

【難易度:★☆☆】

市販の「ねじすべり止め液(ねじグリップ)」を使うと、
摩擦が増えてドライバーが食いつきやすくなります。

ドラッグストアやホームセンターで数百円で手に入ります。


方法4:貫通ドライバー+ハンマーでショックを与える

【難易度:★★☆(中級者向け)】

貫通ドライバー」を使い、
ハンマーで軽く叩きながら回すことで食いつきやサビの固着を緩めます。

注意:強く叩きすぎるとねじが完全に変形する恐れがあるので要注意!


方法5:専用工具「ネジザウルス」を使う

【難易度:★☆☆(初心者OK)】

なめたねじに特化した工具「ネジザウルス(エンジニア製)」は非常に優秀です。
ねじの頭をガッチリつかむ特殊な形状をしており、家庭用でも人気があります。


方法6:エキストラクター(ねじ外し工具)を使う

【難易度:★★☆】

完全になめてしまって頭がつるつるのねじには「エキストラクター(逆タップ)」が有効。
ドリルで下穴を開け、逆ネジの工具で食い込ませながら回して外します。

📌 ポイント:電動ドリルが必要なので、DIYや現場作業に慣れている方向け。


最終手段:ねじ頭を削って外す

【難易度:★★★(上級者向け)】

どうしても外れない場合は、以下のような最終手段もあります。

  1. サンダーやリューターでねじ頭にマイナス溝を削る
  2. ドリルでねじ頭を完全に飛ばして、部品を外してから軸を取り除く

この方法は部品を傷つける可能性があるため、破壊覚悟で行う必要があります。


再発防止のポイント

原因防止策
工具が合っていないドライバーサイズ・形状を正しく選ぶ(例:プラス2番など)
工具の角度がずれているまっすぐ押し込みながら垂直に回す
サビ・固着潤滑剤(ラスペネ・グリース)を事前に塗布
安物のねじ強度等級付きの信頼性あるねじを選定(10.9ボルトなど)
頭が小さすぎるトルクが必要な箇所では六角穴付きボルトや六角ボルトを使う

なめたねじは段階的に対処法を試すことで多くの場合は外せます。
まずは輪ゴムやつかみ工具などの簡単な方法から始めましょう。
専用工具(ネジザウルス、エキストラクター)も頼れる存在です。
トラブルを防ぐには工具・トルク・材質の正しい選定がカギ!

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ねじ軸が破断してしまった

原因

  • オーバートルク(規定より強く締めすぎ)
  • 長期間の振動や疲労による金属疲労
  • ねじが引張荷重方向に不適切に使われた
  • 使用条件に対してねじの強度等級が不足

対策

  • 指定された締結トルクを守る(トルクレンチ推奨)
  • 使用環境に応じて、高強度ボルト(8.8や10.9等級)を選定
  • 引張荷重が大きい部分では、せん断荷重方向の設計にする
  • 必要に応じてスプリングワッシャーやロックナットで緩み止めも検討

ねじが錆びついてしまった

原因

  • 屋外や高湿度環境で使用
  • 材質が鉄系で、防錆処理がされていない
  • 潤滑剤やシール材の未使用

対策

  • ステンレスボルト(SUS304など)や
    防錆処理ねじ(ユニクロ・三価クロメートなど)を使用
  • 使用環境に応じて防錆潤滑剤やグリスを塗布
  • 長期間放置する場所ではシール材やカバーで保護

※SUSボルト同士の焼き付き(かじり)には注意
 👉 モリブデングリスや専用のかじり防止剤を併用


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5. ねじを斜めに締付けてタップが破損してしまった

原因

  • タップ加工中にねじが斜めに挿入された
  • 無理な角度でボルトをねじ込んだ
  • 下穴径が小さく、タップに無理な力がかかった

対策

  • タップ加工時は必ず直角を保つ治具やスタンドを使用
  • 下穴は規格に合ったサイズを使用(例:M6の場合、5.0mmなど)
  • タップ加工には切削油を併用し、途中で切粉を排出しながら慎重に作業する
  • ボルト挿入時には手回しで仮止めしてから工具を使用する

ねじトラブルは「原因を知って予防」がカギ!

トラブル主な原因主な対策
ねじ山つぶれ過トルク・異物・材料不足トルク管理・ヘリサート・清掃
頭なめり工具不一致・固着正しい工具・潤滑剤・材質選定
軸破断オーバートルク・疲労強度等級選定・振動対策
錆び環境要因・防錆不足防錆ねじ・潤滑剤
タップ破損斜め挿入・下穴ミス直角保持・下穴サイズ・油使用

ねじのトラブルは小さく見えて、機械全体の信頼性に直結する問題です。

はじめ
はじめ

設計段階から対策を意識し、
現場でもしっかりした作業手順を守ることで、
トラブルは大きく減らせます。

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まとめ

ねじは機械設計や組立において欠かせない要素ですが、
「ねじ山が潰れた」「頭がなめた」「軸が折れた」
「錆びついた」「タップが破損した」など、
トラブルは意外と身近に潜んでいます。

これらの多くは、使用工具の選定ミス・締付けトルクの管理不足・
潤滑不足・材料の選定ミス・作業姿勢の不備
といった基本的な点から起こるものです。

トラブルの発生を防ぐためには、次のポイントを意識しましょう。

適切なサイズと種類の工具を使用する
推奨トルクに従って、必要以上に締めすぎない
ねじの材質や強度等級を確認して選定する
防錆処理や潤滑処理をあらかじめ行う
ねじ穴は垂直・正確に加工し、締付け時も真っすぐに回す

また、トラブルが起きた場合でも、
段階的な対応方法を知っておくことで冷静に対処できます。

現場や設計の中で「なんとなく」ねじを使わず、
「きちんとした理屈と対策」で扱うことで、
信頼性の高い製品づくりにつながります。



はじめ
はじめ

ボルトやナット、軸受け、ギアといった
基本的な要素部品の機能と選び方を
詳しく紹介します。

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