機械設計をしていると、構造材として「SS400(鉄)」を使うべきか、「A7075(アルミ合金)」を使うべきか迷うことがありますよね。
この記事では、SS400とA7075の特徴の違いを比較しながら、どんな場面でどちらを使えばいいのかをわかりやすく解説します!
SS400とは?(鉄の代表的な構造用鋼材)
SS400は、JIS(日本工業規格)における一般構造用圧延鋼材です。
✅ 安価で入手しやすい
✅ 加工がしやすい
✅ 引張強さ:400〜510MPa
✅ 比重:7.85

コスト重視・剛性重視の構造材として、機械フレームや架台などによく使われています。
A7075とは?(高強度アルミ合金)
A7075は、アルミ合金の中でも**最高クラスの強度を持つ「超ジュラルミン」**と呼ばれる材料です。
✅ 引張強さ:約570〜650MPa(T6処理時)
✅ 比重:約2.8(鉄の約1/3)
✅ 非常に軽く、強度が高い
✅ 航空機やレーシング部品に使用される

強度は鉄並みでありながら非常に軽いため、高性能な軽量構造材として活躍します。
SS400とA7075の比較表
特性 | SS400(鉄) | A7075(アルミ合金) |
---|---|---|
比重 | 約7.85 | 約2.8(約1/3) |
引張強さ | 約400〜510MPa | 約570〜650MPa(T6処理) |
硬さ | HB130程度 | HB150程度 |
耐食性 | 低い(サビやすい) | 高い(アルマイトでさらに強化) |
溶接性 | 良好 | 難あり(ひずみや割れに注意) |
加工性 | 良好 | 良好(ただし加工硬化しやすい) |
価格 | 安価 | 高価 |
用途の例 | 機械フレーム、架台 | 可動部品、精密治具、軽量部品 |
どう使い分ける?設計者目線で解説!
SS400を選ぶべきシーン
✔ コストを抑えたい
✔ 重さよりも剛性・安定性を重視したい
✔ 表面処理や溶接がしやすい素材を使いたい
✔ 加工性や入手性を優先したい
🔍 例)
工作機械の架台、溶接構造フレーム、工場設備の支柱 など
A7075を選ぶべきシーン
✔ 軽さが最優先(可動部、動かす構造物)
✔ 強度は必要だが、重量を極力抑えたい
✔ 表面を美しく仕上げたい
✔ サビにくい素材が欲しい
🔍 例)
可動部品、搬送部品、航空機構造、治具の軽量化 など
SS400とA7075の剛性を比較
機械設計でよく使われる材料といえば、「SS400(鉄)」と「A7075(アルミ合金)」
どちらも強度の高い構造材ですが、「剛性」はどっちが高いの?と疑問に思ったことはありませんか?
本項では、SS400とA7075の剛性(ヤング率)を比較し、使い分けのポイントをわかりやすく解説します!
そもそも「剛性」ってなに?
剛性とは、力を加えたときに「どれだけたわみにくいか(変形しにくいか)」を表す指標です。
剛性の指標:ヤング率(縦弾性係数)
- ヤング率(E)が高いほど、材料はたわみにくく剛性が高い。
- 単位は GPa(ギガパスカル)
SS400とA7075のヤング率比較
材料 | ヤング率(剛性) | 比重(密度) |
---|---|---|
SS400 | 約 205 GPa | 約 7.86 |
A7075-T6 | 約 71 GPa | 約 2.8 |
結論
- 剛性だけで見ると、SS400が約3倍も高い!
- A7075は高強度ですが、剛性ではSS400には及びません。
「強度」と「剛性」は別もの!
ここでよくある勘違いがこちら👇
A7075って、鉄と同じくらい強いんじゃないの?だったら剛性も同じくらいでは?

実はこれ、強度と剛性の混同です。
性質 | 意味 | A7075とSS400の比較 |
---|---|---|
強度 | 壊れにくさ(引張強さなど) | A7075 ≒ SS400(同等以上) |
剛性 | たわみにくさ(ヤング率) | SS400 >> A7075(約3倍) |
設計での使い分けポイント
SS400を選ぶべき場面
- たわみや振動が少ない構造が必要
- 重量が気にならない(固定構造や架台など)
- コスト重視、溶接や加工がしやすい
A7075を選ぶべき場面
- 軽量化が最優先(動かす部品、持ち運び)
- 高強度が必要(壊れないことが重要)
- 剛性は妥協できる(多少たわんでもOK)
軽さと剛性のバランスを取る工夫
A7075は剛性が低い分、断面形状の工夫で補うことがよくあります。
✅ □パイプやIビーム形状でたわみを抑える
✅ リブ追加で補強する
✅ 変形に弱い部位だけSS400にする「ハイブリッド設計」

材料の特性を理解して使い分けることで、設計の自由度と性能を両立できます。
比較項目 | SS400(鉄) | A7075(アルミ) |
---|---|---|
剛性(ヤング率) | ◎(約205 GPa) | △(約71 GPa) |
強度(引張強さ) | ○(約400〜510N/㎟) | ◎(約570N/㎟) |
軽さ | ✕(重い) | ◎(軽量) |
用途例 | 架台、支柱、ベース | 可動部品、搬送部、軽量構造 |
剛性が必要ならSS400、軽量高強度ならA7075!

それぞれの長所を活かして、最適な材料選定をしていきましょう!
注意点:どちらも「最強」ではない!
- SS400は重く、サビやすい。
- A7075は高価で、溶接や剛性にやや難あり。
それぞれ長所と短所があるので、「どんな用途に、どんな環境で、何を重視するか」で選ぶのが鉄則です。
まとめ
重視ポイント | 選ぶべき素材 |
---|---|
安価で加工しやすい | SS400 |
軽くて高強度 | A7075 |
錆びにくく見た目も美しい | A7075(アルマイト仕上げ) |
溶接や大物構造 | SS400 |
SS400とA7075はまったく性格の違う材料です。用途に応じて正しく選定することで、設計の品質とコストパフォーマンスを大きく向上させることができます!
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