【耐油性】ニトリルゴム(NBR)の特性と選定ポイント【密封性】

材料選定

機械設計において、ゴム材料の選定は
密封性、耐久性、耐薬品性などの観点から非常に重要です。

特に、ニトリルゴム(NBR)は、耐油性や機械的強度に優れるため、
工業用途で広く使用されるゴム材料の一つです。

本記事では、ニトリルゴムの基本特性や用途、
選定ポイントについてわかりやすく解説します。


スポンサーリンク

ニトリルゴム(NBR)とは?

ニトリルゴム(NBR)は、
アクリロニトリル(ACN)とブタジエン(BD)を共重合させた合成ゴムです。

特に耐油性や耐摩耗性に優れ、
油圧シール、Oリング、ホースなどの用途で広く採用されています。

ニトリルゴムの特徴

  • 優れた耐油性(鉱油・潤滑油・ガソリンなどに強い)
  • 耐摩耗性が高く、機械的強度が優秀
  • 圧縮永久歪が小さく、密封性に優れる
  • 耐熱温度は約 -40℃~120℃(ACN含有率により変化)
  • 耐水性は良好だが、耐候性や耐オゾン性はやや低い
  • ACN(アクリロニトリル)含有率によって特性が変化

ニトリルゴム(NBR)の主な用途

ニトリルゴムは、その優れた耐油性・耐摩耗性・気密性を活かし、
さまざまな工業製品に使用されています。

用途具体的な製品例
シール・パッキン類Oリング、ガスケット、オイルシール
ホース・チューブ燃料ホース、オイルホース、ゴムチューブ
工業用ゴム部品防振ゴム、ダイヤフラム
手袋・ゴム製品耐油性手袋、ゴムローラー
その他ゴムライニング、ベルト、ローラー
はじめ
はじめ

特に、油圧機器や自動車部品において
Oリングやオイルシールとして頻繁に使用されるのが特徴です。


ニトリルゴム(NBR)の主な特性

ニトリルゴムを選定する際には、
用途や使用環境に応じて適切なグレードを選ぶことが重要です。

ACN(アクリロニトリル)含有率による違い

ニトリルゴムの性能は、ACN含有率(アクリロニトリルの割合)によって変化します。
一般的に、ACN含有率が高いほど耐油性が向上しますが、低温特性や柔軟性が低下します。

ACN含有率特性
低ACN(18~24%)低温特性が良いが、耐油性は低め
中ACN(25~35%)バランスの取れた特性
高ACN(36~50%)耐油性が非常に高いが、低温特性が悪化
  • ポイント

寒冷地や低温環境では低ACNのニトリルゴムを選ぶ
高温・油環境では高ACNのニトリルゴムを選ぶ


耐熱性・耐寒性の考慮

標準的なニトリルゴムの耐熱温度は約 -20℃~120℃ですが、
特殊グレードのNBRは耐熱性を強化できます。

種類使用温度範囲特徴
標準NBR-10℃~90℃一般用途向け
高耐熱NBR~150℃高温環境向け(エンジンオイルや高温油に対応)
低温対応NBR-50℃~低温環境向け(極寒地仕様)
  • ポイント

エンジン周りや高温環境では耐熱NBRを選択
寒冷地や冷凍機器には低温対応NBRを選択


耐薬品性の考慮

ニトリルゴムは鉱油やグリースに強いですが、極性溶剤や酸・アルカリには弱いです。

化学薬品耐性
鉱物油・エンジンオイル◎(優秀)
ガソリン・軽油〇(良好)
酸・アルカリ△(やや弱い)
ケトン類(アセトン等)×(不適)
エステル系オイル×(不適)
  • ポイント

油圧機器や燃料ラインにはNBRが適している
酸やアルカリ環境ではフッ素ゴム(FKM)やEPDMを検討

耐薬品性についての関連記事はこちら

物理的強度

ニトリルゴムは、耐摩耗性や引張強度が比較的高く、
耐久性が求められる環境に適しているため、
シール材や防振ゴムとして広く使われます。

  • ポイント

耐摩耗性が求められる部品(ホース、ローラー)にはNBRが有利
強度がさらに必要な場合は補強剤入りのNBRを選択


スポンサーリンク

ニトリルゴムがOリングやオイルシールに使われる理由とは?

Oリングやオイルシールは密封(シール)用途として非常に重要な部品です。
その中でも、ニトリルゴム(NBR)は最も一般的なシール材として広く使用されています。

本項では、なぜニトリルゴムがOリングやオイルシールに適しているのか、
その理由をわかりやすく解説します!


Oリングやオイルシールとは?

まず、Oリングとオイルシールの基本的な役割を簡単に説明します。

名称主な用途
Oリング軸方向や面方向の隙間を密封し、液体や気体の漏れを防ぐ
オイルシール回転軸の周りを密封し、オイルやグリースの漏れを防ぐ

どちらも、機械の中で潤滑油や作動油を閉じ込めたり、
外部からの異物侵入を防いだりするために不可欠な部品です。

しかし、Oリングやオイルシールは常に油と接触しているため、
油に強い材料で作る必要があります。

そこで活躍するのがニトリルゴム(NBR)です。


Oリング・オイルシールについての関連記事はこちら

ニトリルゴム(NBR)がOリングやオイルシールに適している理由

優れた耐油性がある

Oリングやオイルシールは
エンジンオイル、作動油、燃料、潤滑油などに常に接触するため、
油によって劣化しにくい材料が求められます。

ニトリルゴム(NBR)は、
油に対する耐性が非常に高いゴム材料の代表格です。

特に、鉱物油やグリースなどの一般的な潤滑油に対して優れた耐性を持っています。

  • 適している油の例

エンジンオイル
ギアオイル
油圧作動油
グリース
軽油・灯油

  • ポイント

シリコーンオイルや一部の合成油には適さないため注意!


密封性が高い(弾力があり、しっかりフィットする)

ニトリルゴムは適度な弾力(柔軟性)を持ち、
Oリングやオイルシールの役割である
隙間をしっかり埋めるのに最適な特性を備えています。

特に、圧縮永久歪が小さいため、
長期間使用しても変形しにくく、シール性を維持できます。

💡 ポイント

ゴムの弾性で隙間を埋め、密封する
長期間使用しても大きく変形しない


コストが安く、入手しやすい

ニトリルゴムは比較的安価で大量生産されているため、
コストを抑えながら高性能なシール材を確保できます。

他の耐油性ゴム(例えばフッ素ゴム(FKM)やシリコーンゴム)と比較すると、
性能と価格のバランスが良いため、多くの産業で採用されています。

💡 ポイント

コストパフォーマンスが良い
需要が多く、標準部品としての流通が豊富


耐摩耗性が高く、長持ちする

Oリングやオイルシールは、機械の中で繰り返し圧縮されたり、
回転軸と接触したりするため、摩耗に強いことが求められます。

ニトリルゴムは耐摩耗性が高く、
長期間使用しても摩耗しにくい特性を持っています。

💡 ポイント

摩擦による劣化が少ない
長期間使用できる


ニトリルゴムを使う際の注意点

ニトリルゴムはOリングやオイルシールに適した優れた材料ですが、
すべての環境で万能というわけではありません。

選定時には以下のポイントを考慮しましょう。

  • ニトリルゴムが苦手なもの

耐候性・耐オゾン性が低い → 屋外での使用は劣化が早い
極性溶剤(アセトン、エステル系オイル)には弱い
シリコーンオイルや一部の合成油には適さない

💡 解決策

屋外で使用する場合は、フッ素ゴム(FKM)やEPDMを検討
耐薬品性が必要な場合は、シリコーンゴムやフッ素ゴムを選択


ニトリルゴム(NBR)は、
耐油性・耐摩耗性・コスト・密封性のバランスが優れているため、
Oリングやオイルシールの標準材料として広く使用されています。

  • 優れた耐油性 → 鉱物油や燃料に強い!
  • 高い密封性 → 変形しにくく、長期間シール性を維持!
  • コストパフォーマンスが良い → 安価で入手しやすい!
  • 耐摩耗性が高く、長寿命 → 摩耗しにくく、長く使える!
  • 幅広い温度範囲に対応 → -40℃~120℃で使用可能!

このように、ニトリルゴムは機械設計において
Oリングやオイルシールの材料として最適な特性を備えています。

はじめ
はじめ

用途や環境に応じて適切なグレードを選ぶことで、
より高性能なシール設計が可能になります!

ニトリルゴムの選定ポイント

ニトリルゴムを選定する際は、以下の点に注意しましょう。

項目ニトリルゴム(NBR)の適性代替材料
耐油性◎ 鉱物油・グリースに強いFKM(フッ素ゴム)がさらに優れる
耐摩耗性◎ 高い耐摩耗性ウレタンゴム(PU)がさらに優れる
機械的強度◎ 高い引張強度・弾性FKMも高強度
耐候性△ 紫外線・オゾンに弱いシリコンゴムやEPDMが優れる
耐熱性△ 100~120℃程度が限界FKM(フッ素ゴム)は200℃以上対応
耐寒性△ -20℃程度まで対応可能シリコンゴムやEPDMが優れる
耐薬品性△ 酸・アルカリには弱いFKMやFFKMが耐薬品性に優れる

耐油性に優れ、オイルシールやホースなどに最適
耐摩耗性が高く、機械部品のシールやパッキンに適する
比較的安価で、コストパフォーマンスに優れる

紫外線やオゾンに弱いため、屋外使用には向かない
耐薬品性が必要な場合はFKMやFFKMを選ぶ

スポンサーリンク

まとめ

ニトリルゴム(NBR)は、耐油性・耐摩耗性・密封性に優れた合成ゴムであり、
特に工業用途で広く使用される材料です。

耐油性・耐摩耗性が高く、油圧シールやOリングに適する
ACN含有率が高いほど耐油性が向上するが、低温特性が悪化する
耐熱性・耐薬品性・強度を考慮して適切なグレードを選定する
低温環境では低ACN、高温環境では耐熱NBRが適している

用途や使用環境に合わせた適切なグレードの選定を行うことで、
より信頼性の高い設計が可能になります!



はじめ
はじめ

設計において欠かせない材料の特性や用途を解説しています。
適材適所の選定をサポートします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました