工作機械やロボット、自動搬送装置など、
高い精度と安定した動きが求められる場面で使われる「サーボモーター」。
でも、初心者の方からはよくこんな質問をいただきます。
「普通のモーターと何が違うの?」
「なぜそんなに精密な動きができるの?」
「フィードバック制御って何?」
この記事では、サーボモーターが精密な動作制御を可能にする理由を、初めての方でも理解できるように、わかりやすく解説します。
サーボモーターとは?簡単にいうと…
サーボモーターは、「目標とする位置・速度・角度にピタッと合わせることができる」高精度なモーターです。
内部に位置検出装置(エンコーダー)を内蔵しており、「今どこにいるか」「どれだけ回ったか」を常に把握しながら動きます。
精密な制御ができる理由:フィードバック制御とは?
~サーボモーターが“ピタッと動く”しくみ~
産業用ロボットや工作機械など、わずかなズレも許されない場面で使われるサーボモーター。
その最大の特長が「フィードバック制御」です。
本項では、「なぜフィードバック制御によって精密な動きができるのか?」をやさしく解説します。
そもそもフィードバック制御とは?
フィードバック制御とは、簡単に言うと…
「今の状態を見ながら、ズレていればすぐに修正する」という賢い制御方法です。
サーボモーターは、指令された動きと実際の動きにズレがないかを常に監視し、そのズレを自動で修正しながら動いています。
フィードバック制御の流れ
- コントローラが指令を出す
→「○○mm動いて!」「○○°まで回して!」など。 - モーターが動き始める
- エンコーダーが現在の位置を検出
→ 回転量や現在位置を常に測定しています。 - ズレを検出すると自動で修正
→ 指令と違っていたら、すぐに補正して正しい位置に戻します。
たとえばこんな動き方
状況 | 動き |
---|---|
指令より回りすぎた | モーターが戻って調整 |
回転が遅れている | 出力を上げて追いつく |
想定外の負荷がかかった | 自動でパワーを調整して対応 |
このズレ→補正→ズレ→補正のサイクルが、1秒間に何千回も繰り返されているのです。
そのおかげで、サーボモーターは…
✅ 正確な位置に止まれる
✅ 高速でも安定して動ける
✅ 外部からの影響にも対応できる
という、非常に高精度な動作が可能になります。
なぜこれが重要なの?
モーターは単純に「回るだけ」なら簡単です。
しかし、「正確に止める」「ズレずに動かす」ことはとても難しいのです。
もしフィードバック制御がなければ…
🚫 モーターは指令通りに動いているか確認できない
🚫 ズレても気づかないまま進み続けてしまう
🚫 外乱(たとえば重さの変化や風)に弱い
といった問題が起きます。
フィードバック制御は“自動で帳尻を合わせる”仕組み
初心者の方にイメージしていただきやすいように、人の動作で例えるとこんな感じです。
フィードバック制御の例:車のハンドル操作
- 指令:まっすぐ走りたい
- 実際:少し右にズレた
- 修正:ハンドルを左に切って戻す
→ これを無意識に何度も繰り返しているのが人の運転です。
サーボモーターもまったく同じで、「ズレたら自分で修正し続ける」ことで、まっすぐ・正確に進めるのです。
サーボが精密な理由=ズレを見て直すから
項目 | 内容 |
---|---|
制御方式 | フィードバック制御 |
構成 | 指令 → 実測 → 比較 → 補正 |
働き | ズレを自動で修正し続ける |
結果 | 精密で安定した動きが可能になる |
サーボモーターが他のモーターと違うのは、動いた結果を「見る目(エンコーダー)」を持っていて、自分で軌道修正ができるという点です。
これが、サーボモーターが高精度な位置制御・速度制御を実現できる最大の理由なのです。
他のモーターとの違い
~サーボモーターは“ズレを直せるかしこいモーター”~

機械設計を始めたばかりの方が悩みやすいポイントのひとつが、「モーターの使い分け」です。
とくに「サーボモーターって何がそんなにすごいの?」という疑問はとても多く寄せられます。
この記事では、サーボモーターと他の代表的なモーターとの違いを、初心者にもわかりやすく紹介します。
各モーターの特徴と制御方式
モーターの種類 | 特長 | 制御方式 |
---|---|---|
サーボモーター | 高精度、ズレを自動修正 | フィードバック制御 |
ステッピングモーター | 指令通りに動くが、ズレ検出はなし | オープンループ制御 |
DC/ACモーター | 単純な回転動作。制御はアバウト | オープンループ制御 |
サーボモーター:ズレを自分で直すかしこいモーター
サーボモーターは、「フィードバック制御」という仕組みで動いています。
内部のセンサー(エンコーダー)で常に自分の状態を確認し、「指令どおりに動いているか?」をチェック。
もしズレがあれば、その場で自動修正します。
たとえば…
- 回転が遅れていたらスピードを上げる
- 少し動きすぎたら戻る
- 負荷が変わっても指令どおりに動く
というように、ズレに気づいて自分で調整する力を持っているのです。
ステッピングモーター:指令どおりに動くだけ
ステッピングモーターは、「パルス信号の数=回転角度」となっており、コントローラの指令通りに細かくステップして動きます。
ただし、現在位置の確認はできません。つまり…
- ズレがあっても検出できない
- 外部からの力で動かされてもわからない
- 負荷が重すぎると脱調(制御不能)になることも
という弱点があります。
精度があまり求められない用途では使いやすいですが、高精度な制御には不向きです。
DCモーター・ACモーター:単純な回転動作
DCモーターやACモーターは、電圧をかけるだけで回転するシンプルな構造です。
- 制御が簡単でコストも安い
- ただし、回転数や位置を正確に制御するのは難しい
- 速度・位置フィードバックは基本なし
装置の「ファン」や「ポンプ」など、回りさえすればOKな用途では活躍します。
サーボモーターは“見て動ける”から高精度
サーボモーターの強みを一言でいうならば、
「自分の動きを常に監視して、ズレたら自分で直す」かしこいモーター
特徴 | DC/ACモーター | ステッピングモーター | サーボモーター |
---|---|---|---|
精度 | × | △(ズレ検出なし) | ◎(ズレ自動補正) |
制御 | 回転のみ | 回転制御(開ループ) | 位置・速度・トルク制御(閉ループ) |
負荷変動対応 | 弱い | やや弱い | 強い |
設計初心者へのアドバイス
「どのモーターを使うべきか?」と迷ったら、まずは次の視点で考えてみましょう。
- 位置や角度の精度が必要?
→ YESならサーボモーター一択! - 低価格でOK、ズレの許容範囲が広い?
→ ステッピングやDCモーターで十分

モーター選びは、装置の精度・コスト・負荷条件に応じて適材適所が大切です。
サーボモーターが活躍する場面
サーボモーターは、次のような用途でよく使われます。
- 産業用ロボットの関節
→ 微細な位置調整が必要なため - CNC工作機械の送り軸
→ ミクロン単位で刃物の位置を制御 - 搬送装置のタイミング制御
→ 複数の装置と「同期動作」が求められる - 自動車の電子制御スロットル
→ アクセル開度に応じて滑らかに開閉
精密な位置決めや、動作の安定性が求められる場面でサーボモーターは非常に有効です。
設計で注意すべきポイント
サーボモーターを設計に取り入れる際は、以下の点に注意しましょう。

トルクと慣性負荷のマッチング
動かす対象が重すぎると、モーターが過負荷になります。
→ 慣性比の計算が重要!
ケーブルの取り回しとノイズ対策
位置情報のフィードバックには、ノイズに強い信号線が必要です。
→ シールドケーブルやアース処理が推奨されます。
サーボアンプとの組み合わせ
モーター単体では動かず、サーボアンプとセットで使用します。
→ 電圧や指令方式の整合性を確認。
サーボの導入は「精度」と「安定性」を手に入れること
設計初心者の方が機構を考えるとき、つい「大きなトルクのモーターをつけておけば何とかなる」と思いがちですが…
ただ回るだけのモーターでは「意図した場所にピッタリ止まる」は実現できません。
サーボモーターなら…
- 「ここまで動かして、ピタッと止める」
- 「決まったタイミングで、決まった速度で動かす」
- 「外乱があっても、自動的に補正する」
といった精密な動作制御が可能になります。
まとめ:サーボモーターは“自分で考えて動くモーター”
項目 | 内容 |
---|---|
特長 | 位置・速度・トルクを高精度に制御 |
原理 | フィードバック制御によりズレを補正 |
比較 | ステッピングやDCモーターより高性能 |
注意点 | トルク選定・ノイズ対策・アンプ整合が必要 |
「なぜサーボモーターが精密に動けるのか?」という疑問の答えは、
フィードバック制御による自動補正機能にあるということです。
コメント