〜空気圧制御に欠かせない「見えない力」を測るセンサー〜
空気圧を利用したアクチュエーターや制御装置では、正確な圧力制御が生産性や安全性に直結します。そこで重要なのが「エア圧力センサー(空気圧センサー)」です。
この記事では、エア圧力センサーの基本原理から種類、特性、選定時のチェックポイントまでを、初心者の方にもわかりやすく解説します。
エア圧力センサーとは?
エア圧力センサーとは、空気の圧力を電気信号に変換するセンサーです。
空気圧回路や装置に組み込まれ、以下のような役割を果たします。
✅ アクチュエーターの駆動圧の監視
✅ 圧力異常検知(過圧・漏れ)
✅ 定圧制御(クローズドループ制御)
✅ 品質保証(圧力ロギング)
基本的な構造と原理
エア圧力センサーの多くはひずみゲージ型またはピエゾ抵抗型です。
センサー方式 | 概要 | 特徴 |
---|---|---|
ひずみゲージ型 | ダイアフラムの変形によって抵抗値が変化 | 高精度・安定性に優れる |
ピエゾ抵抗型 | シリコン基板の変形に応じて抵抗が変化 | 小型・安価・応答が速い |
静電容量型/光学式 | 特殊な用途向け | 高速応答や非接触用途に活用 |
※工場の自動機などでは、主にひずみゲージ型やピエゾ抵抗型が主流です。
圧力の単位と測定範囲
エア圧力センサーでは、以下のような単位や測定基準が使われます。
圧力の単位(代表的なもの)
- MPa(メガパスカル):産業機械で最も一般的(例:0.5MPa)
- kPa(キロパスカル):低圧用、空調など
- kgf/cm²:古い設備や日本国内では根強い
圧力の基準(測定方式)
測定方式 | 説明 | 用途例 |
---|---|---|
ゲージ圧(G) | 大気圧を基準にした圧力 (例:0MPa = 大気圧) | 空圧制御全般 |
絶対圧(A) | 真空を0として測定 (例:大気圧 ≈ 0.1013MPa) | 宇宙・真空応用 |
差圧(D) | 2点間の圧力差を測定 | フィルターの目詰まり監視など |
エア圧力センサーの主要な特性
特性 | 内容 | 補足説明 |
---|---|---|
測定範囲 | 使用圧力範囲に合ったセンサーを選定 | 例:-0.1〜0.5MPa など |
精度 | 指示値に対する誤差(±%FS) | 高精度タイプは±1%未満 |
応答速度 | 圧力変化をどれだけ速く追従できるか | 数ms〜数百ms |
出力形式 | 電圧出力(0〜5V)、電流出力(4〜20mA)、デジタル出力など | PLCと接続性要確認 |
表示機能 | ディスプレイ付き or 非表示タイプ | 瞬時値を目視で確認可能 |
動作温度範囲 | -10℃〜+60℃など | 厳しい環境下では重要 |
耐圧性能 | センサーが壊れない最大圧力 | 安全マージンに余裕を |
エア圧力センサーの選定ポイント
測定範囲の確認
- 実際に使用する圧力より20〜30%余裕のある範囲を選ぶのが安全
- 負圧(真空)を扱うなら負圧対応型を選定
出力形式を確認
- アナログ出力:PLCアナログ入力が必要
- デジタル出力:ON/OFF信号のみ(しきい値設定タイプ)
- IO-Link、Modbusなどの通信出力:高機能制御向け
使用環境への対応
- 防塵・防滴(IP規格)
- 温度・湿度条件(結露注意)
- 配管接続サイズ(R1/8, M5など)
表示機能・しきい値設定の有無
- 作業者の視認性を重視するなら表示付きタイプ
- 抜け検知や過圧警報が必要なら比較出力付きタイプ
コスト vs 機能
- 精度・耐久性が要求されるなら高価でも耐久型を
- 単純なON/OFF監視ならコスト重視も選択肢
用途別のセンサー例
用途 | 推奨される仕様 |
---|---|
エアシリンダの圧力監視 | 0〜0.5MPa、ゲージ圧、アナログ出力 |
真空吸着の監視 | -0.1〜0MPa、負圧対応、しきい値出力付き |
空圧回路の漏れ検知 | 高精度型、±0.5%FS以下 |
ロボットのグリップ力管理 | 応答性の速い小型センサー、IO-Link対応など |
よくあるトラブルと対策
トラブル | 原因 | 対策 |
---|---|---|
表示が安定しない | 配管内に脈動がある | ダンパ(オリフィス)挿入 |
0点がずれる | センサーの劣化・温度変化 | 定期的なゼロ点校正 |
圧力が異常高値 | バースト圧超過 | セーフティバルブ設置、耐圧見直し |
出力信号がPLCに届かない | 出力形式ミスマッチ | 電圧/電流出力の整合を確認 |
エア圧力が低下するとどうなる?
〜機械トラブルを未然に防ぐための基礎知識〜
空圧を利用した機械や装置は、安定したエア圧力があってこそ正常に動作します。しかし、配管の漏れやコンプレッサの不具合などによってエア圧力が低下すると、さまざまなトラブルが発生します。
本項では、エア圧力が低下したときに起こり得る代表的なトラブルと、その原因・対策についてわかりやすく解説します。
エア圧力低下で発生する主なトラブル例
エアシリンダの動作不良・遅れ
▶ 現象
- シリンダが途中で止まる
- 動作速度が極端に遅くなる
- 動作が不安定になる
🚫 原因
- シリンダを駆動するための必要な圧力に達していない
- 抵抗(摩擦や負荷)に勝てず停止してしまう
✅ 対策
- 適正圧力(通常は0.4〜0.6MPa)を確保
- 圧力センサによる監視導入
- 配管経路の見直しや漏れ点検を実施
真空吸着ができない/ワーク落下
▶ 現象
- 吸着パッドで製品を吸い上げられない
- 持ち上げ途中でワークが落下してしまう
🚫 原因
- 真空エジェクターの一次側圧力不足
- 負圧が十分に発生せず吸着力が弱くなる
✅ 対策
- コンプレッサ圧力の見直し
- 真空スイッチで吸着圧力の監視
- 吸着失敗時のインターロック機能を設ける
エアブローの威力不足
▶ 現象
- ゴミや切粉がうまく飛ばない
- ワーク表面にエアが届かない
🚫 原因
- ノズル先端の吹き出し圧力が低下
- 内部の配管抵抗+供給圧低下が重なることで出力が激減
✅ 対策
- ノズル径・配管径の見直し
- エアタンクの設置で圧力安定化
- 配管距離を短くするなどの工夫
空圧機器の誤作動・誤検知
▶ 現象
- 圧力スイッチが誤動作する
- 自動装置が異常停止する
🚫 原因
- 設定したしきい値より圧力が下回り、誤検知が発生
- 圧力変動によるチャタリング動作
✅ 対策
- 圧力スイッチのヒステリシス設定を調整
- より安定した圧力供給経路を確保
- PLC側で誤検知防止ロジックを構築(タイマフィルタなど)
コンプレッサの再起動が頻発
▶ 現象
- コンプレッサが頻繁にON/OFFを繰り返す
- 吐出圧が安定せず、装置全体が不安定
🚫 原因
- エア漏れによる常時エア消費
- 使用量と吐出量が合っていない
✅ 対策
- 配管や継手の漏れチェック(シャボン液、漏れ検知器)
- コンプレッサ容量の見直し
- エアリザーバタンクの追加
エア圧力低下の原因とは?
原因 | 詳細内容 |
---|---|
漏れ | 継手のゆるみ、劣化、配管破損など |
過大なエア使用量 | 複数装置同時使用、設計容量オーバー |
コンプレッサの異常 | モーター不良、ベルト切れ、フィルター詰まり |
ドレン詰まり | 水分が溜まり流路が狭くなる |
圧力調整不良 | レギュレータ設定ミス、圧力センサーの故障 |
圧力低下を防ぐための設計・運用ポイント
常時監視できる「圧力センサー」を設置
👉 圧力変化をリアルタイムでPLCに取り込み、しきい値でアラーム可能
安全マージンを持った設計圧力に
👉 ギリギリの圧力設定ではトラブルの元(最低でも20%の余裕を)
定期的な「漏れチェック」を実施
👉 特に「レギュレータ」「継手」「シリンダまわり」が要注意
ドレン排出は自動化または定期確認
👉 水分による配管詰まりや腐食も圧力低下の原因に
✅ 適正な設計圧力・運用管理・定期点検が重要
✅ エア圧力低下により、シリンダ停止・吸着失敗・誤動作など多くのトラブルが発生
✅ 漏れ・過負荷・コンプレッサ不良が主な原因
✅ 圧力センサーとしきい値監視で早期検出が可能

エア圧力の低下は、機械トラブルの大きな原因になりますが、事前の対策や監視により未然に防ぐことが可能です。
まとめ
エア圧力センサーは、空気圧制御や品質管理において重要な情報源となるセンサーです。用途や環境に応じた選定を行わないと、誤動作や機械のトラブルに直結してしまいます。
✔ 圧力単位・出力形式・測定範囲の基本を押さえる
✔ 測定範囲には「余裕」を持たせて選ぶ
✔ 使用環境に応じた耐久性・応答性を確認
✔ PLCや制御機器との出力信号の整合性が重要
✔ 表示付きタイプは現場作業者にも安心
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