ローラーチェーンにはさまざまな種類がありますが、
その中でも「バイピッチチェーン(ダブルピッチチェーン)」は、
特殊な用途に用いられるチェーンの一種です。
バイピッチチェーンは、通常のローラーチェーンの
ピッチ(リンク間の距離)を2倍にしたもので、
軽負荷での動力伝達や搬送用途で広く使用されています。
本記事では、バイピッチチェーンの特徴や使用例、
選定ポイントについて解説します。
バイピッチチェーンの特徴
ピッチが2倍
通常のローラーチェーンに比べて
ピッチ(リンクの中心から中心までの距離)が2倍になっています。
これにより、チェーン自体の質量が軽くなり、
負荷がそれほど大きくない場面で効率的に使用できます。
たとえば、標準チェーンの「40」サイズのピッチが
1/2インチ(12.7mm)の場合、
バイピッチチェーンではピッチが1インチ(25.4mm)になります。
動力伝達と搬送用途
バイピッチチェーンは、比較的低速かつ軽負荷の動力伝達に適しています。
搬送用途でも多く用いられ、
特にコンベアにおいて荷物を搬送する際にその特徴が生かされます。
標準ローラーチェーンと比べて重量が軽いため、エネルギー効率も向上します。
使用スプロケット
バイピッチチェーンは、標準ローラーチェーンと同じスプロケットを使用できます。
場合によってはバイピッチ専用のスプロケットを使用することが望ましいです。
歯数が少ない場合や特定の負荷条件下では専用スプロケットの方が性能を発揮できます。
バイピッチチェーンのスプロケット選定における注意点
バイピッチチェーン(倍ピッチチェーン)を使用する際、
30歯以下のスプロケットや偶数の歯数のスプロケットには、
専用のスプロケットを使用することが推奨されています。
その理由を解説します。
30歯以下の場合:チェーンの滑らかなかみ合いを確保するため
バイピッチチェーンは通常のローラーチェーンのピッチを2倍にした構造を持つため、
小さなスプロケットにかみ合う際に問題が発生しやすくなります。
標準スプロケットを使うと発生する問題
専用スプロケットを使用する理由
特に20歯以下のスプロケットでは影響が顕著になり、
専用スプロケットの使用が強く推奨されます。
偶数歯の場合:ローラーのかみ合いが偏るため
バイピッチチェーンは、2つのローラーごとに
1つのスプロケットの歯とかみ合う特徴を持ちます。
そのため、スプロケットの歯数が偶数だと、
毎回同じローラーが同じ歯とかみ合うことになります。
標準スプロケットを使うと発生する問題
📌 専用スプロケットを使用する理由
特に長時間の連続運転を行う設備では、
スプロケットとチェーンの摩耗が大きな問題となるため、
適切なスプロケットの選定が重要です。
30歯以下のスプロケット
→ チェーンのかみ合いをスムーズにするため、専用の歯形状が必要
偶数歯のスプロケット
→ ローラーの摩耗を均等にするため、専用スプロケットが推奨される

適切なスプロケットを選定することで、
バイピッチチェーンの寿命を延ばし、
動作の安定性を向上させることができます。
バイピッチチェーンの用途
バイピッチチェーンは主に以下のような用途で使用されます。
コンベアシステム
工場や製造ラインでの搬送装置において、荷物を効率よく運搬するために使用されます。
特に、軽量な荷物や中程度の荷重を運ぶ場合に適しています。
バイピッチチェーンの選定ポイント
バイピッチチェーンの選定には、以下の点を考慮する必要があります。
負荷条件
バイピッチチェーンは、軽負荷や中程度の負荷に適しています。
機械の運転条件や使用する機器に応じて選定することが重要です。
重荷重や高トルクがかかる用途には不向きです。
そのような場合は通常のローラーチェーンを選定するか、
別の動力伝達手段を検討します。
通常のローラーチェーンよりもローラにかかる負荷分散が少ない為、
チェーンの伸びが顕著に出やすいデメリットがあります。
速度
バイピッチチェーンは低速運転に適しています。
高速運転では、振動や摩耗が発生しやすく、
チェーンの寿命が短くなる可能性があるため、
適切な運転速度を維持することが重要です。
使用環境
バイピッチチェーンは、湿度や粉塵が多い環境では適切な潤滑や防錆処理が必要です。
清潔さが求められる食品加工などの分野では、
ステンレス製のバイピッチチェーンが適しています。
スプロケットとの適合
前述の通り、バイピッチチェーンは標準スプロケットでも使用可能です。
負荷が高い場合や特定の条件下では、
専用のバイピッチスプロケットを使用することが推奨されます。
歯数や歯形の適合性を確認し、適切なスプロケットを選定します。
バイピッチチェーンの種類
バイピッチチェーンには、以下のような種類があります。
標準ローラータイプ
通常のローラーチェーンと同様に、ローラーを備えたタイプです。
主に軽負荷の動力伝達や搬送用途で使用されます。
ラージローラータイプ
大きなローラーを持つタイプで、コンベアシステムなどで
スムーズな搬送を実現するために使用されます。
ローラー径が大きいため、摩擦を減らし、より効率的な搬送が可能です。
アタッチメント付きバイピッチチェーン
アタッチメントが付いたバイピッチチェーンは、
搬送用途で物体を保持したり、特定の位置に移動させる際に使用されます。
アタッチメントの形状や配置により、さまざまな搬送ニーズに対応できます。
スモールローラーとラージローラーの比較と使い分け
ローラーチェーンは機械設計において動力伝達や搬送用途で幅広く使用されています。
その中でも「スモールローラー」と「ラージローラー」は、
ローラーの大きさによって使い分けられる重要な要素です。
本項では、それぞれの特徴と使い分けのポイントについて解説します。
スモールローラーとは?
スモールローラーの特徴
ローラー径が小さいタイプのローラーチェーン。
一般的な動力伝達用ローラーチェーンに採用されていることが多い。
✅ メリット
🔍 用途
ラージローラーとは?
ラージローラーの特徴
ローラー径が大きいタイプのローラーチェーン。
スモールローラーに比べて、転がり接触面積が大きい。
✅ メリット
🔍 用途
スモールローラーとラージローラーの比較表
| 項目 | スモールローラー | ラージローラー |
|---|---|---|
| ローラー径 | 小さい | 大きい |
| 摩擦損失 | 小さい(軽量で高速運転に適している) | やや大きい |
| 耐荷重性 | 標準的 | 高い |
| 耐衝撃性 | 標準的 | 衝撃荷重に強い |
| 摩耗耐性 | 標準的 | 高い |
| 用途 | 動力伝達、高速運転 | 重荷重、搬送、衝撃荷重対応 |
| コスト・入手性 | 標準部品が多くコストが抑えやすい | やや高価で専用部品も多い |
使い分けのポイント
軽量で高速回転が必要な場合は「スモールローラー」を選定する。
🔍例:モーター駆動、ロボットの動力伝達、軽量コンベヤ。
重荷重や衝撃荷重がかかる場合は「ラージローラー」が適している。
🔍例:重荷重の搬送ライン、建設機械、産業用コンベヤシステム。
搬送物のスムーズな転がりが重要な場合も「ラージローラー」が有利。
🔍例:製品搬送のコンベヤやパレタイザー。
機械設計におけるローラーチェーンの選定では、
ローラーの大きさが重要な要素となります。
スモールローラーは、軽量で摩擦損失が少ないため、
高速運転や動力伝達用途に最適です。
ラージローラーは、耐荷重性・耐衝撃性に優れており、
重荷重や搬送用途で力を発揮します。
設計時には、使用環境や荷重条件を正確に把握し、
適切なローラータイプを選定することで、
機械全体の効率と寿命を向上させることができます。

設計者として、
ローラーチェーンの「ローラー径」にも注目しながら
最適な選定を心がけましょう!
まとめ
バイピッチチェーンは、標準のローラーチェーンに比べてピッチが2倍であり、
軽負荷や中程度の負荷に適したチェーンです。
特に、搬送用途や低速動力伝達に適しており、
コンベアシステムや自動化装置などで広く使用されています。
選定に際しては、負荷条件や使用環境、スプロケットとの適合性を考慮し、
適切なチェーンを選ぶことが重要です。
バイピッチチェーンの特性を理解し、適切な用途で使用することで、
機械の性能や効率を最大限に引き出すことができます。




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