【ノックピン】位置決めピンの役割と選定ポイント【配置と位置公差】

機械要素

位置決めピンは、機械設計において部品同士の位置を正確に決めるために使用される重要な要素です。
位置決めピンを適切に使用することで、組立時のズレを防ぎ、機械全体の精度と性能を向上させることが可能です。

この記事では、位置決めピンの基本的な役割、位置決め精度、配置と位置公差、はめあい公差について詳しく解説します。

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位置決めピンの基本的な役割

位置決めピンは、主に以下の役割を果たします。

部品の位置決め

複数の部品が組み合わさる際、位置決めピンを用いることで部品の相対的な位置を正確に決定します。

再現性の確保

組立や分解を繰り返しても、位置決めピンを使用することで、再度同じ位置に部品を正確に配置できます。

負荷の分散

ねじなどの締結部品と併用することで、位置決めピンが部品間の位置ずれを防ぎ、せん断力をピンで受けることにより、ねじにかかる荷重を軽減します。

位置決めピンは、設計時に部品の寸法誤差や組立誤差を吸収し、機械全体の精度と安定性を保つための重要な要素となります。

位置決め精度

位置決めピンの精度は、機械の動作や部品間の相対位置の正確さに直結します。高精度な位置決めを必要とする箇所では、特に精度の高いピンが必要です。

精度は以下の要素に依存します。

📌 ピンの寸法精度

  • 位置決めピンそのものの寸法精度が位置決めの精度に直結します。
  • 高精度なピンは、厳密な加工公差で製造され、位置決めにおいて安定した性能を発揮します。

📌 位置決めピンの配置

  • 位置決めピンの配置も重要です。
  • 少なくとも2本のピンを使用することで、部品の回転を防ぎ、正確な位置決めが可能となります。

精度に影響する要因

加工方法

  • 位置決めピンと受け穴の加工方法が、位置決め精度に大きな影響を与えます。
  • 高精度な加工機器を使用することで、より高い位置決め精度を達成できます。

組立時の公差

  • 位置決めピンと受け穴の公差が狭いほど、より高い位置決め精度が得られます。
  • しかし、あまりに狭い公差は組立や分解を難しくします。
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位置決めピンの配置と位置公差

ピンの配置方法

位置決めピンは、原則2本で位置決めを行います。

  • 1本目のピン … X・Yの位置を決める基準点
  • 2本目のピン … 回転方向を規制する役割

2本のピンを適度に離して配置することで、位置精度と安定性が向上します。
ピンが近すぎると回転を防ぐ効果が弱まり、遠すぎると加工や組立精度の要求が厳しくなります。


位置公差の考え方

位置決めピンは精度が重要なため、穴加工にははめあい公差位置度(位置公差)を指定します。

位置公差は、組み立て後に要求される中心位置のズレ許容値を考慮して決めます。
精密機器では ±0.01mm レベルになることもありますが、一般機械では ±0.05〜±0.1mm 程度が目安です。


✔ ボルトは位置決めではなく締結力に専念させる
2本のピンで位置決めし、1本で位置、もう1本で回転を規制
✔ 位置公差は組立精度や用途に応じて設定

位置決めピンの間隔は“ちょうどいい距離”が重要

位置決めピンは2本使うのが基本ですが、近すぎてもダメ、遠すぎてもダメという性質があります。


1. 近すぎる場合(悪い例)

  • ピン同士の距離が短いと、2本目のピンによる回転防止の効果が小さくなります。
  • ドアのヒンジが極端に近い位置に付いているのを想像すると、簡単にグラつくのと同じです。

💡 目安

ピン間距離が部品全長の2〜3倍未満だと、回転規制が弱くなりがちです。


2. 遠すぎる場合(悪い例)

  • ピン間距離が極端に大きいと、加工誤差や組立時の位置ずれが増幅されます。
  • 穴加工の位置精度が非常に厳しくなり、コストや難易度が上がります。

💡 目安

部品の対角線いっぱいにピンを置くと、±0.02mm などの高精度加工が必要になることもあります。


3. バランスの取り方(おすすめ)

  • ピン間距離はできるだけ長く取って回転防止効果を確保しつつ、加工や組立で許容できる位置精度に収まる範囲にします。
  • 一般的には下記を目安にバランスを取りましょう
    • 部品の長さの 50〜70% 程度の間隔
    • 片側に寄せすぎない配置
    • 部品の対角方向に適度に離して配置

4. 具体例

例えば、長さ 200mm のプレートを位置決めする場合

  • 悪い例①:ピン間距離 30mm → 回転防止効果が低い
  • 悪い例②:ピン間距離 190mm → 加工精度が非常に厳しくなる
  • 良い例:ピン間距離 120〜140mm → 回転防止と加工のしやすさのバランスが取れている

部品長さの50〜70%程度の間隔が目安
近すぎると回転に弱い
遠すぎると加工精度が厳しくなる

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はめあい公差の重要性

位置決めピンを使用する際の重要なポイントは、ピンと穴のはめあい公差です。はめあい公差とは、ピンと穴の寸法における許容誤差を示すもので、位置決めの精度や組立のしやすさに影響します。はめあい公差には主に次の3つのタイプがあります。

すきまばめ

  • ピンと穴の間に若干のすきまがあり、挿入や取り外しがしやすいはめあいです。
  • 主に組立や分解が頻繁に行われる箇所で使用されますが、位置決め精度はやや劣ります。

しまりばめ

  • ピンと穴の間に若干の締まりがあるはめあいです。
  • しっかりと固定できるため、位置決め精度が高く、ずれを防ぎますが、取り外しがやや難しくなります。

圧入ばめ

  • ピンを穴に強制的に押し込むことで、非常に強固に固定するはめあいです。
  • 位置決め精度が非常に高く、強度も優れていますが、組立が困難で、再利用は難しいです。
はめあい公差についての関連記事はこちら

はめあい公差の例

  • H7/h7
    位置決め精度が必要な場合によく使用される組み合わせで、穴側のH7公差と軸側のh7公差を適用します。この組み合わせは、高い位置決め精度を実現します。
  • H7/g6
    H7穴とg6軸の組み合わせは、すきまばめの一種で、若干のすきまがあり、挿入や取り外しがしやすいはめあいです。g6公差は、軸が僅かに小さくなるため、精度と繰り返しの組み立ての両立が可能です。
  • H7/p6
    H7穴とp6軸の組み合わせは、圧入ばめに分類され、極めて高い固定力を持ちます。p6公差は、軸がやや大きく、ピンを押し込んで固定するため、抜けにくくなります。高い位置決め精度が必要な場合に適しています。
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位置決めピンの材質と表面処理

位置決めピンは、使用環境や機械の要件に応じて、適切な材質や表面処理が選定されます。よく使用される材質には次のようなものがあります。

炭素鋼(S45Cなど)

  • 一般的な用途に広く使われる材質で、適度な強度と加工性を持っています。
  • 耐摩耗性を高めるために、熱処理を施すことが多いです。

ステンレス鋼(SUS304など)

  • 耐食性が求められる場合に使用されます。
  • 錆びにくいため、屋外や湿気の多い環境に適しています。

焼入れピン

  • 高硬度が求められる用途に使用され、耐摩耗性や耐久性が非常に高いです。

位置決めピンの選定ポイント

位置決めピンを選定する際には、以下のポイントを考慮する必要があります。

位置決めの精度要件

  • どれだけ正確な位置決めが必要かによって、ピンの精度やはめあい公差を決定します。
  • 高精度な位置決めが必要な場合、しまりばめや圧入ばめが適しています。

組立やメンテナンスの頻度

  • 組立や分解が頻繁に行われる場合、すきまばめやH7/h7の公差範囲を考慮します。
  • メンテナンス性を重視する必要があります。

使用環境

  • 使用される環境に応じて、材質や表面処理を選定します。
  • 湿気が多い環境ではステンレス鋼や防錆処理が必要です。

負荷の分散

  • ねじと併用して、位置決めピンがせん断力を受けることで、ねじの負荷を軽減する設計が一般的です。
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まとめ

位置決めピンは、機械設計において正確な部品の位置決めを実現するための重要な部品です。適切な位置決めピンの選定は、はめあい公差、材質、精度など、様々な要素を考慮する必要があります。また、正確な位置決めだけでなく、組立やメンテナンスのしやすさ、耐久性も考慮することが、最適な設計に繋がります。



はじめ
はじめ

ボルトやナット、軸受け、ギアといった基本的な要素部品の機能と選び方を詳しく紹介します

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