潤滑油は、機械の滑らかな動作を支える重要な要素であり、
摩耗や損傷を防ぐための不可欠な部品です。
潤滑油の選定では、機械の種類、使用環境、負荷条件などを
考慮する必要がありますが、その中でも粘度は最も重要な基準の一つです。
適切な粘度の潤滑油を選定することで、
機械の性能を最大化し、寿命を延ばすことができます。
本記事では、潤滑油の選定ポイントと粘度の役割について詳しく解説し、
選定時に知っておきたい基本的な考え方をご紹介します。
潤滑油について
特徴
潤滑油は液体状であり、部品の表面を流動的に覆います。
高速で動作する部品や広範囲に潤滑が必要な箇所に適しています。

主な種類と用途
- 鉱物油系潤滑油
- 一般的な機械で使用される。
- コストパフォーマンスに優れた潤滑油。
- 合成油系潤滑油
- 高温や極低温などの過酷な環境下で使用される。
- 特殊潤滑油
- 食品機械や精密機器など、特定の用途向けに開発されたもの。
使用例
潤滑油の粘度について
潤滑油の性能を語る上で「粘度」は最も重要な特性の一つです。
粘度は、潤滑油がどの程度の抵抗をもって流れるかを表し、
機械の摩擦低減や寿命に大きく影響を与えます。
本項では、潤滑油の粘度について詳しく解説し、選定時のポイントを説明します。
粘度とは?
粘度は、液体の流れやすさを示す物理量です。
簡単に言えば、粘度が低いほど液体はさらさらと流れやすく、
粘度が高いほどどろっとして流れにくい状態を指します。
単位と表記
- 動粘度: mm²/s(センチストークス:cSt)で表される。温度とともに変化する値。
- 絶対粘度: Pa·s(パスカル秒)で表される。動粘度は密度を考慮した値。
粘度の温度依存性
潤滑油の粘度は、温度によって大きく変化します。
この特性は潤滑剤の選定時に重要です。
特に過酷な環境下では、使用温度範囲に適した粘度を持つ潤滑油を選ぶ必要があります。
粘度指数(VI: Viscosity Index)
粘度指数は、温度変化に対する粘度の変化のしやすさを示す指標です。
- 高粘度指数(VIが高い)
温度変化に対して粘度が安定している。 - 低粘度指数(VIが低い)
温度変化に対して粘度が変化しやすい。
例: 高温環境で使用する潤滑油には高粘度指数のものが適しています。
ISO粘度グレード
ISO粘度グレードは、潤滑油の粘度を基準化した国際規格です。
正式には「ISO 3448」という規格で、国際標準化機構(ISO)によって定められています。
この規格は主に産業用潤滑油に適用され、潤滑油を選定する際の基準となります。
ISO粘度グレードの基本
ISO粘度グレードは、40℃での動粘度(mm²/s)を基準に分類されています。
動粘度は、液体の流れやすさを示す指標で、以下のような特徴があります。
- 単位: mm²/s(センチストークス: cSt)
- 温度依存性: 粘度は温度が高くなると低下し、温度が低くなると増加します。
ISO粘度グレードの分類
ISO粘度グレードは、以下のように標準化された番号で分類されています。
以下に代表的なグレードを挙げます。
| ISOグレード | 動粘度(mm²/s)範囲(40℃) |
|---|---|
| ISO VG 10 | 9.0 ~ 11.0 |
| ISO VG 22 | 19.8 ~ 24.2 |
| ISO VG 32 | 28.8 ~ 35.2 |
| ISO VG 46 | 41.4 ~ 50.6 |
| ISO VG 68 | 61.2 ~ 74.8 |
| ISO VG 100 | 90.0 ~ 110.0 |
| ISO VG 150 | 135.0 ~ 165.0 |
| ISO VG 220 | 198.0 ~ 242.0 |
ISOグレード番号が大きくなるほど、粘度が高く、流れにくい特性を持っています。
ISO粘度グレードの選定のポイント
潤滑油の選定において、ISO粘度グレードは以下の条件を考慮して決定します。
1. 動作速度
2. 動作温度
3. 負荷条件
ISO粘度グレードを使用する理由
- 国際規格に基づくため信頼性が高い
- 世界中で共通の基準として使用されており、
異なるメーカーの潤滑油を比較する際にも便利。
- 世界中で共通の基準として使用されており、
- 適用範囲が広い
- 機械や産業設備の多くが
ISO粘度グレードに基づいて潤滑油を指定。
- 機械や産業設備の多くが
- 適切な選定で設備の寿命を延ばす
- 機械の動作条件に合った粘度を選ぶことで、
摩耗を防ぎ、性能を最適化。
- 機械の動作条件に合った粘度を選ぶことで、
ISO粘度グレードの実例
例1: 油圧システム
- 使用条件: 高速回転、常温(20~40℃)
- 推奨粘度: ISO VG 32またはISO VG 46
例2: 工場のギアボックス
- 使用条件: 高負荷、長時間稼働
- 推奨粘度: ISO VG 150またはISO VG 220
例3: スピンドル潤滑
- 使用条件: 高速回転、低摩擦が必要
- 推奨粘度: ISO VG 10またはISO VG 22
粘度選定の注意点
ISO粘度グレードは、潤滑油を選定する際の国際基準として非常に重要です。
40℃での動粘度を基準に分類されており、
機械や動作条件に応じた適切な粘度を選ぶことで、
摩耗や故障を防ぎ、設備の安定稼働を実現します。
粘度の選定は、機械設計者やメンテナンス担当者にとって重要なスキルです。
設備の仕様と動作条件に合った潤滑油を選び、
最適な潤滑性能を発揮できるようにしましょう。
粘度の分類
潤滑油の粘度は、規格ごとに分類されています。
代表的なものとして以下があります。
1. ISO粘度グレード
ISO(国際標準化機構)が定める動粘度の分類。主に産業用潤滑油に使用されます。
例: ISO VG 32、ISO VG 68、ISO VG 100など
2. SAE粘度グレード
SAE(自動車技術者協会)が定める自動車用潤滑油の分類。
エンジンオイルやギアオイルに使われます。
常温用(高温時の粘度): 20、30、40など
例: 10W-30は低温時も高温時も適度な粘度を持つオイルを意味します。
冬季用(低温時の粘度): 0W、5W、10Wなど
粘度を管理する重要性
潤滑油の粘度は使用中に変化することがあります。
汚染や酸化、温度変化などが原因で粘度が変わると、
潤滑性能が低下し、機械トラブルにつながる可能性があります。
以下の対策を実施することが重要です。
- 定期的なオイル分析
粘度の測定を通じて異常を早期発見する。 - 潤滑油の交換周期の管理
設備メーカーの推奨する交換周期を守る。 - 適切な保管
汚染や劣化を防ぐために潤滑油を清潔に保管する。
潤滑油の粘度は、機械性能を左右する重要な特性です。
機械の用途や動作環境、負荷条件に応じた適切な粘度を選ぶことで、
摩耗を防ぎ、機械の寿命を延ばすことができます。
また、粘度の管理や定期的な分析を通じて、最適な潤滑状態を維持しましょう。
適切な粘度選定が、設備の安定稼働とコスト削減のカギを握っています。
まとめ
潤滑油の選定において、粘度は機械性能と耐久性を左右する重要な要素です。
機械の速度や負荷、動作環境の温度を考慮し、
最適な粘度グレードを選ぶことで、摩耗を最小限に抑え、
効率的な動作を実現できます。
また、ISO粘度グレードを基準として選定することで、
信頼性の高い判断が可能です。
潤滑油の適切な選定は、設備の安定稼働と長寿命化に直結します。
定期的なメンテナンスと粘度管理を怠らず、機械設計や運用の効率を高めていきましょう。




コメント