【初心者向け】切削加工で失敗しない材料選びとコストダウンの工夫9選!

製図の基礎知識

切削加工を行う上で、「どの材料を使うか」は非常に重要なポイントです。
材料によって加工しやすさ(被削性)やコスト、仕上がりの精度、工具の摩耗度合いが大きく異なります。

この記事では、機械設計初心者の方でも理解しやすいように、「材料選定で失敗しないための考え方」や「コストダウンにつながる工夫」を10個のポイントにまとめてご紹介します。


1. 被削性の良い材料を選ぶ

カット**被削性(ひさくせい)**とは、「その材料がどれだけ切削しやすいか」を表す言葉です。
同じ形状でも、被削性の悪い材料を選ぶと加工時間が長くなり、工具がすぐ摩耗し、コストが上がります

代表的な被削性の比較(参考)

材料名被削性備考
アルミ合金軽くて加工が速い。※種類によっては難しい場合もあり
SS400一般的な構造用鋼
S45C炭素量が多い分、切削加工や旋盤加工に優れいる。
SUS304硬くて粘る、工具摩耗が激しい

工夫ポイント

  • 試作や簡易部品は、まずA5052やSS400など加工しやすい材料で
  • 難削材を使う場合は、最小限の形状・数量に抑える

2. 黒皮材ではなくミガキ材を使う

鋼材の中には、表面に黒い酸化皮膜(黒皮)がついた「黒皮材」と、表面が平滑な「ミガキ材」があります。
黒皮は安価ですが、表面が粗いため、後工程で加工が必要になることが多いです。

工夫ポイント

  • 公差や仕上げ面が必要な場合は、ミガキ材を使用
  • 黒皮を使う場合は、仕上げ代を十分見込む

黒皮材とミガキ材についての関連記事はこちら

3. 焼入れ材は避ける or 後加工とする

焼入れ済みの硬い材料(例:HRC60以上のSKD11など)は、一般の切削工具では加工困難です。特殊工具(超硬やCBN)が必要で、コストも上がります。

工夫ポイント

  • 焼入れ前に粗加工、焼入れ後に仕上げ加工の工程分けを検討
  • 必要最小限の部品にのみ使用する


4. 表面処理しやすい材料を選ぶ

アルマイトや亜鉛メッキなどの表面処理を行う場合、材料との相性が重要です。
たとえば、SUS304は一般的なタフトライド処理では錆びやすくなります。

工夫ポイント

  • 表面処理の前提があるなら、材料との適合性を確認
  • 材料コストと表面処理のトータルコストで考えることが重要
表面処理についての関連記事はこちら

5. 高強度材は「必要な場所」に限定する

「強度が高い=優れた材料」というイメージがありますが、高強度材ほど加工が難しくコストも高いです。

工夫ポイント

  • 荷重がかかる部分だけを高強度材にする
  • その他の部分は安価・加工しやすい材料を使う(例:組立構造)

6. 樹脂材料も加工性を考慮する

樹脂は加工しやすそうに見えますが、MCナイロンやPOM、PEEKなど、材質ごとに特性が大きく異なります。切削時に変形したり、寸法が安定しにくい材料もあります。

工夫ポイント

  • 高精度が求められる場合は「POM」など寸法安定性の高い材質を選ぶ
  • 高温環境なら「PEEK」、摩耗性重視なら「MCナイロン」など用途に応じて選ぶ

7. 加工在庫がある材料を使う

材料には「在庫品」と「受注生産品」があります。受注品は納期がかかり、加工会社での手配コストも増加します。

工夫ポイント

  • 一般的な板厚・丸棒径・長さなど、汎用材を選ぶ
  • ミスミや大手金属商社のカタログにある寸法を参考に設計する

8. 内部応力の少ない材料を選ぶ

金属は加工時に「内部応力」があると、切削後に反りや歪みが発生します。特に大物部品や平板などは注意が必要です。

工夫ポイント

  • 焼鈍材(内部応力除去済)や機械構造用炭素鋼を使用
  • 精度が必要な場合は荒加工→時効処理→仕上げ加工の順を検討

9. 材料コストと加工コストのバランスを見る

安い材料でも加工が難しければトータルコストは高くなります。逆に、多少高価でも加工が早く済む材料なら、結果的にコストダウンにつながることも。

工夫ポイント

  • 材料単価と加工時間を両方見て選定
  • 加工会社への相談や見積を活用して判断する

まとめ:設計段階から材料選びを意識しよう!

材料選定は、単に「強度が足りるか」「錆びないか」だけではありません。
加工しやすさ・表面処理との相性・入手性・熱処理性・寸法安定性など、総合的に考えることが重要です。

✅チェックリスト

工夫ポイントコンテンツ
被削性の良い材料を選ぶアルミや軟鋼など、加工しやすい材料を優先
黒皮材ではなくミガキ材を使う精度や仕上げ面が必要ならミガキ材が有利
焼入れ材は加工前に使わない加工困難。必要なら後加工で対応
異種材料の混在を避ける一体化せず分割構造で対応
表面処理と材料の相性を考える錆・密着不良を防ぐため、材料の選定が重要
高強度材は必要部分だけに使う全体に使うとコスト増。部分使用や組合せで対応
樹脂材料の特性を理解して使う寸法安定性・摩耗性・耐熱性などに応じた選定
加工在庫がある材料を選ぶ汎用寸法なら納期・コスト面で有利
内部応力の少ない材料を使う精度が必要な大物部品には焼鈍材が効果的
材料コストと加工コストのバランスを見る単価ではなく、トータルコストで判断
はじめ
はじめ

材料の選び方ひとつで、加工のしやすさやコストは大きく変わります。
ぜひ設計の初期段階から、加工性・コスト・精度のバランスを意識して材料を選んでみてください!


はじめ
はじめ

図面とCADはアイデアを具体的な形にし、設計意図を正確に伝えるための重要な手段です。

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