機械設計の図面では、寸法や公差だけでなく、
注記や備考欄を適切に活用する ことで、
設計意図を正しく伝え、製造ミスを防ぐことができます。
特に初心者のうちは「図面にすべての情報を詰め込む」ことを
意識しがちですが、適切な注記を活用することで、
簡潔で分かりやすい図面 を作成できます。
注記と備考欄の役割
注記や備考欄には、図面上の情報だけでは
伝わらない製造・加工の指示や注意点 を記載します。
これにより、以下のようなメリットがあります。
注記や備考欄に記載すべき内容
加工に関する指示
🔍 例)
表面処理や熱処理の指定
- 「焼入れ硬度 HRC58~62」
- 「アルマイト処理(黒)仕上げ」
🔍 例)
加工方法の指定
- 「この穴はリーマ仕上げ」
- 「角部は R0.2 以上の面取り」
🔍 例)
公差に関する特記事項
- 「特に指定のない公差は JIS B 0405 の中級を適用」

加工者が迷わずに作業できるよう、明確に指示を記載する!
組立や使用時の注意事項
🔍 例)
締結方法の指示
- 「M6 ボルトはトルク 10Nm で締結」
- 「この部品はシムを入れて調整」
🔍 例)
潤滑やメンテナンスの指示
- 「使用前にグリスを塗布」
- 「この部品は定期的に交換」

製造だけでなく、組立や保守のことも考えた注記を入れる!
図面全体に共通する情報
🔍 例)
材料や表面粗さ
- 「材質:S45C(焼入れ後研磨仕上げ)」
- 「表面粗さ:Ra0.8 仕上げ」
🔍 例)
はめあい公差の適用
- 「H7/h6 のはめあいを適用」
- 「軸径 φ20 ±0.02 とのクリアランスを考慮」

個別に書くと図面が複雑になる場合は、備考欄にまとめる!
注記の書き方のポイント
簡潔に書く
過剰な情報は避け、必要最小限にまとめる
誰が見ても理解できる表現を使う
あいまいな表現を避ける
(例:「できるだけ小さく」→「R0.2 以下」)
業界標準の記述を使う
JIS規格などの標準表記を活用
図面の注記や備考欄だけでは不十分? 加工者や組立者とのコミュニケーションが重要
図面は、設計者の意図を製造・組立の現場に
伝えるための最も基本的な情報ツールです。
しかし、図面の注記や備考欄だけでは、
すべての情報を正確に伝えきれないことがあります。
そこで、加工者や組立者とのコミュニケーションが重要 になります。
なぜコミュニケーションが必要なのか?
図面の解釈には「現場の視点」がある
設計者が想定した加工方法と、
実際の加工方法が異なる場合があります。
現場と相談することで、
より効率的な製造方法 が見つかることもあります。
「製造しやすい設計」につながる
図面だけでは伝わらない加工の難しさや、
工具の制約などを現場の意見から学ぶことができます。
これにより、製造しやすくコストを抑えた設計 が可能になります。
組立性やメンテナンス性を向上させる
実際に組立作業者の意見を聞くことで、
作業しやすい設計になり、品質の安定にもつながります。
不明点や疑問点を解消できる
設計者の意図が伝わっていない場合や、
解釈に迷う場合、直接話し合うことで誤解を防げます。
コミュニケーションを取るための具体的な方法
設計段階で現場の意見を取り入れる
「この加工は難しくないか?」「もっと良い方法はないか?」など、
事前に相談 することで、より良い設計になります。
試作や初回ロットの製造時に現場と確認する
実際に作ってみた結果、
問題点や改善点を共有 することで、設計の精度が向上します。
組立時に問題がないかフィードバックをもらう
「工具が入りにくい」「ボルトが締めにくい」など、
現場の声を聞くことで、次の設計に活かせるヒント が得られます。
定期的に現場との打ち合わせを行う
設計者と加工者・組立者が互いに意見を交換できる場 を設けることで、
よりスムーズな設計・製造プロセスが確立できます。
図面だけでなく、現場との連携が品質向上のカギ!
図面の注記や備考欄は重要ですが、それだけに頼るのではなく、
加工者や組立者とのコミュニケーションを積極的に行うことが、
より良い製品づくりにつながります。
✔ 設計だけで完結させず、現場の意見を聞く
✔ 試作や量産時にフィードバックを得る
✔ 製造・組立のしやすさを意識した設計を心がける

これらを意識することで、トラブルを減らし、
品質の高い製品を効率的に作ることができます!
まとめ
機械設計の図面における注記や備考欄の活用 は、
製造・組立のスムーズな進行に欠かせません。
▶ 加工や組立の指示を明確に記載する
▶ 共通する情報は備考欄にまとめる
▶ 簡潔かつ標準的な表現で記載する
適切な注記を活用することで、
分かりやすく、ミスの少ない図面 を作成できます。




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