『設計レビュー』って結局何を見るの?手戻りをなくす効果的な進め方【初心者向け解説】

図面・CAD

「設計レビューって一応やってるけど、正直何をチェックすればいいかわからない…」
「上司からレビューでたくさん修正が出て、手戻りが多くてツライ…」

そんな悩みを抱えている初心者設計者は多いのではないでしょうか。

設計レビューは“形式的な会議”ではなく、手戻り(やり直し)を減らして品質を高める大事なプロセスです。
しかし、その目的や進め方を理解していないと、

✔ 時間ばかりかかる
✔ 意味のない指摘が増える
✔ 重大な見落としが残る

といった結果につながってしまいます。

この記事では、設計レビューの目的・見るべきポイント・効果的な進め方を初心者向けにわかりやすく解説します。


設計レビューの目的とは?

まず設計レビューは “ダメ出しの場”ではありません

✅ 設計ミス・漏れを早期に発見
✅ 手戻り(再設計・再試作)を防ぐ
✅ 製造・組立・品質・コストなど他部門との整合性確認
✅ 設計の妥当性を確認して次工程に進める

「後戻りコストは早期ほど安い」
設計段階で1つのミスを見逃すと、
→ 試作後 → 量産後 → 市場出荷後
になるほど 修正コストや影響範囲が大きくなります。

だからこそ設計段階での「早期チェック」が非常に重要なのです。


設計レビューで「結局何を見るのか?」

はじめ
はじめ

【基本的な観点】
設計レビューでは 4つの観点 を軸に見ると良いです。

技術的妥当性(仕様を満たしているか?)

  • 製品仕様(機能・性能・環境条件)を満たしているか
  • 強度・剛性・耐久性は十分か(CAE解析、実績、計算)
  • 摩耗、腐食、振動などの影響は考慮されているか

製造性(作れるのか?)

  • 加工方法に適した形状・公差になっているか
  • 組立作業は容易か(ねじのアクセス性、組立順序)
  • 工具や治具は必要か・作成可能か
  • 検査しやすい設計になっているか

コスト(コストが適正か?)

  • 材料・部品点数が無駄に高コストになっていないか
  • 標準部品・既存部品が有効に活用されているか
  • 工数・歩留まりを悪化させる設計になっていないか

品質・安全性・信頼性(使って問題ないか?)

  • 寿命・メンテナンス性は考慮されているか
  • 誤使用時に危険な動作をしないか
  • 法規制(RoHS、CEなど)を満たしているか
  • 品質保証が可能な構造・設計になっているか

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設計レビューの「よくある見落としポイント」

設計レビューで特に見落とされがちなポイントを紹介します。

✅ 部品間のクリアランス(干渉・ガタつき)
✅ 温度変化による膨張・収縮の影響
✅ 配線・配管の取り回しスペースの不足
✅ 工具が物理的に入らない場所が存在
✅ 樹脂部品の割れやすい形状
✅ 組立順序が現実的でない(順序が逆)
✅ 標準化ルール違反(勝手に特注部品採用)
✅ 保守性(分解しやすさ)を考慮していない

はじめ
はじめ

これは当然やっているはず」と思って確認漏れが一番多いのがこの類です。


効果的な設計レビューの進め方【初心者でも実践可能】

準備が8割

  • レビュー前に設計資料(図面・3Dデータ・仕様書・設計変更履歴)を事前配布
  • レビュー観点のチェックリストを用意
  • 他部門(製造・品質・営業など)から必要なメンバーを招集

🚫 準備なしの「当日場当たりレビュー」ほど意味がないものはありません。

設計者本人による事前セルフチェック

  • レビューの場で初めて指摘される内容を減らす
  • 事前の自己レビュー(セルフチェック)は極めて有効

議論の記録と管理

  • 指摘事項は その場でホワイトボードや議事録に記載
  • 指摘の分類
    • Aランク:重大欠陥 → 修正必須
    • Bランク:改善推奨 → 検討する
    • Cランク:参考意見 → 設計者判断
  • 責任者と期限を明確化してクローズ管理する

レビュー文化を「前向きな場」に

🚫 NG:ダメ出し会・吊し上げの場にする

✅ OK:「みんなで良い製品を作る」場として前向きな空気感

はじめ
はじめ

若手でも発言しやすい雰囲気を意識的に作る。


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レビューでよく出るNGコメント例と対応例

設計レビューに出席すると、いろいろなコメントが飛び交います。
中には「それ、どう受け取ればいいの?」「どう対応すればよいの?」と困るコメントも…。

レビューの場は設計者が成長するチャンスでもあります。
しかし、コメントの意図や正しい対応のしかたを知らないと、
🚫 必要以上に落ち込む
🚫 無意味な修正に振り回される
🚫 本質的な問題を見逃す
といったことにもなりかねません。

今回は 「よく出るNGコメント例」「うまい対応例・考え方」 を初心者向けに解説します。
レビューに対する「受け身」から一歩進んだ“攻めの設計者”を目指しましょう。


よくあるNGコメントと対応例

NGコメント①

「なんかこの形状、違和感があるんだよね」

🔍 問題点

  • 具体性がない曖昧なコメント
  • 設計者が何を直せばよいかわからない。

📌 うまい対応

  • 「ありがとうございます。どの点が違和感につながっていると感じますか?(寸法?形状のバランス?周囲部品との干渉?)もう少し教えていただけますか?」
はじめ
はじめ

具体的な課題にブレイクダウン することで、建設的な議論につなげる。


NGコメント②

「以前の製品はこうだったから、今回もそうした方がいい」

🔍 問題点

  • 過去の慣習にとらわれた発言で、新しい設計条件や改善の意図が無視されがち。

📌 うまい対応

  • 「今回は〇〇という新しい要求仕様/コスト/加工制約があります。そのためにこの設計としています。もしリスクや注意点があれば具体的に教えていただけますか?
はじめ
はじめ

設計意図を明確に説明し、リスク管理の観点で議論を誘導。


NGコメント③

「この構造はダメだよ」

🔍 問題点

  • 否定だけして理由が示されない。設計者が学べない。

📌 うまい対応

  • 「ありがとうございます。どういう理由でこの構造はダメなのでしょうか?(強度不足?コスト?組立性?)具体的な懸念を教えてください」
はじめ
はじめ

理由を引き出せれば、修正の必要性が明確になる。


NGコメント④

「こんなのやったことないから無理」

🔍 問題点

  • 挑戦的な設計・改善提案に対して 保守的な拒否反応
  • 検討せずに排除される危険あり。

📌 うまい対応

  • 「確かに新しい部分があります。リスクや検討不足な点がありそうでしょうか? 試作・検証・冗長設計などで補完できる可能性もあると思っています」
はじめ
はじめ

検討可能な範囲を整理し、頭ごなしの拒否を避ける。


NGコメント⑤

「とにかく急いで直して出して」

🔍 問題点

  • 設計品質よりスケジュール優先になるとトラブルの元。

📌 うまい対応

  • 「承知しました。ただし急ぎの場合でも、〇〇(例:干渉チェック/強度確認)は最低限確認が必要です。この工程は外してよいか、スケジュール調整できるかご相談させてください
はじめ
はじめ

品質とスピードのバランスを明確にして 設計者としての責任感を示す。


NGコメントが出た時に大事な心構え

感情的にならない

  • NGコメントでも、攻撃だと受け取らない
  • コメントの裏にある意図・懸念を探る

一歩引いて「本質」を探す

  • 「何が心配でこのコメントが出たのか?」
    品質/コスト/スケジュール/過去トラブル回避などが多い。

できるだけ「対話」に持ち込む

  • 一方的に受けるのではなく 対話型レビューに変えると、有意義な議論になる。

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NGコメントでも「設計者が成長できる場」に変えるコツ

  • メモを取る習慣をつける(指摘の背景や理由を記録)
  • レビュー後に 自分で反省会・振り返りを行う
  • 良い質問例や対応例のストックを作っていく

設計レビューでは「曖昧な指摘」や「過去の慣習に縛られた意見」など、NGコメントはよく出てきます。

重要なのは

✅ NGコメントを恐れない
✅ 本質を聞き出す
✅ 建設的な対話にする
✅ 品質は守るべき線をしっかり主張する

こうした対応力を少しずつ高めていくことで、設計者としての信頼感・存在感も高まっていきます。

はじめ
はじめ

最初は難しく感じるかもしれませんが、経験を積むごとに必ず慣れてきます。
ぜひレビューの場を「設計力UPの場」として積極的に活用していきましょう!

まとめ

設計レビューの目的は 手戻り削減と品質向上

見るべき観点は
① 技術的妥当性
② 製造性
③ コスト
④ 品質・安全性


よくある見落としポイントもチェック必須

成功のカギは 徹底した準備と建設的な進め方

設計レビューはやればやるほど慣れてきます。
最初は「難しい」「面倒」と感じるかもしれませんが、レビュー文化が根付いたチームほど失敗の少ない設計が実現できます。

初心者の方は、
積極的にレビューに参加して観点を学ぶ
自分の設計でもチェックリストを活用して質を高める

ところからスタートすると良いでしょう。


はじめ
はじめ

図面とCADはアイデアを具体的な形にし、設計意図を正確に伝えるための重要な手段です。

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