機械設計において、
ワーク(対象物)を吸着・搬送するために使用されるのが
「真空パッド(吸着パッド)」です。
真空ポンプや真空エジェクタと組み合わせて使用し、
安定した吸着・搬送を実現します。
しかし、適切な真空パッドを選ばないと、
▶ ワークがしっかり吸着できない
▶ 吸着力が不足して搬送中に落下する
▶ ワークに傷がつく
といったトラブルが発生することがあります。
この記事では、真空パッドの特徴と選定ポイントを詳しく解説します。
真空パッドの基本的な特徴
真空パッドは、ワークに接触し、真空を利用して吸着する部品です。
主に以下の特徴を持ちます。
ワークに合わせた形状や材質を選べる
真空パッドには、さまざまな形状・材質があり、
対象物に合わせた適切なものを選ぶことが重要です。
真空源と組み合わせて使用する
真空パッド単体では吸着できません。
真空ポンプや真空エジェクタと組み合わせることで、
吸着・搬送が可能になります。
柔軟なワーク対応が可能
紙、ガラス、金属、樹脂、食品など、
さまざまな素材のワークを吸着可能です。
また、凹凸がある形状や柔らかいワークにも
対応できるパッドが存在します。
真空パッドの主な種類と特徴
平型(フラット型)
✅ 特徴
🔍 用途
- フラットパネルディスプレイ(FPD)
- ガラス板や金属板の搬送
ベローズ型(蛇腹型)
✅ 特徴
🔍 用途
- プレス工程のワーク搬送
- 段ボール、成型品、食品パッケージなど
深型(ディープ型)
✅ 特徴
🔍 用途
- プラスチック成型品、ボトル、カップなどの吸着
スポンジ型(フォーム型)
✅ 特徴
🔍 用途
- ガラス、木材、石材、布地の吸着搬送
真空パッドの選定ポイント
ワークの形状に適したパッドを選ぶ
材質の選定(ワークの特性に合わせる)
| 材質 | 特徴 | 用途例 |
|---|---|---|
| NBR (ニトリルゴム) | 耐油性が高く、摩耗に強い | 金属・ガラス |
| シリコン | 高温耐性があり、柔軟性が高い | 食品、医薬品、樹脂製品 |
| ウレタン | 柔軟性があり、吸着跡がつきにくい | デリケートなワーク(塗装品) |
| EPDM | 耐薬品性・耐候性が高い | ゴム製品、薬品容器 |
| スポンジ | 吸着面が柔らかく、凹凸に対応可能 | 木材、布地、石材 |
真空パッドのサイズ選定
ワークの吸着跡や損傷を考慮する
デリケートなワーク(塗装済み、ガラスなど)には、
柔らかい素材のパッドが最適
吸着跡が問題になる場合は、ウレタンやスポンジ型を検討
落下防止弁の活用
吸着パッドは便利な搬送手段ですが、
一部のパッド吸着不良が全体の落下につながるリスクがあります。
そのリスクを確実に防ぎ、ラインの安全性と生産効率を
両立するのが落下防止弁の導入です。
真空パッド選定の重要ポイント

| チェック項目 | 選定基準 |
|---|---|
| ワークの形状 | 平型 / ベローズ型 / 深型 / スポンジ型 |
| 材質の特性 | NBR / シリコン / ウレタン / EPDM / スポンジ |
| 吸着力の確保 | パッドのサイズと真空源の能力のバランス |
| 吸着跡や傷の有無 | 柔らかい素材(ウレタン、スポンジ)を選択 |
| 真空源との適合性 | 真空ポンプ or 真空エジェクタとの組み合わせ |
真空パッドの摩耗対策と予知保全のポイント
真空パッド(吸着パッド)は、工場の自動化設備やロボットアームで
ワークを搬送する際に欠かせない部品ですが、
長期間使用すると摩耗し、
吸着力の低下やワークの落下につながることがあります。
本項では、真空パッドの摩耗対策と予知保全の方法について、
詳しくわかりやすく解説します!
真空パッドの摩耗とは?
摩耗が起こる原因
真空パッドの摩耗は主に以下の原因によって発生します。
- ワークとの接触回数が多い
- 吸着面が粗いワークを扱う
- パッドの材質が適していない
- ゴミや粉塵が付着
- 過負荷の吸着
摩耗による問題点
真空パッドの摩耗対策
材質の適切な選定
摩耗を抑えるためには、
ワークに適した材質のパッドを選定することが重要です。
| パッド材質 | 特徴 | 適したワーク |
|---|---|---|
| NBR(ニトリルゴム) | 耐摩耗性が高い、油に強い | 金属・ガラス・木材など |
| シリコンゴム | 柔らかく密着しやすい、高温対応 | 食品・医療機器・ガラスなど |
| ウレタンゴム | 耐摩耗性が最も高い、弾性が強い | 粗い表面のワーク |
| FKM(フッ素ゴム) | 耐薬品性が高い、耐熱性◎ | 化学製品、耐熱用途 |
💡 ポイント
使用環境の改善
交換サイクルの設定(定期メンテナンス)
摩耗によるトラブルを防ぐためには、
一定の使用回数ごとに交換する「定期メンテナンス」を実施することが重要です。
💡 推奨交換目安
| 使用条件 | 交換目安(目安) |
|---|---|
| 軽負荷(低頻度使用) | 6ヶ月〜1年 |
| 中負荷(通常の使用) | 3ヶ月〜6ヶ月 |
| 重負荷(高頻度使用) | 1ヶ月〜3ヶ月 |
🔍 チェックポイント
予知保全(IoTを活用したメンテナンス)
最近では、予知保全の技術を活用して、
真空パッドの摩耗を事前に検知する方法もあります。
真空センサーによる監視
👉 例えば、「通常-80kPa → -60kPaに低下」した場合、交換のタイミングと判断
画像センサーによる摩耗検知
IoTによるデータ管理
💡 工場のスマート化を進めることで、突然のトラブルを防ぐことが可能!
摩耗を防ぐためのポイント
真空パッドの摩耗を適切に管理することで、
設備の安定稼働を維持し、生産性を向上させることができます!
導入時には、ワーク・環境・使用頻度に合わせた
適切な選定と保全計画を立てることが重要です。
💡 最後にワンポイント!
「ワークが滑る」「吸着が弱い」と感じたら、
真空パッドの摩耗が進んでいる可能性大!
早めの交換で、設備トラブルを未然に防ぎましょう!
真空パッドを使うための真空発生源の選定ポイント
真空パッドを使用する際、ワーク(対象物)を安定して
吸着・搬送するためには適切な真空発生源を選定することが重要です。
真空発生源には主に
「真空エジェクタ」 と 「真空ポンプ」 の2種類があり、
それぞれ特性が異なります。
本項では、真空発生源の種類と選定ポイントについて、
初心者にもわかりやすく解説します!
真空発生源の種類と特徴

真空エジェクタ(エア式)
真空エジェクタの特徴
メリット
デメリット
🔍 適した用途
- 小型部品の搬送
(電子部品、食品包装、プラスチック製品など) - 高速で吸着・開放を繰り返す用途
(ロボットアーム、ピック&プレース装置など)
真空ポンプ(電動式)
真空ポンプの特徴
メリット
デメリット
🔍 適した用途
- 大型ワークの搬送
(ガラス板、金属板、大型機械部品など) - 長時間吸着が必要な用途
(工作機械のクランプ、固定用吸着など) - クリーンルームなどで安定した吸着が求められる場合
真空発生源の選定ポイント
真空エジェクタと真空ポンプにはそれぞれ特性があるため、
使用環境や搬送するワークの条件に応じて選定する必要があります。
ワークのサイズと重量
| ワークの特徴 | 適した真空発生源 |
|---|---|
| 小型・軽量なワーク | 真空エジェクタ |
| 中型~大型ワーク | 真空ポンプ |
| 多点吸着が必要 | 真空ポンプ |
| ワークの形状が複雑 | 真空ポンプ(強い吸着力が必要なため) |
吸着・開放の頻度
| 吸着の頻度 | 適した真空発生源 |
|---|---|
| 頻繁なON/OFF(短時間吸着) | 真空エジェクタ |
| 長時間吸着が必要 | 真空ポンプ |
ランニングコスト
| コストの種類 | 真空エジェクタ | 真空ポンプ |
|---|---|---|
| 消費電力 | なし(圧縮エア使用) | あり(モーター駆動) |
| 圧縮エアの消費 | 大(コンプレッサーが必要) | なし |
| メンテナンス頻度 | 低い(フィルター清掃) | 高い(フィルター交換など) |
コンプレッサーの容量に余裕がない場合は、真空ポンプを選ぶのが無難です。
エア消費を抑えたい場合は、真空ポンプの方が経済的です。
真空発生源の選び方のポイント
真空エジェクタとの組み合わせ
短時間で吸着・開放を繰り返す動作に向いている
真空ポンプとの組み合わせ
長時間吸着が必要な場合や、大きなワークの搬送に適している
適切な真空発生源を選定することで、
搬送効率やコストを最適化することが可能です!
設計時には、ワークの条件や作業環境をしっかり考慮し、
最適な真空発生源を選びましょう!
まとめ
真空パッドは、ワークの吸着・搬送において
非常に重要な役割を担っています。
適切なパッドを選ぶことで、
搬送の安定性を向上させ、
作業効率を最大化することができます。
▶ ワークの形状や材質に合わせた形状・材質を選ぶ
▶ 吸着力を適切に確保するために、パッドのサイズと真空源のバランスを考慮する
▶ 吸着跡やワークへのダメージを最小限に抑える素材を選定する
これらのポイントを押さえれば、最適な真空パッドを選ぶことができます!
設計の際には、ワークの特性や使用環境を考慮して適切なパッドを選定しましょう。

モーターやアクチュエーターなど、
機械の駆動源に関する基礎知識と
選定基準をまとめています。




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