カム機構を用いた機械設計では、
カムの動きを正確に追従する部品として
カムフォロアが重要な役割を果たします。
カムフォロアの適切な選定は、
機械の耐久性や動作精度に大きく影響します。
本記事では、カムフォロアの基本的な特性・種類
選定ポイント・注意点 について詳しく解説します。
カムフォロアとは?
カムフォロアは、カムの輪郭に沿って転がる軸受付きのローラー です。
主に次の用途で使用されます。
カムフォロアの基本構造
カムフォロアは、基本的に以下の構成要素から成り立っています。
- 外輪(ローラー部分)
→ カムと接触し、転がる部分 - 内輪(シャフト部分)
→ 機械に固定される部分 - ニードルベアリングまたはボールベアリング
→ 転がり摩擦を低減し、スムーズな回転を実現
カムフォロアの特徴
カムフォロア(Cam Follower)は、
カム機構においてカムの輪郭を追従するために
使用される転がり軸受です。
その特徴の一つに、
「高負荷対応」「高速回転対応」「取り付けが容易」
というメリットがあります。
本記事では、それぞれの特徴について詳しく解説し、
どのような設計の工夫によってそれが実現されているのかを説明します。
カムフォロアはなぜ高負荷に対応できるのか?
カムフォロアは、
一般的なボールベアリングやローラーベアリングと比較して
高い荷重に耐えられる設計 になっています。
これを可能にしているのは、以下の3つのポイントです。
ニードルローラーベアリングを採用している
一般的なボールベアリングは、
荷重を点接触で受けるため、荷重が集中しやすい
カムフォロアは、ニードルローラーベアリング(針状ころ軸受)を使用し、
線接触で荷重を分散するため、高負荷に耐えられる
✅ メリット
厚肉の外輪を採用している
一般的なベアリングと比較して、
カムフォロアの外輪(ローラー部分)は肉厚になっている
外輪が厚いため、外部からの高荷重を分散し、
変形を抑えることができる
✅ メリット
フルコンプリメントタイプ(保持器なし)も選べる
ニードルベアリングの中には、
リテーナ(保持器)がない「フルコンプリメントタイプ」 がある。
これは、通常より多くの針状ころを詰め込んでおり、
さらに大きな荷重に耐えられる。
✅ メリット
🔍 高負荷がかかる用途の例
- プレス機や金属加工機械のカム機構
- 建設機械や大型搬送装置
カムフォロアはなぜ高速回転に対応できるのか?
カムフォロアは、適切に選定すれば高速回転にも対応可能 です。
その理由は以下の3つです。
高精度なニードルベアリング構造
高速回転時に生じる摩擦や発熱を抑えるため、
精密に加工されたニードルローラーを使用
高速回転時でもスムーズに動作し、異常振動が発生しにくい
✅ メリット
低摩擦タイプのグリースやオイル潤滑が可能
高速回転時には摩擦熱が発生しやすいため、
低摩擦のグリースやオイル潤滑が使える設計 になっている
メンテナンスフリーのシール付きタイプ もあり、
高速回転を維持しやすい
✅ メリット
軽量な材質の外輪も選択可能
外輪の重量が軽いと、
回転時の慣性力が小さくなり、
スムーズに動作する
軽量タイプのカムフォロアを選べば、
回転数の向上が可能
✅ メリット
高速回転が求められる用途の例
カムフォロアはなぜ取り付けが容易なのか?
カムフォロアは、一般的なベアリングと比べて
取り付けが簡単 なのも大きな特徴です。
その理由を解説します。
ねじ付きシャフトタイプ
カムフォロアにはスタッドタイプ(軸付き) があり、
ナットで簡単に固定できる
これにより、特別なハウジング加工や
シャフト設計をしなくても使用可能
✅ メリット
圧入不要でそのまま取り付け可能
一般的なベアリングはシャフトやハウジングに圧入する必要があるが、
カムフォロアはボルトナット締結だけで固定できる
これにより、設計の自由度が上がり、
メンテナンスがしやすい
✅ メリット
取り付けが容易なカムフォロアの用途の例
カムフォロアの特徴を理解して最適な設計を
カムフォロアは、高負荷対応・高速回転対応・取り付けの容易さ
というメリットを持つ、カム機構に欠かせない重要な部品です。
| 特徴 | 理由 | メリット |
|---|---|---|
| 高負荷対応 | ニードルローラー構造・厚肉外輪 | 高荷重・衝撃荷重に強い |
| 高速回転対応 | 高精度ベアリング・低摩擦設計 | スムーズな回転・発熱を抑制 |
| 取り付けが容易 | ねじ付きシャフト(スタッドタイプ) | 簡単に固定・交換が容易 |
適切なカムフォロアを選定し、設計に活かすことで、
耐久性・精度・メンテナンス性を向上させることが可能 です。

カムフォロアの特性を理解し、最適な選定を行いましょう!
フラットタイプとクラウンタイプの違いと使い分け
カムフォロアは、カム機構や搬送装置の
追従ローラーとして使用される転がり軸受です。
その外輪(摺動面)には、
主に 「フラットタイプ」 と 「クラウンタイプ」 の2種類があります。
本項では、それぞれの特徴とメリット、
使い分けのポイントを詳しく解説します。
フラットタイプとクラウンタイプの基本的な違い
カムフォロアの外輪の形状には、以下の2種類があります。
| タイプ | 形状 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| フラットタイプ | 外輪の接触面が平坦 | 接触面が広く、 荷重分散性が高い | 高荷重 低速用途 |
| クラウンタイプ | 外輪の接触面が 中央に向かって湾曲 | エッジの負荷集中を軽減し、 スムーズな動作が可能 | 高速回転 偏荷重用途 |
フラットタイプの特徴とメリット
接触面が広く、高荷重に対応できる
フラットタイプは外輪の摺動面が平坦なため、
接触面積が広くなり、荷重を均等に分散できます。
✅ メリット
偏荷重が少なく、安定した動作が可能
外輪が平坦であるため、
ローラー全体が均等にカム面やレールに接触し、
偏荷重による片摩耗を防ぐことができる。
✅ メリット
低速・高負荷用途に適している
フラットタイプは、特に低速回転・高荷重がかかる環境で
優れた性能を発揮します。
📌 適した用途の例
クラウンタイプの特徴とメリット
エッジの負荷集中を防ぎ、スムーズな動作を実現
クラウンタイプは、外輪の接触面が中央に向かって
わずかに湾曲(クラウニング) しており、
エッジ部分の負荷集中を軽減します。
✅ メリット
転動時のアライメント誤差を吸収しやすい
カム機構やガイドレールでは、
わずかなアライメント誤差(取り付けのずれ)が
発生することがあります。
クラウンタイプは、そのズレを吸収しやすいため、
スムーズな追従が可能です。
✅ メリット
偏荷重が発生する環境に強い
クラウンタイプは、
片側に荷重が偏る場合でもスムーズに動作します。
🔍 適した用途の例
フラットタイプとクラウンタイプの使い分けのポイント
カムフォロアの外輪形状を選定する際は、
以下の3つの要素を考慮する必要があります。
荷重の大きさ
速度と回転数
アライメント精度と振動の影響
適切な外輪形状を選ぼう
| 選定ポイント | フラットタイプ | クラウンタイプ |
|---|---|---|
| 荷重 | 高荷重 | 中~軽荷重 |
| 速度 | 低速向き | 高速向き |
| 摩耗 | 均一で長寿命 | 端部の負荷集中が少なく長寿命 |
| アライメント誤差 | 精度が高い場合に適する | ズレを吸収できる |
| 主な用途 | プレス機、重荷重搬送装置 | 高速カム機構、偏荷重がある搬送ライン |
機械設計では、これらの特徴を考慮し、
最適なカムフォロアの摺動面形状を選定することが重要 です。
設計の目的や使用環境に応じて、適切な選択を行いましょう!
カムフォロアの選定ポイント
適切なカムフォロアを選ぶためには、以下のポイントを考慮する必要があります。
① 荷重条件(ラジアル荷重・スラスト荷重)
選定の目安
② 回転速度(rpm)
高速回転 では、標準タイプやリテーナ付きのベアリングを選定 すると良い
フルコンプリメントタイプは高速回転に不向き(発熱のリスクあり)
📌 選定の目安
③ 取り付け方法(ボルト固定 or 圧入)
ねじ込み式(スタッドタイプ)はメンテナンスが簡単
圧入式は剛性が高く、精度が求められる用途に適している
選定の目安
④ 環境条件(防塵・防水)
選定の目安
まとめ
カムフォロアは、高荷重対応・高速回転対応・取り付けの容易さを
備えた機械要素であり、カム機構や搬送装置などの
精密な動作が求められる場面で使用されます。
外輪が回転する構造により、
低摩擦でスムーズな動作が可能となり、
機械の耐久性や動作の安定性を向上させます。
選定の際には、負荷条件・回転速度・取り付け方法などを
考慮する必要があります。
例えば、高荷重環境では接触面の広いフラットタイプ、
高速回転や偏荷重がかかる環境では
エッジの負荷を分散できるクラウンタイプが適しています。
また、メンテナンス頻度や潤滑管理の容易さも重要な要素です。
適切なカムフォロアを選定することで、
機械の長寿命化・安定した動作・メンテナンス性の向上が実現できます。
設計時には使用環境に応じた特性を十分に理解し、
最適な仕様を選ぶことが重要です。




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