ペラペラな板がなぜ「曲げると強くなる」の?
機械設計の現場では、「薄い板はそのままだと弱いけれど、折り曲げると驚くほど強くなる」という現象がよくあります。
たとえば、
✔ アルミのL字アングル(山形鋼)
✔ プレス加工された筐体のリブ
✔ ダンボールの折り目や補強ライン
これらはすべて、「板に曲げを加えることで剛性を高めている」設計です。
では、なぜ“曲げる”だけで強くなるのでしょうか?
その秘密は、「断面二次モーメント(=断面剛性)」という力学の考え方にあります。
基本のキホン:力学的に「強い」とは?
機械設計における「強さ」とは、主に変形しにくさ=剛性のことを指します。
つまり、「力がかかってもグニャッと曲がらずに形を保てるか?」がポイントです。
断面剛性とは?簡単に言うと…
「断面剛性」は、部材の形状がどれだけ“曲がりにくいか”を数値化したものです。
これを数式では「断面二次モーメント(I)」と呼びます。
ここで重要なのが、
断面剛性は、厚みが増えるとグンと大きくなる!
具体的には、板の厚み(高さ)方向が 2倍になると、剛性は約8倍になります。
この性質を使えば、「薄くて軽いのに強い構造」がつくれるんです。
なぜ「曲げる」だけで剛性が上がるの?
薄い板を曲げることで、断面形状が平らからL字・コの字・ハット形などの立体構造に変わります。
- 板の高さ方向に寸法ができる
- 結果として断面剛性(I)が大幅にアップ
- 同じ板でもグニャッと曲がりにくくなる
実際の構造例で理解しよう
L字アングル(山形鋼)
薄い板を90°に曲げたL字の断面にすると、
👉 平板より圧倒的に曲げにくくなる!
リブ加工(コの字や山形の折り)
板の一部を折り曲げて“リブ”をつけると、
👉 曲げ・たわみに対して強くなる!
自動車のボディや家電の筐体
プレスで「折り目」や「段差」をつけて剛性アップ。
👉 薄い板材でも軽量・高強度に!
よくある勘違い
勘違い | 実際には… |
---|---|
板の材質だけで強さが決まる | 形状(断面)も非常に重要! |
厚みを増やせばいい | 重くなる! → 折りで補強する方が軽くて効率的 |
リブは飾りだ | れっきとした構造補強の役割があります |
設計者としての考え方:厚くする?曲げる?
方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
板を厚くする | 単純で強くなる | 重くなる、材料費UP |
曲げて補強する | 軽くて強い、コスパ◎ | 工程が増える、設計工夫が必要 |

設計では、「必要な強さをいかに軽く・安く実現するか」が重要です。
そのため、薄い板を上手に曲げて補強する構造は非常に実用的です。
あなたの設計にも「薄くて強い」は活かせる!
トラス構造と同じように、「形で強さを生み出す」のが機械設計の醍醐味です。
ただのペラペラな板も、“曲げ”を取り入れるだけで頼れる部品に早変わり!
装置のカバーやブラケットは「リブや折り」で軽量補強!
― 薄くても強い設計の基本をやさしく解説 ―
なぜ「ただの板」ではダメなの?
機械装置のカバーやブラケットを設計するとき、こんな悩みにぶつかったことはありませんか?
- 「板厚を薄くしたらペコペコする…」
- 「少し力を加えただけでたわんでしまう…」
- 「でも、厚くすると重くなるし高くつく…」
そんなときの解決策が、「リブ」や「折り曲げ」による軽量補強です!
リブや折り加工ってなに?
まず言葉の意味を簡単に確認しておきましょう。
リブとは?
リブ(rib)とは、板材の裏側などに追加される細長い補強材のこと。
形はコの字・山形・V字などさまざまですが、目的は共通。
➤ たわみを防いで剛性を上げること!
折り(曲げ)加工とは?
板の一部を折り曲げて、L字やコの字にする加工。
曲げることで断面の高さが生まれ、曲げにくくなるんです。

“厚くせずに”強さを出せるのが、リブと折りの最大の利点です!
実際の使用例:装置カバーとブラケット
ケース①:装置のカバー
装置の外装カバーを薄い板金で作るとき、平らなままだと手で押しただけで「ベコッ」と凹んでしまいます。
これでは見た目も悪いし、構造的にも不安定。
✅ ここで「折り曲げ」や「リブ」をつけると…
- 板全体の剛性が向上
- 外圧に強くなり、振動や共振も抑制
- 板厚を増やさずに、軽くて丈夫なカバーが完成!
ケース②:ブラケット
モーターやセンサーなどを取り付けるブラケットは、たわみや曲がりが精度に直結します。
✅ 平板のままだと…
- 荷重でたわんで角度がズレる
- ネジ締めで歪んでしまう
✅ リブを追加すると…
- 小さな力でも形状を保てる
- 精度と耐久性の両立が可能に!
設計のコツ:どこに・どんなリブを入れる?
リブは「どこに入れるか」「どんな形にするか」で効果が変わります。
リブの配置 | 効果 |
---|---|
長辺方向に一直線 | たわみ防止に◎ |
クロス形状 | 広い面の補強に有効 |
端部折り返し | エッジの剛性UP+安全性も◎ |

ポイントは「力の流れ(荷重方向)をイメージすること」!
どこに力がかかりやすいかを考えてリブ配置を決めましょう。
材料費と加工費のバランスも考える
方法 | 特徴 |
---|---|
板厚を増やす | 強くなるが重くて高い |
リブや折りで補強 | 軽くてコストも抑えられる! |
特に量産設計では、「軽く・安く・強い」を両立するリブ構造は非常に重要です。
リブや折りは「設計の腕の見せ所」
- 薄い板材でも、リブや折りを加えることで剛性アップ
- 板厚を増やさなくても、軽量で強い部品が作れる
- 機能性・外観・コストのバランスを取る設計手法
製図時・設計時の注意ポイント
- 曲げRや金型干渉も考慮して設計する
- リブと穴やタップの位置関係に注意(歪みの原因)
「ちょっとした工夫」が、製品の質を変える!
リブや折り加工は、簡単そうで設計センスが問われる部分でもあります。
初心者の方でも、「なぜそれを入れるのか」を理解しておくことで、設計の幅がぐんと広がります。
まとめ
- 薄い板を曲げると、断面剛性が大きくなり「曲げに強くなる」
- 断面の高さが増えると剛性は劇的にアップする
- L字・コの字・リブなどの構造は、すべて断面剛性を活かした設計
- 板の厚みを増やすより、曲げて補強する方が効率的な場合が多い
設計現場での活用ポイント
- 装置のカバーやブラケットは「リブや折り」で軽量補強
- 曲げ加工で構造体を強化し、板厚はできるだけ薄く
- FEA(有限要素解析)でも断面剛性の影響を確認しよう
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