機械設計における図面とCADは、設計意図を形にし、
製造現場に伝える「共通言語」として欠かせない存在です。
製品の形状、寸法、材料、加工方法などを正確に伝えることで、
設計ミスを防ぎ、製造プロセスを効率化します。
本記事では、図面の基本ルールから
CADの活用方法までを分かりやすく解説します。
設計初心者はもちろん、
ベテラン設計者にも役立つ情報が満載です。
図面とは何か?役割と基本ルール

図面の役割
図面は、設計者の意図を正確に伝え、
製造・組立・検査の各工程で共通の基準となる重要なツールです。
図面の役割を理解し、適切に活用することで、
品質の安定やコスト削減につながります。
設計意図の伝達
🔍 例)
「はめあい公差 H7/g6 指定」「摩耗部品は交換可能な設計」
👉 製品の機能や組立方法を正確に伝える
製造基準の明確化
🔍例)
「未指示公差 ±0.1mm」「キー溝加工 JIS B1301 準拠」
👉 加工精度を統一し、品質のバラつきを防ぐ
検査基準の設定
🔍例)
「全長100.0±0.2mm」「公差外れNG」
👉 合否判定の基準を明確にし、不良を削減
コスト管理と効率化
🔍例)
「この部品はレーザー加工推奨」「公差緩和で加工コスト削減」
👉 不要な精度を削減し、製造コストを最適化
トレーサビリティの確保
🔍例)
「図面No. 2024-001-A」「改訂履歴:Version 3」
👉 設計変更や製品管理をスムーズに

図面を適切に作成・活用することで、
製品の品質向上とコスト削減が可能になります。
基本的な製図ルール
投影法の基本
📌 第一角法
- ヨーロッパや一部のアジア地域で主に使用されます。
- ISOの規格に基づいた設計が行われる場合に適用されることが多い。
📌 第三角法
- 日本やアメリカで主に使用されます。
- JISに基づいた設計図では、第三角法が標準として採用されています。
スケールの設定
📌 図面のサイズに応じて適切な縮尺を設定
🔍 例)
「1:1(実寸)」「1:2(半分の大きさ)」「2:1(2倍)」
👉 スペースや視認性を考慮して選択
線の種類と使い分け
- 実線(輪郭や見えるエッジを表す)
- 破線(隠れたエッジや内部の形状を示す)
- 一点鎖線(中心線や基準線として使用)
- ニ点鎖線(想像線として使用)
👉 線の種類を正しく使い分けることで、情報が明確になる
寸法記載のルール
- 必要な寸法のみを記載し、重複を避ける
- 寸法の配置は見やすく統一する
- 公差を適切に設定し、加工精度とコストを両立
🔍 例:「Ø10 H7(はめあい公差)」「±0.1(一般公差)」
基本的な製図ルールを守ることで、正確でわかりやすい図面を作成でき、
スムーズな製造・組立が実現します。
図面の設計変更と改定
変更履歴の記録
図面が更新されるたびに、どこが変更されたのか、
いつ、誰が行ったのかを明確に記録します。
変更箇所の特定
更新後の図面を確認する際、変更箇所が一目でわかるようにすることで、ミスを防ぎます。
図面の注記や備考欄の活用方法
図面の注記や備考欄は、設計者の意図を正しく伝え、
製造や組立のミスを防ぐために重要な役割を果たします。
適切に活用することで、品質の安定や作業効率の向上につながります。
公差や仕上げの指示
🔍例)
「未指示公差はISO 2768-mKに準拠」「加工面Ra1.6以下」
👉 加工精度を明確にすることで、仕上がりのバラつきを抑制
熱処理や表面処理の指定
🔍例)
「S45C 焼入れHRC55以上」「アルマイト処理(黒色)」
👉 強度や耐久性の確保、腐食防止のための指示
組立時の注意点
🔍例)
「A部品とB部品は位置決めピンで組付ける」「締付トルク20N・m」
👉 組立時のミス防止と作業効率の向上
特定の加工方法の指定
🔍例)
「ワイヤーカット仕上げ」「キー溝はフライス加工」
👉 不要な加工コストを抑え、適切な製造方法を選択
特記事項や参考情報
🔍例)
「試作時にクリアランス確認」「代替材:SCM440可」
👉 柔軟な対応を可能にし、設計変更時の判断をスムーズに

適切な注記と備考の活用により、
製造・組立の精度向上と作業の効率化が実現できます。
部品番号の役割と基本ルール

機械設計の図面では、各部品に「部品番号」を付けて管理します。
この番号をもとに「部品表(BOM)」で、
部品名・数量・材料などの情報を一覧にまとめます。
図面上では、部品番号をバルーンや引き出し線で表示し、
部品表と対応させることで、組立・発注・在庫管理がスムーズに行えるようになります。
図面において基準面を意識することの重要性
基準面とは、部品の加工、組立、検査を行う際に
参照される基準となる面や軸のことです。
基準面の設定は、寸法や公差の基準となる位置を明確にし、
製造や組立での一貫性を確保します。
【図面の基準面はどう決める?】
機械設計において、図面における基準面の設定は非常に重要です。
基準面とは、部品の加工・組立・検査を行う際に、
常に参照される基準となる面や軸のことを指します。
この基準面が明確であれば、
といったメリットがあります。
一方で、基準面を意識せずに図面を描いてしまうと、
といったトラブルにつながります。
では、図面の基準面はどのように決めればよいのでしょうか?
加工と組立の流れを考えることで、基準面が自然と定まる理由を、
機械設計初心者にも分かりやすく解説します。
図面のビューの工夫で設計意図を正確に伝える
図面は、設計者の意図を製造者や組立者に伝えるための共通言語です。
しかし、ビュー(投影図)の配置が適切でないと、
読み手の誤解を招き、加工ミスや組立不良につながることがあります。
そこで、図面のビューを工夫し、正確に設計意図を伝えることが重要になります。
誤解を減らすためのビューの工夫
必要な方向のビューを追加する
形状が正しく認識できるよう、
必要に応じて追加のビュー(正面・側面・上面など)を配置する。
隠れ線を減らし、見やすくする
隠れ線が多いと図面が見にくくなるため、
断面図や詳細図を活用し、情報を整理する。
対称形状は省略を活用
「対称記号」や「1/2表示」 を活用し、
不要な情報を減らして見やすくする。
等間隔穴・連続形状を表記するコツ
機械設計の図面では、小さな寸法が大量に並ぶと図面が読みにくくなり、
製造ミスや検査漏れの原因にもなります。特に、等間隔の穴や連続形状がある場合、
一本ずつ寸法を入れてしまうと図面が“寸法だらけ”になってしまいがちです。
そこで有効なのが パターン寸法(まとめ寸法) です。
「P20×5」のように、ピッチとピッチ数でまとめて表現する方法を使えば、
図面がすっきり整理され、製造者にも意図が正確に伝わります。
断面図を活用する
内部構造がわかりにくい場合は断面図を用いることで、
隠れた部分を明確に表現できる。
(例:ボスや穴の位置関係を正確に伝える)
詳細図で小さな部位を拡大する
ねじ穴やキー溝など、重要な部分が小さくて見えにくい場合は、
詳細図を追加して明確にする。
図面サイズの最適化
図面が大きすぎると扱いにくく、小さすぎると情報が読みにくくなるため、
適切なサイズを選ぶことは設計品質に直結します。
文字サイズと装飾の最適化
文字サイズは、設計ミス・加工ミス・組立ミスを
防ぐための非常に重要な要素です。
また、文字は “大きく書く”だけでなく
“装飾して伝わるようにする” ことが重要です。
ビューの工夫がもたらすメリット
図面は「できるだけシンプルに」「正しく伝わるように」作成することが大切です。
ビューの工夫によって、製造現場の誤解を防ぎ、スムーズなものづくりを実現しましょう!
図面を読む力を鍛える:基礎知識と実践
機械設計の現場では、機械図面を正確に読み取る力が不可欠です。
設計者だけでなく、製造や検査、品質管理に関わる全ての人が
このスキルを持つことで、効率的なコミュニケーションと製品の品質向上につながります。
機械図面を読む力の重要性
機械図面は、製品の仕様や構造を正確に伝えるための情報源です。
これを正しく読み解けないと、以下のような問題が生じます。
図面を正しく読む力を養うことは、設計の意図を確実に伝え、
効率的なものづくりを実現するための重要なスキルです。
単位について
単位とは、「量」を表現するための共通の基準です。
たとえば、長さを「mm(ミリメートル)」で表したり、
重さを「kg(キログラム)」で表したりします。
つまり、単位は設計図面や仕様書の言語そのものとも言えます。
インチ図面のmm換算
機械設計において、図面がインチ単位で記載されていることがあります。
特に、古い図面や、北米やイギリスをはじめとする
インチ単位を採用している国で製作された機械部品の図面では、
今でもインチ表記が一般的です。
インチ単位とミリメートル(mm)単位の換算を正確に理解し、
扱えるようにしておくことが重要です。
実務的な注意点
- 国際規格への準拠
- JISやISOなどの規格を理解し、正確な図面を読む力を養う。
- トレーニングの実施
- 実際の設計や製造プロセスで経験を積むことが、スキル向上の鍵。
図面の理解に欠かせない記号と表現
図面には、製造や検査に必要な情報を伝えるための記号が使われます。
寸法公差
🔍 例)
50 ± 0.1(50 mmから+0.1 mm、-0.1 mmの範囲内で加工)。
これらの記号を正確に読み取ることが、
設計意図を理解する第一歩です。
幾何公差の記号
表面粗さの記号
研磨指示のポイント
機械設計の図面では、研磨指示を適切に記載することで、
加工者に必要な仕上げ精度を明確に伝えることが重要です。
研磨指示の記号
表面仕上げを示す記号
(例:G)
👉 必要な仕上げ精度を伝え、適切な加工方法を指定
研磨範囲の明確化
どの部分を研磨するのかを図面上で指定
(例:「この面のみG仕上げ」)
👉 不要な研磨を防ぎ、コストと時間を削減
研磨方法の指定(必要に応じて)
ラップ研磨、バフ研磨、円筒研磨などを明記
👉 求める表面精度や用途に応じて最適な方法を選定
適切な研磨指示を行うことで、加工品質の向上とコストの最適化を実現できます。
寸法補助記号について【図面の読み取りの基本】
機械設計の図面には、単なる数値だけでなく、
「寸法補助記号」と呼ばれる記号が使われています。
これらの記号は、形状や寸法の意味を簡潔に表すためのもので、
正確な設計意図を伝えるために不可欠です。
ここでは、代表的な寸法補助記号を初心者向けにわかりやすく解説します。
φ(ファイ):直径
- 意味:円や円筒の直径を表します。
- 例:φ10 → 直径10mmの円や穴。
R(アール):半径
- 意味:円弧や曲面の半径を表します。
- 例:R5 → 半径5mmの曲面。
C(シー):面取り(C面)
- 意味:角を斜めに削る処理(面取り)を表します。
- 例:C0.5 → 0.5mmの面取り。
t(ティー):板厚
- 意味:板材の厚さを表します。
- 例:t3 → 板厚3mm。
□(四角):正方形の断面
- 意味:正方形断面や四角い形状の寸法を表します。
- 例:□10 → 10mm四方の角棒や穴。
⌒(円弧):円弧の長さ
- 意味:部分的な円弧の長さ(円周の一部)を表します。
- 例:⌒R20 → 半径20mmの円弧。
SR(エスアール):球面半径
- 意味:球面の半径を表します。
- 例:SR15 → 半径15mmの球面部分。
Sφ(エスファイ):球の直径
- 意味:球体の直径を表します。
- 例:Sφ10 → 直径10mmの球。
| 記号 | 意味 | 読み方 | 用途の例 |
|---|---|---|---|
| f | 直径 | ファイ | 穴や軸の直径 |
| R | 半径 | アール | 曲面の半径 |
| C | 面取り | シー | エッジの処理 |
| t | 板厚 | ティー | 板材やプレートの厚み |
| □ | 正方形セクション | シカク | 角棒、正方形の穴 |
| ⌒ | 円弧 | エンコ | 部分的な円の長さ |
| SR | 球の半径 | エスアール | 球の一部の半径 |
| Sφ | 球の直径 | エスファイ | 完全な球の直径 |

図面の記号に慣れることは、機械設計を理解する第一歩です。
見慣れない記号でも、
一つひとつ意味を押さえれば図面がスムーズに読めるようになります。
図面の検図について
図面の検図とは、設計図面に間違いがないかを確認する作業です。
図面は製造や組立の元となる情報なので、ミスがあれば重大なトラブルにつながります。
図面のミスに気づかずに進めてしまうと、
製品の不良、納期遅延、大きなコスト損失につながるリスクがあります。
設計者本人だけでなく、第三者による検図が推奨されるのもそのためです。
つまり、検図は設計品質を守る最後の砦と言えます。
設計レビューについて
設計レビューとは、設計段階で製品仕様や設計内容に
問題がないかをチームで確認する活動です。
製品化の前にリスクや不具合の芽を摘み取り、
品質やコスト、納期の最適化につなげる重要なプロセスです。
設計レビューを行わずに進めてしまうと、
設計ミスの発見が遅れ、
手戻り、量産トラブル、品質不良、コスト増大
といった重大なリスクにつながります。
設計者本人だけでなく、多職種の第三者視点でレビューすることで
盲点を防ぎ、より完成度の高い設計が実現できます。
つまり、設計レビューは高品質な製品づくりを支える要のプロセスなのです。
材料の加工方法の知識が不可欠
機械設計では、図面を作成するだけでなく、
実際にその部品がどのように加工されるかを理解することが非常に重要です。
設計者が加工方法を考慮せずに図面を描くと、
コストの増加や加工不良の原因になることがあります。
どれだけ優れたアイデアや設計であっても、
実際に製造できなければ意味がありません。
特に、材料の加工方法を理解していないと、
「設計はできたが、加工が不可能」という問題に直面することがあります。
そのため、設計者は加工方法の知識を持ち、
実際に作れる設計を行うことが重要です。
加工方法の知識が必要な理由
設計の実現性を高める
加工できない形状を避ける
(例:フライス加工では角の内側を直角にできない)
👉 無理な設計を防ぎ、現実的な図面を作成
製造コストを最適化する
高精度な加工が本当に必要かを判断
(例:公差を厳しくするとコストが大幅に増加)
👉 適切な公差設定で、不要なコストを削減
加工時間の短縮
適切な加工方法を考慮すると、製造時間を短縮できる
(例:溶接よりも板金加工の方が速い場合がある)
👉 納期を短縮し、製造の効率を向上
品質の安定化
加工しやすい形状を考えることで、不良率を低減
(例:バリが発生しにくい形状を設計する)
👉 安定した品質を維持しやすくなる
組み立てやメンテナンスのしやすさ
後工程(組立・メンテナンス)を考慮した設計が可能
(例:工具が入るスペースを確保)
👉 作業性が向上し、トラブルを防げる
設計者が加工方法の知識を持つことで、
現実的で製造しやすい図面を作成でき、
コストや納期、品質の最適化が可能になります。

適切な設計を行うために、
フライス加工・旋盤加工・放電加工・板金加工などの
基本的な加工方法を理解し、それに適した図面を描くことが重要です。
🔗【加工者との連携】材料の加工方法の知識が重要な理由【加工可否】
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🔗フライス加工の特徴と設計時のポイント
🔗放電加工の基本原理と設計時のポイント
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切削加工におけるコストダウンのための設計の工夫
機械設計において、部品コストの大きな割合を占めるのが加工費です。
特に切削加工は自由度が高い一方で、
設計の仕方によってコストに大きな差が出る工程です。
切削加工におけるコストダウンを実現するための
設計上の具体的な工夫や注意点を多数紹介します。
設計段階で少し配慮するだけで、加工効率が上がり、コスト削減につながります。
形状設計に関する工夫
加工しやすい形状=コストダウンの第一歩!
切削加工においてムダな工程や加工の難易度を減らすための
形状設計の工夫を紹介します。
角のR処理や貫通形状など、現場で喜ばれる設計のポイントが満載です。
寸法と公差に関する工夫
「その公差、本当に必要ですか?」
寸法や公差は製品精度に直結する重要な要素ですが、
厳しすぎると加工コストが跳ね上がります。
この記事では、適切な公差の設定方法や、
加工性を考慮した寸法の工夫を解説します。
工具・加工方法に関する工夫
加工方法に合わせた設計で効率アップ!
どんな工具で、どう加工するかを理解すれば、
無理のない設計ができます。
使用される切削工具の特徴と、
それに最適な設計の工夫について解説します。
材料・素材に関する工夫
素材が変われば、設計の考え方も変わる!
切削しやすい材料と、加工が難しい材料。
それぞれに合った設計をすることでコストやトラブルを回避できます。
素材選定のポイントと設計上の注意点をわかりやすく紹介します。
加工工数・段取りを減らす工夫
工数削減=コスト削減!
段取り替えや加工回数が多くなるほどコストは増加します。
1チャッキングで完結する形状の工夫や、
工程をまとめる設計アイデアを解説します。
工程分離・製造フロー考慮の工夫
工程を分ければ、全体がスムーズに!
加工工程を無理にまとめるより、
分けることでトータルコストを抑えられることも。
製造フローを意識した設計の考え方や、工程分離のメリットについて紹介します。
組立性・検査性に関する工夫
作りやすさだけでなく、“組み立てやすさ”も設計のうち!
良い設計は、製造だけでなくその後の組立や検査も考慮されています。
ねじ位置や目視検査性など、現場作業を楽にする設計の工夫を紹介します。
機械設計における代表的なトレードオフとは?
機械設計では、”すべてを満たす“理想の設計”を追い求めるのは難しいものです。
性能を上げればコストがかさみ、精度を上げれば加工が難しくなる…
このような「トレードオフ(相反関係)」が設計の中では日常茶飯事です。
ここでは、実際の設計現場でよく出てくる代表的なトレードオフをいくつかご紹介します。
性能 vs コスト
高性能な材料や加工方法を選べば、当然ながらコストが上昇します。
例えば、SUS304は耐食性や美観に優れていますが、
SS400に比べて価格は高め。
「高信頼性」を求める場面ではSUS304が選ばれ、
「コスト重視」の場面ではSS400が適しています。
軽量化 vs 強度・剛性
ロボットや搬送装置など、軽さが重要な場面では軽量化が求められますが、
構造が薄くなりすぎると強度・剛性が低下するリスクがあります。
軽さを維持しながら強度を確保するには、
リブやハニカム構造で補強するなどの設計工夫が必要です。
高精度 vs 加工費・納期
公差を厳しく設定すれば、加工・測定・組立すべての
難易度が上がり、費用も納期も増加します。
「どこまでの精度が必要か」を正しく見極め、
必要以上の精度は避けることがコスト削減と納期短縮の鍵になります。
標準部品 vs 特注部品
標準部品は低コスト・短納期・高信頼性で扱いやすく、
保守性にも優れていますが、装置の要求に完全一致しないことがあります。
特注部品なら仕様に合わせた最適設計が可能ですが、
設計・調達・価格・納期などあらゆる面でリスクとコストが上昇します。
設計期間 vs 完成度
設計期間が短いと、材料選定や構造最適化、公差検討などが不十分になり、
結果として品質や信頼性に課題が残ることもあります。
かといって完成度を追い求めすぎると、
納期遅延や開発費の増大にもつながるため、
バランスの取れた判断が不可欠です。
トレードオフとは、
一方を重視すればもう一方に妥協が必要になる関係です。
機械設計では、目的に応じた優先順位を明確にし、
最適なバランスを取ることが成功へのカギです。

それぞれのトレードオフにどのような選択肢があるかを理解し、
「何を重視すべきか?」をしっかり考えたうえで設計を進めていきましょう。
CADとは?そのメリットと活用方法
CADは、図面作成を支援するツールとして広く使われています。
CADの利点
- 設計効率の向上
- 手書き図面に比べ、修正や変更が簡単。
- 高精度な設計
- 正確な寸法管理や干渉チェックが可能。
- データ共有
- 製造や解析ソフトとの連携により、設計から製造までの効率化を実現。
CADの種類
3D CADを使用することで、
設計段階でのシミュレーションやアセンブリの検討が可能になり、
設計ミスのリスクを大幅に減らせます。
部品のCADデータをダウンロードして活用する方法
設計の現場では、部品メーカーが提供するCADデータを
ダウンロードして活用することが、ますます一般的になっています。
これにより、設計のスピードと精度が飛躍的に向上します。
部品CADデータの利点
設計効率の向上
ねじやベアリングなどの標準部品を一からモデリングする手間を省けるため、
設計工数が大幅に削減されます。
設計ミスの防止
メーカー提供の正確な寸法のモデルを使うことで、
図面との不一致や干渉ミスが防げます。
連携がスムーズ
CADデータをそのまま図面化・解析・組立シミュレーションなどに活用でき、
他部門との連携も効率的になります。
CADデータの種類と対応形式
メーカーサイトでは、以下のような形式でCADデータが提供されています。
目的のソフトに対応した形式を選べば、そのまま設計に取り込めるのが大きな魅力です。
CADデータの活用方法
- 部品選定時:ミスミやTHKなどのWEBカタログから、仕様を確認しながらCADデータをダウンロード
- アセンブリ検討:実際のモデルと組み合わせて、干渉チェックや動作確認を行う
- 図面作成:モデルから2D図面を作成し、製造指示にも活用
- シミュレーション:応力解析や干渉解析ソフトと連携し、設計の妥当性を評価
メーカーのCADデータをうまく活用することで、
- 無駄な作業を省き
- 設計の正確性を上げ
- チーム全体の生産性を向上させる
ことが可能になります。
「作らずに使う」を上手に取り入れ、設計をもっとスマートに進めましょう!
CAD設計におけるPC操作の効率化
CAD設計は、正確さと効率性が求められる作業です。
PC操作を効率化することで、
設計作業の生産性を大幅に向上させることができます。
本記事では、CAD設計者が知っておきたいPC操作の効率化テクニックを紹介します。
1. ショートカットキーの活用
windowsには数多くのショートカットキーが用意されています。
これらを活用することで、操作時間を大幅に短縮できます。
よく使われるCADショートカット例
| 機能 | ショートカットキー例 |
|---|---|
| コピー | Ctrl + C |
| 貼り付け | Ctrl + V |
| 切り取り | Ctrl + X |
| すべての項目を選択する | Ctrl + A |
| 検索 | Ctrl + F |
| アプリやウィンドウを切り替える | Alt + Tab |

使用頻度の高いショートカットキーを覚え、
マウス操作を最小限に抑えることで効率化を図れます。
2. 仮想デスクトップの活用
Windows 10以降では、仮想デスクトップ機能を使うことで複数の作業環境を整理できます。
仮想デスクトップの利点
▶ 作業分野の整理
CADソフト用のデスクトップ、
資料閲覧用のデスクトップなどに分けて作業環境を整える。
▶切り替えのスピード向上
ショートカットキー(Win + Ctrl + → / ←)を使えば瞬時に切り替え可能。
3. カスタムマウスの導入
CAD操作ではマウスの使用頻度が非常に高いです。
多ボタンマウスを導入し、
CADソフトの操作に合わせたカスタマイズを行うと便利です。
マウスボタンに割り当てると便利な操作
4. デュアルディスプレイの活用
CAD設計では作業スペースが広いほど効率的です。
デュアルディスプレイを活用すると、作業効率が大幅に向上します。
活用例
- メインディスプレイでCAD設計を行い、サブディスプレイで資料や設計要件を表示。
- 一つのディスプレイで詳細な設計、もう一つで全体図を確認する。
5. 半角・全角切り替えキーのカスタマイズ
機械設計でCADを使っているとき、こんな経験はありませんか?
このような“あるあるイライラ”の原因の一つが、
IME(日本語入力)のモード切り替えミスです。

そこでおすすめなのが、
IMEのキー設定を変更して、
変換キー・無変換キーに直接IMEオン/オフを割り当てる方法です!
6. テンキーとプログラム可能なデバイスの使用
CADソフトでは数値入力が頻繁に求められるため、
テンキーやプログラム可能なデバイスの活用が有効です。
具体例
7. 自動化ツールの活用
CADソフトには、自動化スクリプトやマクロを利用できる機能があります。
よく使う操作を記録して自動化することで、繰り返し作業を効率化できます。
8. 左手デバイスの活用
左手デバイス(例: 3Dconnexion社の「SpaceMouse」やプログラマブルキーパッド)は、CAD設計における効率化に非常に役立つツールです。
利用メリット
✅ 3Dモデルの操作が直感的
SpaceMouseを使うと、片手で3Dモデルの回転・ズーム・パン操作が可能。
✅ 左手の役割を強化
キーパッドに頻繁に使うコマンドやショートカットを登録することで、
右手でマウスを操作しながら左手で効率よく作業を進められる。
✅ 作業負担の軽減
手の動きが最小限に抑えられるため、長時間の作業でも疲れにくい。
活用例
- 設計中の操作
- 右手で寸法や位置を調整しながら、左手でモデルを回転させ全体を確認。
- ショートカット登録
- 左手デバイスのボタンに「オブジェクトの消去」「線分の分割」などを割り当てる。
CAD設計におけるPC操作の効率化は、作業の正確性や生産性に直結します。

これらのテクニックを日常的に取り入れることで、
より快適な設計環境を構築しましょう。
部品の寸法測定と測定具の選定
製品設計の正確性を確保するためには、
部品の寸法を正確に測定することが不可欠です。
特に、加工後の部品が設計仕様に適合しているかを
確認する際には、適切な測定具を選定し、
正しい方法で使用する必要があります。
この項目では、寸法測定の目的と、よく使用される測定具について解説します。
寸法測定の目的
製造プロセスの改善
測定結果をフィードバックすることで、
加工条件や設備の調整に役立てることができます。
設計意図との整合性確認
図面に記載された寸法や公差に基づき、
部品が設計通りに加工されているか確認します。
これにより、組立時の不具合や製品の性能低下を防止できます。
品質管理
各部品の精度を管理することで、
完成品全体の品質を保証します。
特に、量産品では一貫した品質を維持するために寸法測定が重要です。
主な測定具とその用途
ノギス
ノギスの特徴
最も一般的な測定具で、
直線寸法(外径、内径、深さなど)の測定に適しています。
📌 精度
- ±0.02 mm程度。デジタルノギスでは測定値を直接読み取ることが可能です。
🔍 用途
- 外径や内径の測定、小さな部品の寸法確認。
マイクロメーター
マイクロメーターの特徴
高精度の寸法測定が可能な工具で、主に外径や厚さを測定します。
📌 精度
- ±0.001 mm程度。微細な寸法の測定が求められる場合に使用されます。
🔍 用途
- シャフトや薄いプレートの厚さ測定など。
デプスゲージ
✅ 特徴
- 深さを測定するための工具。
- ノギスにデプス機能が付いている場合もありますが、専用のデプスゲージの方が精度が高いです。
🔍 用途
- 穴の深さや溝の深さを測定。
三次元測定機
三次元測定機の特徴
- 高精度で複雑な形状を測定する機械。
- CADデータと比較することで形状誤差を解析できます。
🔍用途
- 複雑な形状や大きな部品の全体的な寸法測定。
まとめ:図面とCADを活用して設計を効率化しよう
図面を正確に読み取り、CADを効果的に活用することで、
設計の効率化と製品の品質向上が実現します。
設計初心者は基本的な製図ルールや記号を理解し、
CADスキルを磨くことから始めましょう。
また、国際規格や実務での経験を積むことで、
より高いレベルの設計能力を身につけることができます。
これから図面とCADに触れる方にとって、本記事が参考になれば幸いです。



