【許容張力】ローラーチェーンサイズの選定ポイント

機械要素

チェーンは機械設計において、
動力伝達や搬送装置などで広く使用されている部品の一つです。

その性能や適用範囲を決定する上で重要なのが
「チェーンのサイズ」と「ピッチ」の関係性です。

この記事では、チェーンのサイズとピッチの基本的な関係性、
選定時のポイントについて詳しく解説します。

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規格によるチェーンサイズとピッチの標準値

ローラーチェーンのサイズと容張力一覧表(JIS規格:RSチェーン)

チェーンサイズピッチ (mm)ローラー外径 (mm)内幅 (mm)許容張力 (kN)許容張力 (kgf)
RS256.353.303.180.6465
RS359.5255.084.781.52155
RS4012.77.927.952.65270
RS5015.87510.169.534.31440
RS6019.0511.9112.76.28640
RS8025.415.8815.8810.71090

表の補足説明

  • チェーンサイズ:RS規格の型番(RS40、RS50など)。
  • ピッチ:隣り合うローラーの中心間の距離。
  • ローラー外径:ローラー部分の外径。
  • 内幅:内リンクプレート間の幅。
  • 許容張力:チェーンが伝達可能な最大張力。
    • kN 単位:1 kN = 1,000 N
    • kgf 単位:おおよその重力単位(参考値)。

RS® ローラチェーンとは

椿本チェインの「RS® ローラチェーン」は、
一般的な動力伝達用途に広く使われるチェーンシリーズです。

同社の技術サイトにも
「汎用ドライブチェーン RS ローラチェーン」シリーズとして紹介されています。
椿本チェイン:RS® ローラチェーン

チェーンのサイズとピッチの定義

チェーンのサイズ

チェーンの全体的な大きさを表す指標であり、
使用される材料の強度や寸法と関係しています。

サイズは、通常、ISO規格やANSI規格に基づいた番号で表されます。

チェーンのピッチ

隣接するローラーセンター間の距離のことです。
チェーン全体の寸法や使用するスプロケットの歯数に直接影響します。
ピッチは通常、ミリメートル(mm)またはインチで表されます。

ピッチが大きいチェーンは、サイズも大きく、
より高い荷重に対応できるよう設計されています。

一方、ピッチが小さいチェーンは、
軽負荷や高精度な動力伝達に適しており、
特にコンパクトな設計が求められる場所で使用されます。

ピッチとサイズの関係性

チェーンのピッチとサイズは密接に関係しており、
以下のようにそれぞれの要素が関連します。

ピッチの大きさ

ピッチが大きくなると、チェーン自体も大きくなり、
対応するスプロケットのサイズや歯数も増加します。

ピッチが大きいチェーンは、より大きな荷重やトルクを伝達できます。
そのため、重工業や大型機械で使用されることが多いです。

チェーンのサイズの増加

ピッチが大きくなると、チェーン全体のサイズも比例して大きくなります。
これにより、チェーンのリンクやローラーも大きく、重量も増加します。

大きなチェーンは剛性が高く、高荷重に耐えることができます。
一方で、運転時の摩擦が増え、エネルギー効率が低下することがあります。

スプロケットとの互換性

ピッチとサイズが一致しないチェーンとスプロケットの組み合わせは、
正常な動作を阻害します。

ピッチに適合したスプロケットを選定することは、
滑らかな動力伝達と摩耗の抑制において重要です。

スプロケットについての関連記事はこちら

チェーンサイズとピッチの選定ポイント

機械設計において、チェーンのサイズとピッチを
適切に選定するためのいくつかのポイントがあります。

荷重条件の把握

チェーンの選定において最も重要な要素は、伝達する荷重やトルクの大きさです。

高負荷の環境では、大きなピッチとサイズのチェーンを選定する必要があります。
逆に、軽負荷であれば、小さなピッチのチェーンでも十分な性能を発揮します。

速度と精度

速度や精度が重要な場合、ピッチが小さく、軽量なチェーンが好まれます。

ピッチが大きいチェーンは質量が増える為、
加速時に慣性が大きくなり、動作速度に影響を与えます。
高精度な動力伝達が必要な場合は、小ピッチチェーンが推奨されます。

スペースの制約

機械の設計上、限られたスペースに収める必要がある場合は、
小さなピッチのチェーンが有利です。

コンパクトなチェーンは小型化を実現し、
機械全体の設計自由度が高まります。

耐久性と寿命

チェーンのピッチが大きいほど、
リンクやローラーが頑丈で摩耗に対して強い傾向があります。

そのため、長寿命が求められる環境や過酷な使用条件では、
ピッチの大きなチェーンが適しています。

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ローラーチェーンでよく使われるサイズとは?

定番ピッチをわかりやすく解説!

ローラーチェーンは、動力伝達装置や搬送装置など、
幅広い産業機械で使われる定番の機械要素です。

しかし、いざ選定しようとすると「どのサイズを選べばいいの?」
と迷う設計者も多いのではないでしょうか。

本項では、現場でよく使われるローラーチェーンサイズ(ピッチ) を中心に、
初心者でもわかるように解説します。


よく使われるチェーンサイズ(定番ピッチ)

実際の設計や機械装置で、特によく採用されるサイズは以下の通りです。

呼び番号ピッチ(mm)主な用途
RS359.525小型装置・搬送機構(軽負荷)
RS4012.70標準的な小~中型動力伝達
RS5015.875中負荷装置、一般的な産業機械
RS6019.05高負荷の動力伝達・工作機械など
RS8025.40重負荷機構、大型コンベヤなど

よく使われる定番は「RS40」と「RS50」

多くの一般産業機械では、この RS40・RS50 サイズ が最も採用されています。
理由は以下の通りです。

  • スプロケットの種類が豊富で入手性が高い
  • 部品コストが安く、標準化しやすい
  • メンテナンス部品(ジョイントリンク、オフセットリンクなど)も揃っている

チェーンサイズ選定の考え方

設計時には、以下の条件を考慮してサイズを決めるのが基本です。

選定項目チェーンサイズ選定の考え方
伝達トルク・負荷大きいほどピッチの大きいチェーンを選ぶ(RS50以上)
回転速度高速回転では小ピッチが有利(RS35・RS40)
スペース設備がコンパクトなら小ピッチを選ぶ
環境条件粉塵・油・水分がある場合は密封タイプも検討
メンテナンス性標準部品が手に入りやすいサイズを優先

設計のポイント

  • スプロケットとの組み合わせでピッチを決める
    (歯数・軸間距離・速度比を要確認)
  • テンション調整ができるよう、スライド機構や長穴を設けておく
  • 初期伸びやたわみ量を考慮して設計することで、寿命が安定する

迷ったらRS40・RS50が基本!

  • 小型軽負荷 → RS35・RS40
  • 標準~中負荷 → RS50
  • 高負荷・大型機構 → RS60以上

特に、RS40とRS50は多くのメーカー部品と互換性があり、
まずこの2つから選ぶ」のが現場設計の基本です。

はじめ
はじめ

チェーンのサイズを正しく選定することで、
摩耗トラブルを減らし、長寿命・安定した動力伝達を実現できます。

まとめ

チェーンのサイズとピッチは、動力伝達や機械の設計において重要な要素です。
チェーンの適切な選定は、機械の効率や耐久性に大きな影響を与えます。

ピッチが大きいほど高い荷重に耐える一方、
軽負荷や高精度が求められる場面では、
ピッチが小さなチェーンが有利です。

設計時には、荷重条件、速度、スペースの制約、耐久性などを総合的に考慮し、
規格に基づいた適切なチェーンを選定することが求められます。


はじめ
はじめ

ボルトやナット、軸受け、ギアといった
基本的な要素部品の機能と選び方を
詳しく紹介します。

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