機械設計において、設備カバーは機械の内部を保護し、
安全性を確保する重要な役割を担います。
同時に、外観デザインや操作性にも影響するため、
適切な材質を選択することが重要です。
本記事では、機械設計における設備カバーの材質として、
PET、ポリカ、アクリル、塩ビの特徴を比較し、
それぞれのメリット・デメリット、用途、選び方のポイントを紹介します。
透明樹脂の特徴と選び方
機械設計において、透明樹脂は軽量性、加工性、透明性を兼ね備えた
優れた素材として幅広い用途で活躍しています。
保護カバー、視察窓、照明器具、さらには医療や食品関連の機器など、
視認性が求められる場面でその特性が活かされています。
しかし、透明樹脂と一口に言っても、その種類や特性には大きな違いがあります。

代表的な透明樹脂には、
PET(ポリエチレンテレフタレート)、塩ビ(ポリ塩化ビニル)、
アクリル(アクリル樹脂)、そしてポリカーボネート(PC)があります。
それぞれの素材は、透明性の高さや耐衝撃性、耐候性、
加工性、耐薬品性などの特性が異なり、
用途や環境に応じた適切な選定が必要です。
本記事では、これら4種類の透明樹脂について、
特性やメリット・デメリットを比較しながら、
どのような条件下でどの樹脂を選ぶべきか、
設計者の視点から詳しく解説します。
透明樹脂の特性を理解することで、
より適切で効率的な材料選定が可能になるでしょう。
PET・塩ビ・アクリル・ポリカが比較されやすい理由とは?
機械設計の現場で、「透明なカバー」や「保護パネル」を設計する際に、
必ずといってよいほど候補に上がるのが以下の4つの樹脂材料です。
PET(ポリエチレンテレフタレート)
塩ビ(PVC:ポリ塩化ビニル)
アクリル(PMMA)
ポリカ(PC:ポリカーボネート)
これらは透明性・軽量性・加工性・コストといった観点でよく比較され、
それぞれに長所と短所があります。
今回は、なぜこの4つが比較対象として並ぶのか?
そして、どのように選べば失敗しないのか?について、
初心者でもわかりやすく解説します。
なぜこの4種類が比較されやすいのか?
理由はシンプルで、
いずれも「透明で軽量」「加工がしやすい」「非金属で安全」な素材だからです。
共通して以下のような用途に使われます。

つまり、「透明性」「軽さ」「保護性能」をバランス良く満たす材料として、
この4つが比較の土俵に立つのです。
4種樹脂の比較と選定ポイント
それぞれの材料のメリット・デメリット・適した用途をまとめて紹介します。
PET(ポリエチレンテレフタレート)
PETの特徴
ペットボトルにも使われる汎用樹脂。軽量で扱いやすい。
PETのメリット
コストが安い
耐薬品性が高く、割れにくい
PETのデメリット
屋外で劣化しやすい(耐候性が低め)
熱にはあまり強くない
PETの主な用途
機械の視認窓、軽量な保護カバー

🔰 初心者向けアドバイス
コスト重視かつ屋内使用ならPETが有力候補!
塩ビ(PVC:ポリ塩化ビニル)
塩ビの特徴
最も安価なプラスチックのひとつ。建材などにも使われる。
塩ビのメリット
非常に安価
耐薬品性と耐候性に優れる
塩ビのデメリット
強度・透明度・耐衝撃性が低い
塩ビの主な用途
防塵・防滴用のカバー、仮囲い

🔰 初心者向けアドバイス
強度や見栄えよりコスト重視の場面に最適!
アクリル(PMMA)
アクリルの特徴
ガラスのような透明性と美しさ。看板や展示ケースにも多用。
アクリルのメリット
透明度・光沢が非常に高い
耐候性に優れ、屋外でも使える
アクリルのデメリット
衝撃に弱く、割れやすい
可燃性がある(火には注意)
材料コスト高め
アクリルの主な用途
ディスプレイ窓、美観が重要なパネル

🔰 初心者向けアドバイス
「見た目重視」ならアクリルが第一候補!
ポリカ(PC:ポリカーボネート)
ポリカの特徴
透明樹脂の中で最も頑丈。機械カバーに最適。
ポリカのメリット
圧倒的な耐衝撃性(割れにくい)
高い透明性・耐候性もあり
ポリカのデメリット
材料コストが高い
表面がやや傷つきやすい
ポリカの主な用途
安全カバー、強度が求められる防護窓

🔰 初心者向けアドバイス
「人命や安全性を守るガード」なら迷わずポリカ!
用途別!ざっくり選定早見表
| 使用目的 | 推奨材料 | 理由 |
|---|---|---|
| コスト最優先の軽量カバー | 塩ビ | 安価で加工しやすいが強度はほどほど |
| 安全窓・内部確認用 | PET | 安価で透明・耐薬品性あり。屋内用におすすめ |
| 見た目が重要なパネル | アクリル | 高透明・高光沢で美しいが、割れやすい点に注意 |
| 落下・衝突防止ガード | ポリカ | 割れにくく高強度。透明で安全。コストはやや高め |
コスト比較(目安)
2025年8月(現在)のミスミで購入できる透明樹脂の価格になります。
(サイズ:1000mm×1000mm×5mm)を基に、コスト比較を行います。
| 材質 | 型番(ミスミ) | 価格(税別) |
| PET | PYA-1000-1000-5 | ¥9,070 |
| 塩ビ | PVC-N-1000-1000-5 | ¥11,520 |
| アクリル | ACA-1000-1000-5 | ¥17,620 |
| ポリカーボネート | PCTA-1000-1000-5 | ¥17,160 |

透明樹脂プレートのコストダウンには“筐体専用樹脂プレート”の活用が効果的!
設計で使用する透明樹脂プレート、
実は選び方次第で最大60%以上のコストダウンが可能です。
ミスミでは、従来のブランド品に代わる
「FRAMES専用樹脂プレート」を展開しており、
価格を抑えながら必要な性能を確保できます。
(筐体専用樹脂プレート)対象プレート一覧
| 材質 | 型番(ミスミ) | 価格(税別) |
| PET | F-PYA-1000-1000-5 | ¥5,987 |
| アクリル | F-ACA-1000-1000-5 | ¥6,708 |
| ポリカーボネート | F-PCTA-1000-1000-5 | ¥10,920 |
🧠 設計者向けアドバイス
「透明樹脂=高価」というイメージを持っている方も多いですが、
用途に応じて必要十分なスペックを選ぶことで、コストを大幅に抑えることができます。

特に、カバー材や表示板など、
寸法精度よりも視認性や耐久性が重視される場面では
筐体専用樹脂プレートが非常に有効です。
何を優先するかで選ぶべし!
いずれも「透明」「軽量」「加工性あり」という共通点を持ちながら、
それぞれに個性があります。
選定時には次のポイントを明確にしましょう。

「なんとなく選ぶ」ではなく、
用途と環境に合った最適な材料を選定することで、
安全性・耐久性・コストパフォーマンスの高い設計につながります。
透明樹脂と金属材料(SPCC)の選定比較
設備カバーは、機械や装置の内部を保護する重要な部品であり、
使用環境や設計意図に応じて材質を選定する必要があります。
主に使用される材質には
透明樹脂と金属材料(主にSPCC:冷間圧延鋼板)があり、
それぞれに特徴と用途があります。
本項では、透明樹脂とSPCCの特性を比較し、
適切な材質選定のポイントを解説します。
透明樹脂の特徴
透明樹脂は、PET、塩ビ、アクリル、ポリカなどが代表的な材質です。
主な特徴
用途例
注意点
耐熱性が金属に劣るため、
高温環境では変形や劣化が生じる可能性があります。
金属ほどの強度がないため、過大な荷重や衝撃には注意が必要です。
表面が傷つきやすく、透明性が低下することがあります。
SPCC(冷間圧延鋼板)の特徴
SPCCは、冷間圧延加工によって製造された鋼板で、強度や耐久性に優れています。
主な特徴
用途例
注意点
重量があるため、取り扱いや設置に手間がかかることがあります。
サビが発生する可能性があるため、防錆処理が必要です。
透明樹脂とSPCCの比較
| 項目 | 透明樹脂 | SPCC |
|---|---|---|
| 視認性 | 高い(透明で内部確認が容易) | なし(視認には窓や透明部材が必要) |
| 軽量性 | 優れている | 重量がある |
| 強度 | 衝撃には強いが、荷重には弱い | 高い(機械的衝撃や荷重に耐える) |
| 耐熱性 | 高温環境では変形や劣化の可能性がある | 優れている |
| 加工性 | 切削や成形が簡単 | 曲げ加工や溶接が可能 |
| 耐食性 | 優れている | 表面処理が必要 |
材質選定のポイント
透明樹脂が適しているケース
SPCCが適しているケース
透明樹脂とSPCCはそれぞれ異なる特性を持ち、
用途に応じた使い分けが重要です。
透明樹脂は軽量で透明性が高く、
内部の視認が必要な場面に適しています。
一方、SPCCは強度や耐久性に優れ、
高温や衝撃が予想される環境で効果を発揮します。

使用条件やコスト、加工性を総合的に考慮し、
適切な材質を選定することで、設備の性能や耐久性を最大化できます。
まとめ
PET、ポリカーボネート、アクリル、塩ビはそれぞれ異なる特性を持ち、
用途に応じて適切に選定する必要があります。
透明性が求められる場合にはアクリルやポリカーボネートが優れていますが、
コストや強度、耐薬品性を考慮すると、塩ビやPETが適している場合もあります。
使用環境や目的に応じた材質の選定が、製品の性能や耐久性を左右するため、
これらの特徴をしっかりと理解することが重要です。





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