ねじの締め付けは、「強く締めればよい」というものではありません。
適正なトルクで締め付けないと、ゆるみ や 破損 の原因となるため、機械設計では「適正トルク」の設定が重要です。
ねじの締め付けトルクとは?
ねじを締める際に加える回転力(トルク)のことを「締め付けトルク」といいます。
単位は N・m(ニュートンメートル) で表され、ボルトやナットを回すときの力の大きさを示します。
🔍 例:10N・m のトルク
👉 1m の長さのレンチの先に 10N(約1kg 重さ)の力を加えると 10N・m になる
なぜ適正トルクが必要なのか?
適正なトルクで締めることが重要な理由 は、以下の3つです。
1. ゆるみを防ぐ
✅締め付けトルクが弱すぎると、振動や衝撃でねじが緩み、脱落するリスク があります。
🔍例:自動車のホイールナットが緩むと、走行中にタイヤが外れる可能性がある。
2. 破損を防ぐ
✅締め付けトルクが強すぎると、ねじが伸びすぎたり、ねじ切れてしまう ことがあります。
🔍例:アルミやプラスチック部品に強く締めすぎると、ネジ穴が壊れて固定できなくなる。
3. 適切な軸力を確保する
✅ねじ締めによって「軸力(締結力)」が発生します。
✅適正トルクで締めることで、部品同士が適切に固定されます。
適正トルクの決め方
適正トルクは、ねじの材質・サイズ・締める相手の材質 などによって決まります。
基本的には JIS規格やメーカーのトルク表 を参考にします。
代表的な適正トルク(例:普通ボルトM6~M12、材質:鉄)
ねじのサイズ | 推奨締め付けトルク(N・m) |
---|---|
M6 | 9.8~11.8 |
M8 | 23~28 |
M10 | 46~55 |
M12 | 79~95 |
💡 ポイント
・ ステンレスやアルミねじ は締めすぎると破損しやすいので注意!
・ 高強度ボルト(10.9級、12.9級)は通常よりも強いトルクが必要!
・ 潤滑剤を使用するとトルク値が変わる ので注意!
適正トルクで締めるための方法
トルクレンチを使う
✅ 一定のトルクで締めるために、トルクレンチ を使うのが一般的です。
✅ 設定したトルクで締め付けると「カチッ」と音が鳴り、それ以上締めすぎるのを防ぎます。
ねじの種類ごとにトルク値を確認する
✅ 普通のボルトと高強度ボルトでは適正トルクが異なるため、事前にトルク表をチェック!
締め付け順序を守る
✅ フランジやエンジン部品など、大きな部品を締めるときは「対角線順」に少しずつ締めることで均等な力をかける。
割れやすい部品のねじ締めトルクの注意点!
ねじを締めるとき、「しっかり締めればOK!」と思っていませんか?
実は、割れやすい部品(アルミ、樹脂、マグネット、セラミックなど) を締めるときは注意が必要です!
適正トルクを超えて締めると、ひび割れや破損 の原因になります。
本項では、割れやすい部品を締めるときの注意点 をわかりやすく解説します!
割れやすい部品とは?
以下のような材料は、強く締めすぎると割れやすいです。
✅ アルミやマグネシウム合金(軽量だけど柔らかい)
✅ プラスチックや樹脂部品(粘りはあるが、過大な力で変形しやすい)
✅ マグネットやセラミック部品(衝撃や圧力で一気に割れる)
🚫 注意!
強度の低い部品は、適正トルクを超えると 「パキッ!」と割れる 可能性があります!
割れを防ぐための対策
低トルクで締める(メーカー推奨値を守る)
🔧 強く締めすぎない!
👉 割れやすい材料は、一般的な金属ボルトより 低いトルクで締める 必要があります。
🔍 例:プラスチック部品の締め付けトルクの目安(M6ねじ)
- 金属(鉄)同士:10N・m
- 樹脂(プラスチック):2N・m以下
📌 ポイント
「金属と同じトルクで締めると破損する!」
トルクレンチを使う(手締めは危険!)
🔧 「感覚で締める」のはNG!
✅ トルクレンチ を使って、適正トルクを超えないように管理しましょう!
🔍 おすすめの工具
・トルクドライバー(小さいねじ向け)
・デジタルトルクレンチ(細かい調整が可能)
📌 ポイント
ボルトが「ギシギシ」鳴り始めたら要注意!
ワッシャーや樹脂スペーサーを使う
🔧 接触面積を増やして、力を分散!
✅ ワッシャー を入れると、ねじの力が広がり、局所的な圧力がかかるのを防げます!
🔍 効果的なワッシャー
・ゴムワッシャー(衝撃吸収)
・樹脂ワッシャー(柔軟性がある)
・大径ワッシャー(接触面積アップ)
📌 ポイント
直接ねじを締めるより、緩衝材を挟むと安心!
締め付け順序を工夫する
🔧 一気に締めず、対角線順に締める!
✅ 片側から締めすぎると、部品に負荷がかかり、ひび割れの原因に。
🔍 締め方のコツ
1️⃣ 仮締め → 4分の1回転ずつ締める
2️⃣ 対角線順に均等に締める(フランジやカバーの場合)
3️⃣ 最後に本締めする
📌 ポイント
一箇所だけ先に締めると、部品が歪む!
🔸 割れやすい部品(アルミ、樹脂、セラミックなど)は 低トルク で締める!
🔸 トルクレンチを使い、適正トルクを守る!
🔸 ワッシャーやスペーサーで圧力を分散!
🔸 対角線順に締めて、負荷を均等に!

適切な締め付けトルクを意識すれば、破損を防ぎ、安全で長持ちする設計 が可能です!
まとめ
🔸 ねじは「強く締めればOK」ではなく、適正トルクが重要!
🔸 締めすぎるとねじが破損 し、緩すぎると脱落の原因 になる!
🔸 トルクレンチを使い、適正トルクを守ることが大切!
適正トルクを意識することで、安全で長持ちする設計 が可能になります。
コメント