ローラーチェーンにはさまざまな種類がありますが、その中でも「バイピッチチェーン(ダブルピッチチェーン)」は、特殊な用途に用いられるチェーンの一種です。バイピッチチェーンは、通常のローラーチェーンのピッチ(リンク間の距離)を2倍にしたもので、軽負荷での動力伝達や搬送用途で広く使用されています。本記事では、バイピッチチェーンの特徴や使用例、選定ポイントについて解説します。
バイピッチチェーンの特徴
ピッチが2倍
バイピッチチェーンは、通常のローラーチェーンに比べてピッチ(リンクの中心から中心までの距離)が2倍になっています。これにより、チェーン自体の質量が軽くなり、負荷がそれほど大きくない場面で効率的に使用できます。たとえば、ANSI規格の標準チェーンの「40」サイズのピッチが1/2インチ(12.7mm)の場合、バイピッチチェーンではピッチが1インチ(25.4mm)になります。
動力伝達と搬送用途
バイピッチチェーンは、比較的低速かつ軽負荷の動力伝達に適しています。また、搬送用途でも多く用いられ、特にコンベアシステムにおいて荷物を搬送する際にその特徴が生かされます。標準ローラーチェーンと比べて重量が軽いため、エネルギー効率も向上します。
使用スプロケット
バイピッチチェーンは、標準ローラーチェーンと同じスプロケットを使用できますが、場合によってはバイピッチ専用のスプロケットを使用することが望ましいです。ピッチが2倍であるため、歯数が少ない場合や特定の負荷条件下では専用スプロケットの方が性能を発揮できます。
バイピッチチェーンの用途
バイピッチチェーンは主に以下のような用途で使用されます。
コンベアシステム
工場や製造ラインでの搬送装置において、荷物を効率よく運搬するために使用されます。特に、軽量な荷物や中程度の荷重を運ぶ場合に適しています。
バイピッチチェーンの選定ポイント
バイピッチチェーンの選定には、以下の点を考慮する必要があります。
1. 負荷条件
バイピッチチェーンは、軽負荷や中程度の負荷に適しているため、機械の運転条件や使用する機器に応じて選定することが重要です。重荷重や高トルクがかかる用途には不向きなため、そのような場合は通常のローラーチェーンを選定するか、別の動力伝達手段を検討します。
また、通常のローラーチェーンよりもローラにかかる負荷分散が少ない為、チェーンの伸びが顕著に出やすいデメリットがあります。
2. 速度
バイピッチチェーンは低速運転に適しています。高速運転では、振動や摩耗が発生しやすく、チェーンの寿命が短くなる可能性があるため、適切な運転速度を維持することが重要です。
3. 使用環境
バイピッチチェーンは、湿度や粉塵が多い環境では適切な潤滑や防錆処理が必要です。また、清潔さが求められる食品加工や医療機器などの分野では、ステンレス製のバイピッチチェーンが適しています。
4. スプロケットとの適合
前述の通り、バイピッチチェーンは標準スプロケットでも使用可能ですが、負荷が高い場合や特定の条件下では、専用のバイピッチスプロケットを使用することが推奨されます。歯数や歯形の適合性を確認し、適切なスプロケットを選定します。
バイピッチチェーンの種類
バイピッチチェーンには、以下のような種類があります。
標準ローラータイプ
- 通常のローラーチェーンと同様に、ローラーを備えたタイプです。
- 主に軽負荷の動力伝達や搬送用途で使用されます。
ラージローラータイプ
- 大きなローラーを持つタイプで、コンベアシステムなどでスムーズな搬送を実現するために使用されます。
- ローラー径が大きいため、摩擦を減らし、より効率的な搬送が可能です。
アタッチメント付きバイピッチチェーン
- アタッチメントが付いたバイピッチチェーンは、搬送用途で物体を保持したり、特定の位置に移動させる際に使用されます。
- アタッチメントの形状や配置により、さまざまな搬送ニーズに対応できます。
まとめ
バイピッチチェーンは、標準のローラーチェーンに比べてピッチが2倍であり、軽負荷や中程度の負荷に適したチェーンです。特に、搬送用途や低速動力伝達に適しており、コンベアシステムや自動化装置などで広く使用されています。選定に際しては、負荷条件や使用環境、スプロケットとの適合性を考慮し、適切なチェーンを選ぶことが重要です。
バイピッチチェーンの特性を理解し、適切な用途で使用することで、機械の性能や効率を最大限に引き出すことができます。
コメント