「プラスチックって、なんとなく弱そう…」
「工業製品には金属の方が安心じゃない?」
そう思っている方も多いかもしれません。たしかに、プラスチックは軽くて柔らかいイメージがあります。しかし、用途に合わせて適切な種類を選べば、機械設計でも立派に“使える素材”なんです!
この記事では、プラスチックの特性・種類・使われ方について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
プラスチックってどんな材料?
プラスチックとは、石油を原料として化学的に作られた高分子材料のこと。
大きく分けて次の2種類があります。
種類 | 特徴 | 代表例 |
---|---|---|
熱可塑性樹脂 (ねつかそせいじゅし) | 加熱すると柔らかくなり、冷やすと固まる (再利用しやすい) | ABS、POM、ナイロン、 ポリカーボネートなど |
熱硬化性樹脂 (ねつこうかせいじゅし) | 一度固まると再加熱しても柔らかくならない (高耐熱・硬質) | エポキシ フェノール樹脂など |
プラスチックの主な特性(メリット)

プラスチックには、金属にはないユニークな特性があります。
軽い
同じ大きさの金属と比べて、重さは約1/6〜1/2ほど。
部品の軽量化に最適です。
電気を通さない(絶縁性)
絶縁体なので、電気部品のカバーや基板などにも多く使われます。
耐薬品性がある
酸やアルカリなどに強く、腐食しにくい素材も豊富。
成形しやすい
射出成形などで複雑な形状も簡単に大量生産できる。
プラスチックの注意点(デメリット)

もちろん、万能ではありません。
設計においては次の点に注意が必要です。
金属ほどの強度・剛性がない
高負荷がかかる部分には不向き。応力集中にも弱い。
熱に弱いものが多い
一般的な熱可塑性樹脂は、80〜150℃程度で変形・劣化することがあります。
紫外線や経年による劣化
屋外で使う場合や長期使用には、耐候性を持つ素材を選ぶ必要があります。
機械設計での使いどころとは?

カバーやパネル類(軽量・安全)
- エッジが丸めやすく、加工もしやすいため、安全性が高い。
- 軽量で取り扱いもラク。
ギアや滑り部品(自己潤滑性)
- POM(ジュラコン)などの樹脂は自己潤滑性があり、金属同士より摩擦が少ない。
- 音も静かになるため、装置の静音化にも貢献。
絶縁部品(電気部品のハウジングなど)
- 電気を通さないので、安全性アップ。
- 放熱対策として熱伝導性樹脂も活用される。
消耗部品(コストダウン)
- 短寿命でもコストが低く、交換が簡単。
- メンテナンス性向上にもつながる。
エンジニアリングプラスチックならさらに高性能!
~ 金属に迫る実力。設計に“使える”プラスチック ~
「プラスチックって強度が弱くて、ちょっと頼りない…」
そう思っていませんか?
確かに、一般的なプラスチック(汎用プラスチック)は、軽くて安いけど、強度や耐熱性では金属に遠く及ばない素材です。しかし――
“エンジニアリングプラスチック(エンプラ)”なら話は別!
エンプラは、機械部品にも使えるほどの高強度・高機能を備えた高性能プラスチック。金属に代わる素材として、今やさまざまな機械設計の現場で活躍しています。
そもそも「エンジニアリングプラスチック」って何?
エンジニアリングプラスチックとは、次のような特長を持つ高機能プラスチックのことです。
🔧 機械的強度が高い
🔥 耐熱性が高く、100℃以上でも使える
🧪 耐摩耗・耐薬品性にも優れる
⚙ 精密部品や機構部に使える性能

つまり、「ちょっとしたケースやカバー」だけでなく、実際に力がかかる部品にも使えるプラスチックというわけです。
エンプラが使われる代表的な素材と特徴
素材 | 特徴 | 主な用途例 |
---|---|---|
POM(ジュラコン) | 高強度・低摩擦・高精度加工 | ギア、スライダー、ベアリング |
MCナイロン | 軽量・耐衝撃・自己潤滑性 | 歯車、車の部品、ブラケット |
PC(ポリカーボネート) | 衝撃に強く透明性がある | 安全カバー、照明部品 |
PEEK | 超耐熱・高剛性・耐薬品性 | 医療機器、航空機部品、半導体装置 |
特にPEEKのようなスーパーエンプラは、200℃以上の高温下でも性能を維持でき、金属を置き換える材料として注目されています。
✅ エンプラのメリット
軽量で高強度
強度は高いのに、金属よりずっと軽い。装置の軽量化やエネルギー効率アップに貢献。
摩耗しにくい&潤滑性がある
自己潤滑性を持つ素材(例:POM、MCナイロン)は、潤滑油なしでも滑らかに動作。
騒音の低減や保守レス化に最適。
成形がしやすく、複雑形状に強い
射出成形で複雑な形も一体成形でき、部品点数や組立工数を削減可能。
⚠️ エンプラの注意点
もちろん、設計上の注意点もあります。
- 熱膨張が大きい:温度変化に弱いため、寸法変化に注意。
- 金属より柔らかい:ねじ部や接触部の設計には工夫が必要。
- 価格が高め:汎用プラスチックよりはコストがかかる(ただし金属より安い場合も)。
とはいえ、これらを理解して設計すれば、エンプラは金属に代わる“理想的な選択肢”になり得ます。
設計にエンプラを使うとどう変わる?
✅ 軽量化 → モーターや駆動部の負荷が減る
✅ 静音化 → 摩擦音・振動が減り、快適な作動音に
✅ コストダウン → 加工・組立コストを削減できる場合も
✅ 絶縁性・耐薬品性 → 過酷な環境下でも使用可能
高性能+軽量+省エネ。それがエンプラの魅力です。

📦 「軽く・強く・安く」設計したいなら、プラスチックを候補に!
正しい選定で、設計の幅がぐっと広がりますよ。
エンプラは「金属の代わり」ではなく「新しい設計材料」
エンジニアリングプラスチックは、単なる「金属の代用品」ではなく、新しい設計の可能性を広げてくれる素材です。
🔷 ギアや摺動部に使える強さ
🔷 精密加工ができる寸法安定性
🔷 軽くて静か、安全性もアップ
材料選定にエンプラを加えることで、あなたの設計はより軽く、より静かに、より高機能になります。
📌 これからの設計に、金属だけじゃない選択肢を。

エンプラは“使いこなせば設計の武器”になる素材です。
まずはPOMやMCナイロンから試してみるのもおすすめですよ。
まとめ:プラスチックは設計の“選択肢”になる!
プラスチックは、「強度が足りない」「柔らかい」というイメージがあるかもしれませんが、それは使いどころを間違えた場合の話。
特性を理解し、用途に合わせた素材を選べば、金属ではできない設計が可能になります。
✔ 軽くて成形しやすい
✔ 絶縁・耐薬品・自己潤滑などの多彩な機能
✔ エンジニアリングプラスチックで高強度も実現可能
これからの機械設計では、プラスチックを使いこなせることが「設計力」の一つになってきます。
ぜひ、用途や目的に応じて、金属との使い分けを考えてみましょう!
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