センサーの「応答速度」とは、入力(検知対象)が変化してから、センサーがそれに反応するまでの時間を指します。
たとえば、ワークがセンサー前を通過したとき、その情報を制御装置に正しく送るまでの速度が「応答速度」です。
応答速度が遅いと、実際にワークが存在していてもセンサーが気付かず「見逃し」が発生し、誤動作や不良品につながることもあります。
なぜ応答速度が重要なのか?
現代の製造ラインや自動機は高速化しており、センサーが瞬時に反応しないと処理が追いつかなくなることがあります。
例1:搬送ラインでの部品検出
ベルトコンベアで1秒間に5個の部品が流れてくる場合、1つの部品がセンサー前を通過する時間は約0.2秒(200ms)になります。
このとき、センサーの応答速度が300msだと、次の部品に反応してしまう可能性があります。
例2:シリンダーの制御
エアシリンダーの端部にセンサー(オートスイッチなど)を付けて動作の完了を確認する場合、応答が遅いとタイミング制御がズレて装置がクラッシュすることもあります。
応答速度の単位と目安
応答速度は主に「ms(ミリ秒)」や「μs(マイクロ秒)」で表されます。
1ms = 0.001秒、1μs = 0.000001秒です。
センサーの種類 | 応答速度の目安 | 用途例 |
---|---|---|
近接センサー(高性能) | 約1〜5ms | ワーク位置確認、金属部品の検出 |
光電センサー | 約0.5〜1ms | 高速搬送ライン、カウント |
オートスイッチ(有接点) | 約2〜5ms | エアシリンダー制御(一般用途) |
オートスイッチ(非接点) | 約0.5〜1ms | 高速応答が必要なシリンダー制御 |
応答速度が遅いとどうなる?
✅ ワークの見逃し
✅ 誤検出(遅延検知)
✅ 装置のタイミングズレ
✅ 安全機構の働きが遅れる
特に高速ライン・高速動作の自動機では、応答時間の遅れは致命的なミスになります。
近接センサにおける応答周波数とは?
「応答周波数」とは、センサが1秒間に何回オン・オフの検出動作を繰り返せるかを示す性能値です。
近接センサでよく使われる単位は Hz(ヘルツ) で、たとえば「応答周波数:500Hz」であれば、1秒間に500回の検出が可能という意味になります。
応答周波数と応答時間の違いは?

項目 | 応答周波数 | 応答時間 |
---|---|---|
意味 | 1秒間に何回検出できるか(動作サイクルの最大数) | 1回の検出にかかる時間 |
単位 | Hz(ヘルツ) | ms(ミリ秒) |
目安 | 数十〜数千Hz | 数ms以下が一般的 |
応答周波数が高いということは、応答時間も速いことを意味します。
しかし、応答周波数の方がより実際の動作に直結する目安として使われます。
どんな場面で応答周波数が重要?
🔍 高速で物体が流れるコンベアライン
部品が高速で流れてきても、正確に1個ずつ検出できることが必要です。
応答周波数が低いと、見逃しや二重検出の原因になります。
🔍 回転体の回転数を検出する場合
シャフトやローラーに取付けた突起などを近接センサで検出する場合、1回転で何回検出するかに応じて、必要な応答周波数も変わります。
具体例:部品カウントの計算
例えば、以下のような場合を考えてみましょう:
- コンベア上を毎秒300個の部品が流れる
- 各部品を確実に1回だけ検出したい
このとき、センサには少なくとも 300Hz以上の応答周波数が必要になります。
余裕を見て 500Hz〜1kHz以上の製品を選ぶのが安全です。
応答周波数の参考値(代表的なセンサ)
センサの種類 | 応答周波数の目安 |
---|---|
一般的な近接センサ | 約200〜500Hz |
高速対応タイプ | 1kHz〜5kHz以上 |
静電容量近接センサ | 約10〜100Hz程度(遅い) |
応答周波数が低いとどうなる?
🚫 部品が検出されない(見逃し)
🚫 連続して複数のワークがあっても1個としか認識しない
🚫 カウントエラーや不良品の発生につながる
近接センサ選定時のチェックポイント
✅ 1秒間にいくつのワークを検出したいのかを見積もる
✅ メーカーの仕様書で「応答周波数」を確認する
✅ 実際の動作速度に2〜3倍の余裕を持った選定が理想
近接センサの応答周波数は、センサの反応の速さを数値で表した重要な指標です。
高速で流れるワークや回転体の検出には、十分に高い応答周波数のセンサを使わないとトラブルの原因になります。
🔸 検出速度を正しく見積もる
🔸 センサの性能に余裕を持たせる

これがトラブルを未然に防ぐコツです!
応答速度を意識した設計のポイント
🔹 センサー選定時に応答速度の仕様を確認する
カタログに「応答時間:1ms以下」や「応答周波数:1kHz」などと書かれています。
🔹 ワークの通過速度を計算し、余裕を持った応答速度を確保する
通過速度が速いほど、センサーには高応答性が求められます。
🔹 ディレイ回路やデジタルフィルタとのバランスを取る
応答速度を速めすぎるとノイズも拾いやすくなるため、適度なデジタルフィルタ設定が必要です。
まとめ
センサーの応答時間は、高速動作に対応するために重要な性能のひとつです。
速度の合わないセンサーを使うと、誤検出・見逃し・装置不良などのトラブルが起こるリスクがあります。
🔸「何を」「どのくらいの速さで」検出したいのか
🔸「どのセンサーがそれに合うのか」
これを明確にしておくことが、トラブルを未然に防ぐポイントです。
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