シャフト・ベアリングに使われるSUJ2ってどんな材質?【高周波焼入れ】

機械要素

機械設計をしていると、「SUJ2(エスユー・ジェイ・ツー)」という材料名をよく見かけます。特にシャフト(軸)やベアリング部品によく使われている材料ですが、いったいどんな特性があって、なぜ選ばれるのでしょうか?

この記事では、初心者の方でも理解しやすいように、SUJ2の特徴や使用用途、選定時のポイントを解説します!


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SUJ2とは?

SUJ2は、高炭素クロム軸受鋼という種類の鋼材で、JIS(日本産業規格)で規定された材料の一つです。
正式には「軸受鋼:Steel for Bearing Use」の中の代表的な材料で、ベアリングに使われることが多いため、硬くて摩耗に強いというのが大きな特徴です。


SUJ2の主な特徴

特性内容
高硬度焼入れ処理をするとHRC60前後の非常に高い硬さになります。
高耐摩耗性硬いためすり減りにくく、長寿命です。
高炭素・高クロム耐久性と焼入れ性が高く、強度の高い表面を作れます。
研磨仕上げがしやすい寸法精度の高い仕上げが可能で、精密なシャフトに最適です。
錆びやすい(注意点)クロムを含んでいてもステンレスではないため、防錆対策が必要です。

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どんな用途に使われる?

SUJ2は、その高い硬度と耐摩耗性から、次のような部品に多く使われています。

  • シャフト(直動シャフト、回転軸)
  • ボールねじ、リニアガイド
  • ベアリング(玉軸受)
  • 計測機器の軸部

たとえば、リニアシャフトのようにボールブッシュと接触して何度も往復するような部品では、摩耗しにくく、精度が長く保てるSUJ2が最適です。


熱処理によって性能を引き出す

SUJ2は、熱処理(焼入れ・焼戻し)をすることで本来の性能が発揮されます。未処理の状態(生材)では柔らかく加工しやすいですが、そのままだと強度や耐摩耗性が足りません。

【熱処理後の代表的な性質】

  • 硬さ:HRC58~64
  • 引張強さ:約1850N/mm²以上(高強度)

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SUJ2の高周波焼入れってなに?特徴とメリットを解説!

機械設計の現場では、シャフトやベアリング材としてよく使われる「SUJ2」。その性能を最大限に引き出すために欠かせないのが焼入れ処理です。

今回はその中でも、「高周波焼入れ」という処理方法に焦点をあてて、初心者にもわかりやすく解説します!


焼入れってなに?

まずは焼入れとは何かを簡単におさらいしましょう。

焼入れとは、鋼材を高温に加熱した後に急冷することで、硬さや強度を高める処理のことです。SUJ2のような「高炭素鋼」は、この焼入れによって本来の性能(高硬度・高耐摩耗性)を発揮します。


高周波焼入れとは?

名前の通り高周波の電流を使って金属の表面だけを加熱し、その後急冷する焼入れ方法です。

特徴

  • 表面だけを硬化させる(芯は柔らかいまま)
  • 加熱は短時間で局所的
  • シャフトなどの円筒形状に特に適している
はじめ
はじめ

「必要な部分だけ硬くして、全体は靭性(粘り)を保ちたい」というときに最適な処理です!


SUJ2に高周波焼入れをするメリット

メリット内容
高硬度な表面表面硬度はHRC58〜62程度までアップします。摩耗に強く、長寿命に!
内部は柔らかい芯部が硬くならないため、割れにくく、衝撃にも強い設計が可能。
必要部分だけ処理できるシャフトの摩耗しやすい部分だけに処理をかけられる。
処理時間が短い高周波による加熱は短時間でできるので、大量生産に向いている

どんなときに使われるの?

SUJ2への高周波焼入れは、以下のような摩耗に強く、かつ衝撃を受けるような用途に最適です。

✅ シャフトのベアリング嵌合部
✅ スライドシャフト(リニアモーション用)
✅ ガイドピンやガイドポスト
✅ カム軸、ギア軸など回転部品の部分硬化

🚫 注意点

SUJ2は炭素量が多いため、高周波焼入れ後は表面が非常に硬くなりますが、焼戻し処理を適切に行わないと脆くなることもあります。


高周波焼入れ時の注意点

注意点解説
焼割れのリスク表面と内部の温度差によって、クラックが入ることがあるため注意が必要です。
処理後の仕上げ表面が変色・荒れるため、研磨や仕上げが必要な場合があります。
焼入れ深さの設計目的に応じて「焼入れ深さ(通常1.0~2.0mm程度)」を設計に反映しましょう。

高周波焼入れでSUJ2の性能を「必要な場所だけ最大化」

SUJ2は元々高硬度に向いた鋼材ですが、「高周波焼入れ」を使えば、

摩耗しやすい表面だけを硬化
内部は粘りを保ったまま
寸法変化を最小限に抑えて

高性能なシャフトや軸部品を作ることができます。

はじめ
はじめ

「硬さが欲しいけど、割れやすくなるのは困る…」という設計には、高周波焼入れという選択肢がとても有効です!

SUJ2の選定ポイント

チェック項目内容
摩耗に強い材料が必要?長時間動く部分ならSUJ2が有利。
精度が必要?研磨仕上げができるため、h6やg6などの高精度公差にも対応。
錆対策はどうする?防錆油を塗布する、メッキをする
ステンレスシャフト(SUS440Cなど)を検討する。
加工のしやすさは?焼入れ前なら加工性◎
焼入れ後は非常に硬く、加工は困難です。

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まとめ:SUJ2は「硬くて精密なシャフト・ベアリング」に最適!

SUJ2は、シャフトやベアリングに使われる代表的な高硬度鋼です。

✔ 高硬度、高耐摩耗性でシャフトに最適
✔ 焼入れで性能を引き出す必要がある
✔ 精密な寸法仕上げが可能
✔ 錆びやすいので使用環境に注意

「動く」「回る」「すり減る」という機械要素には、SUJ2のような信頼できる材料選定がカギになります。


はじめ
はじめ

ボルトやナット、軸受け、ギアといった基本的な要素部品の機能と選び方を詳しく紹介します

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