機械設計では、部品にかかる荷重を適切に評価し、最適な材料を選定することが重要です。その中でもせん断強度は、特に接合部やシャフト、ピンなどの部品において重要な特性となります。せん断強度を適切に考慮しないと、部品が破壊し、機械全体の安全性や信頼性が低下する可能性があります。本記事では、せん断強度の基本概念と、機械設計で考慮すべきポイントについて解説します。
せん断強度とは?
せん断強度とは、材料がせん断(剪断)荷重を受けたときに破断するまでの最大応力を指します。単位はMPa(メガパスカル)で表され、材料の特性によって異なります。せん断応力は、引張応力や圧縮応力と異なり、材料の面内で滑るように変形する力に対する耐性を示します。
一般的に、せん断強度(τ)は引張強度(σ)の約50~70%程度とされることが多く、経験則として以下の関係式が使われます。
\( \displaystyle τ≈0.6σ\)
ただし、これはあくまで目安であり、材料によって異なるため、実際の設計では材料データを基に評価することが重要です。
せん断強度が重要な理由
🔹 接合部の耐久性向上
ボルトやリベット、溶接部などの接合部はせん断荷重を受けることが多く、適切なせん断強度を確保することで破断や脱落を防ぐことができます。
🔹 トルク伝達部の破損防止
キーやスプライン、シャフトとハブの結合部では、せん断強度が不足すると動力伝達中に破断し、機械の機能が損なわれる可能性があります。
🔹 ピンやヒンジ部の耐久性確保
クレビスピンやダウエルピンなどの機械要素は繰り返しせん断荷重を受けるため、せん断強度が低いと摩耗や破壊が発生しやすくなります。適切な材料を選定することで、長期間の安定した動作を維持できます。
せん断強度を考慮した設計のポイント
せん断強度を適切に考慮するためには、以下の設計ポイントを押さえておくことが重要です。
📌 適切な材料選定
- S45C、SCM440、SKD11など、用途に応じたせん断強度の高い材料を選定する。
📌 せん断面積の確保
- せん断荷重を分散させるために、接合部の断面積を十分に確保する。
📌 複数のせん断面を利用
- リベットやボルト、キーやスプラインの複数接触面を活用し、局所的なせん断応力を低減する。
📌 適切な締結・組付け方法
- ねじ部品は適正な締付トルクを管理し、せん断荷重だけでなく軸力による摩擦も利用して負荷を分散させる。
機械設計においてせん断強度を考慮する場面
機械設計では、部品や構造体に作用するさまざまな荷重を適切に評価し、最適な材料を選定することが重要です。特にせん断強度は、材料がせん断荷重(剪断力)に対してどの程度耐えられるかを示す基本的な特性であり、多くの設計シーンで考慮されます。せん断強度を軽視すると、部品の破断や変形が発生し、安全性や耐久性の低下を招く可能性があります。
本項では、機械設計においてせん断強度を特に考慮すべき代表的な場面について解説します。
せん断強度を考慮すべき場面
✅ ボルトやリベットなどの接合部
- ボルトやリベットなどの締結部品は、せん断荷重を直接受けることが多く、せん断強度が不足すると破断して接合部が崩壊する恐れがあります。
- 特に、構造体や機械フレームの接合部では慎重な材料選定が必要です。
✅ キー・スプライン・シャフトのトルク伝達部
- キーやスプライン、シャフトとハブの結合部は、回転時にせん断応力を受けます。
- せん断強度が低いと、動力伝達中に破断し、機械の機能停止につながる可能性があります。
✅ ピンやヒンジ部の耐久性確保
- クレビスピンやダウエルピンなどの機械要素は、繰り返しせん断荷重を受けるため、せん断強度が低いと摩耗や破壊が発生しやすくなります。
- 長期間の使用を想定する場合、せん断強度の高い材料を選ぶことが重要です。
✅ 歯車の歯面強度の確保
- 歯車の歯面にはせん断応力がかかるため、せん断強度が低いと歯が折損し、駆動システム全体の故障につながります。
- 特に高負荷の歯車では、強靭な材料を使用し、適切な熱処理を施すことが求められます。
✅ せん断加工を考慮する場面
- せん断強度は、板金加工やパンチング加工の際の材料選定にも影響します。
- せん断強度が高すぎると加工が困難になり、逆に低すぎるとバリや亀裂が発生しやすくなります。
せん断強度は、機械部品の接合部や動力伝達部、回転部など、さまざまな設計シーンで重要な要素となります。適切なせん断強度を持つ材料を選定することで、部品の破損を防ぎ、機械全体の安全性と耐久性を向上させることができます。

設計段階でせん断応力を適切に評価し、最適な材料と構造を選ぶことが、信頼性の高い機械設計につながります。
まとめ
せん断強度は、機械設計において特にボルト、ピン、キー、シャフトなどの部品の耐久性や安全性を左右する重要な要素です。材料のせん断強度を正しく理解し、適切な設計を行うことで、破損リスクを低減し、安全性の高い機械を設計することができます。適切な材料選定と構造設計を行い、せん断破壊を防ぐ設計を心がけましょう。
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