【ポリウレタン】ウレタンゴムの特性と選定ポイント【エーテル・エステル】

材料選定

ウレタンゴムは、高い耐摩耗性、弾性、耐衝撃性 を持つゴム材料で、機械設計のさまざまな用途で活用されています。特に、金属とゴムの中間的な特性を持つ ため、クッション性や耐久性が求められる部品に適しています。


ウレタンゴムの主な特性

高い耐摩耗性

ウレタンゴムは、一般的なゴムよりも摩耗しにくい 特性を持っています。

ベルト、ローラー、パッキンなどの摩耗が激しい部品 に使用される。
✅ 金属と比較すると耐摩耗性は劣るが、衝撃吸収能力が高いです。
摩耗と衝撃のバランスが重要な箇所で活躍 する。


優れた弾性と耐衝撃性

ウレタンゴムはゴムらしい弾性を持ちながらも、変形後の復元性が高い のが特徴です。

ダンパー、緩衝材、ショックアブソーバー などに使用される。
振動吸収や衝撃緩和が必要な部品 に適している。


耐油性・耐薬品性

✅ 一般的なゴム(天然ゴムやシリコンゴム)に比べ、油や溶剤に強い
グリースやオイルにさらされる環境 でも使用可能(ただし、一部の有機溶剤には弱い)。
機械のシール材やガスケット に使用される。


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硬度調整が可能

ウレタンゴムは、硬度(ショアA硬度)を調整できる ため、用途に応じた選択が可能。

柔らかいもの(40A程度) は、振動吸収やクッション材として使用。
硬いもの(90A程度) は、耐摩耗性が求められる部品(ローラー、ギアなど)に使用。


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ウレタンとポリウレタンの違いとは?

「ウレタン」と「ポリウレタン」、どちらもよく聞く言葉ですが、実は厳密には異なるもの です。特に、機械設計や材料選定の場面で混同しがちなので、それぞれの違いを初心者でも分かりやすく解説します。


ウレタンとは?

「ウレタン」という言葉は、化学的には「ウレタン結合(-NH-CO-O-)」を持つ化合物 を指します。

✅ ただし、一般的にはポリウレタン(PU)を省略して「ウレタン」と呼ぶ ことが多い。
ウレタンゴムウレタン塗料といった名称で使われるが、実際にはポリウレタンのことを指している
単体の「ウレタン」は、実際には材料として使われることはない

🔍 簡単に言うと…
→ 「ウレタン」は、「ポリウレタン」の略称として使われることが多いが、厳密には化学結合の名称 である。


ポリウレタンとは?

ポリウレタン(Polyurethane、略称:PU)は、ウレタン結合を持つ高分子化合物(プラスチックやゴムの一種) です。

「ポリ(poly)」は「たくさんの」という意味 で、ウレタン結合が多数つながってできた材料。
硬いものから柔らかいものまで幅広い特性を持つ
✅ スポンジ状のフォーム、ゴム状のエラストマー、塗料や接着剤としても使われる。

🔍 簡単に言うと…
→ ポリウレタンは、ウレタン結合を含む合成樹脂の一種で、さまざまな用途に使われる


ウレタンとポリウレタンの違いを比較!

比較項目ウレタンポリウレタン(PU)
意味化学結合(-NH-CO-O-)の名称ウレタン結合を含む高分子化合物
材料として使われるか?使われない広く使われる
主な用途なし(ポリウレタンの略称として使われることが多い)ウレタンゴム、ウレタンフォーム、ウレタン塗料、接着剤
柔軟性硬いものから柔らかいものまで多様
呼び方「ウレタンゴム」「ウレタン塗料」として使われるが、実際はポリウレタンのこと正式名称

🔍 結論
「ウレタン」と言われるものは、ほぼすべて「ポリウレタン」のことを指す


ポリウレタンの代表的な用途

ポリウレタンは、さまざまな分野で活用される万能素材 です。

ウレタンフォーム(スポンジ・クッション材)
→ ソファやベッド、車のシートなどに使用。

ウレタンゴム(弾性部品)
→ 耐摩耗性に優れ、ローラーや緩衝材に使用。

ウレタン塗料(コーティング)
→ 耐久性があり、自動車や木材の塗装に使われる。

ウレタン接着剤
→ 強力な接着力があり、工業用として活躍。


📌 ウレタンは、化学的な結合の名前であり、実際の材料としては使われない
📌 「ウレタン」と呼ばれるものは、ほぼすべて「ポリウレタン」のこと
📌 ポリウレタンは、ゴム状のものからスポンジ、塗料まで幅広い用途で活用されている

ウレタンとポリウレタンの違いを理解すれば、材料選定の場面でも誤解を防げます!

ウレタンゴムの材料選定!エーテル系とエステル系の違いとは?

ウレタンゴムは、機械設計において 耐摩耗性・弾性・耐衝撃性 に優れた材料として広く使われます。しかし、一口に「ウレタンゴム」と言っても、エーテル系ポリウレタンエステル系ポリウレタン の2種類があり、それぞれ特性が異なります。

本項では、エーテル系とエステル系の違い を初心者でも分かりやすく解説し、用途に応じた選び方を紹介します!


エーテル系ポリウレタンとは?

エーテル系ポリウレタンは、ポリウレタンの主鎖にエーテル結合(-O-)を含むタイプ です。

エーテル系ポリウレタンの特長

耐加水分解性が高い湿気や水に強く、劣化しにくい
低温特性が良い寒い環境でも硬くなりにくい
柔軟性が高いしなやかで衝撃吸収性に優れる
耐摩耗性はエステル系に比べるとやや劣る

向いている用途

水分の多い環境(屋外・湿気の多い場所)
低温環境での使用(寒冷地、冷凍機械部品)
衝撃吸収が求められる用途(バンパー材、振動吸収材)


エステル系ポリウレタンとは?

エステル系ポリウレタンは、ポリウレタンの主鎖にエステル結合(-COO-)を含むタイプ です。

エステル系ポリウレタンの特長

耐摩耗性が非常に高い高負荷の摺動部品に最適
耐油性・耐溶剤性に優れる油や溶剤を使用する環境に適している
機械的強度が高い圧縮や引張に強い
加水分解を受けやすい水や湿気の影響を受けやすく、劣化しやすい

向いている用途

高摩耗・高負荷がかかる部品(ローラー、ギア、ライナー)
油がかかる環境(工場の機械部品、油圧シール)
耐久性が求められる用途(プレス機部品、摺動ガイド)


エーテル系 vs. エステル系!比較一覧

特性エーテル系ポリウレタンエステル系ポリウレタン
耐摩耗性◯(比較的良い)◎(非常に優れる)
耐加水分解性(水・湿気への強さ)◎(強い)△(劣化しやすい)
耐油性・耐溶剤性△(やや弱い)◎(非常に優れる)
低温特性◎(寒冷地でも柔軟)◯(そこそこ良い)
柔軟性・衝撃吸収性◎(しなやか)◯(比較的硬め)
機械的強度(圧縮・引張)◯(標準的)◎(高い)
用途振動吸収材・湿気の多い場所摺動部品・耐久部品

どちらを選べばいい?用途別おすすめ!

水や湿気が多い環境ならエーテル系ポリウレタン
高摩耗環境での耐久性が重要ならエステル系ポリウレタン
寒冷地や低温下での使用ならエーテル系ポリウレタン
油や溶剤がかかる環境ならエステル系ポリウレタン


エーテル系ポリウレタンは、水や湿気に強く、柔軟性が高い → 振動吸収・低温環境に適している
エステル系ポリウレタンは、耐摩耗性と機械的強度が高い → 摺動部品や耐久用途に適している
用途に応じて適切な種類を選ぶことで、耐久性・性能を最大化できる!

はじめ
はじめ

ウレタンゴムを使う際には、環境や求める性能に応じてエーテル系かエステル系かを選択することが重要 です!

ウレタンゴムの硬度の違い!エーテル系は硬く、エステル系は柔らかい理由とは?

ウレタンゴムには エーテル系ポリウレタンエステル系ポリウレタン の2種類があります。これらの違いについて調べると、エーテル系は硬めで、エステル系は柔らかめ という特性があることに気づくでしょう。

では、なぜエーテル系ウレタンゴムは硬く、エステル系ウレタンゴムは柔らかいのでしょうか?本項では、その理由を 初心者でも分かりやすく 解説します!


ウレタンゴムの硬さを決める要素

ウレタンゴムの硬度(ショア硬度)は、主に 分子構造結合の強さ によって決まります。

分子同士の結びつきが強いほど硬くなる
分子が柔軟に動けるほど柔らかくなる

この考え方をもとに、エーテル系とエステル系の違いを見ていきましょう。


エーテル系ポリウレタンが硬い理由

分子の結合が強い

エーテル系ウレタンは、エーテル結合(-O-) を持つ構造になっています。この結合は 水素結合を作りやすく、分子同士の結びつきが強くなる ため、ゴム全体が硬くなります。

分子の動きが制限される

分子同士の結びつきが強いと、それぞれの分子が自由に動きにくくなります。その結果、材料全体の弾性が低くなり、「硬い」ウレタンゴム になります。

耐久性と剛性に優れる

エーテル系ウレタンゴムは、硬いために変形しにくく、耐久性に優れる というメリットがあります。そのため、高荷重がかかる部品や、剛性が必要な用途に適しています。


エステル系ポリウレタンが柔らかい理由

分子がしなやかに動く

エステル系ウレタンは、エステル結合(-COO-) を持つ構造になっています。この結合はエーテル結合と比べて 水素結合を作りにくく、分子の結びつきが弱い ため、ゴム全体がしなやかになります。

柔らかく弾力性がある

分子の結びつきが弱いため、分子が自由に動きやすくなり、「柔らかい」ウレタンゴム になります。そのため、衝撃吸収性やクッション性が高く、振動を和らげる用途に適しています。

耐衝撃性に優れる

エステル系ウレタンゴムは、柔らかいために 変形しやすく、衝撃を吸収しやすい という特徴があります。そのため、ショックアブソーバーや防振ゴムのような用途に向いています。


エーテル系 vs. エステル系の硬度比較

特性エーテル系ポリウレタンエステル系ポリウレタン
硬度(ショア)硬い(高硬度)柔らかい(低硬度)
分子の結合の強さ強い弱い
分子の動きやすさ動きにくい動きやすい
耐摩耗性高い比較的低い
衝撃吸収性低い高い
用途剛性・耐久性が必要な部品振動吸収・クッション材

エーテル系ポリウレタンは、分子の結びつきが強く、硬い性質を持つ!
エステル系ポリウレタンは、分子が自由に動きやすく、柔らかい性質を持つ!
用途に応じて、硬さを考慮して材料を選定することが重要!

はじめ
はじめ

エーテル系とエステル系のウレタンゴムは、それぞれ特性が異なります。用途に合わせて適切な種類を選ぶことで、より良い機械設計が可能になります!

ウレタンゴムの選定ポイント

ウレタンゴムを選定する際は、以下の点に注意しましょう。

項目ウレタンゴム(PU)の適性代替材料
耐摩耗性◎ 非常に高い耐摩耗性NBR(ニトリルゴム)も摩耗に強い
耐油性◎ 鉱物油・グリースに強いNBRやFKM(フッ素ゴム)も優れる
機械的強度◎ 高強度・高弾性FKMも高強度
耐候性△ 紫外線・オゾンで劣化しやすいシリコンゴムやEPDMが優れる
耐薬品性△ 一部の化学薬品に弱いFKMやFFKMが耐薬品性に優れる
耐熱性△ 80~100℃程度が限界FKMは200℃以上対応

摩耗が激しい環境や高強度が求められる用途に最適
耐油性に優れ、機械部品のシールやパッドに適する
高弾性で衝撃吸収性が高く、緩衝材としても使用可能

🚫 紫外線やオゾンに弱いため、屋外使用には向かない


まとめ

✅ ウレタンゴムは、耐摩耗性・弾性・耐油性に優れる
✅ 硬度調整が可能で、幅広い用途に対応できる
衝撃吸収や耐久性が求められる機械部品に最適

ウレタンゴムは、耐摩耗性や弾力性、耐油性に優れた材料であり、工業用途や機械設計に広く活用されています。特に、エーテル系ポリウレタンエステル系ポリウレタン の2種類があり、それぞれ特性が異なります。

🔍 エーテル系ポリウレタン は、分子の結びつきが強く 硬くて耐久性が高い 特徴があります。そのため、剛性や摩耗性が求められる用途に適しています。
🔍 エステル系ポリウレタン は、分子が自由に動きやすく 柔らかくて弾力性が高い 特徴があります。そのため、衝撃吸収や振動を和らげる用途に向いています。

用途に応じて適切な種類を選定することが重要であり、ウレタンゴムの特性を活かした設計が機械部品の性能向上につながります!

機械設計において、ゴムと金属の中間的な特性を活かして、部品の寿命や性能を向上させるために活用 していきましょう!


はじめ
はじめ

設計において欠かせない材料の特性や用途を解説しています。
適材適所の選定をサポートします。

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