歯車を設計する際に重要なのが強度計算です。強度計算を正しく行わないと、歯が折れる・摩耗が早い・騒音が大きいなどの問題が発生することがあります。この記事では、初心者でも理解しやすいように、平歯車の強度計算について解説します!
平歯車の強度計算の基本
歯車の強度計算には、大きく分けて「歯元強度計算」と「表面疲労強度計算」の2つがあります。
計算の種類 | 目的 | 影響する要素 |
---|---|---|
歯元強度計算 | 歯が折れないようにする | 歯の形状、材質、荷重 |
表面疲労強度計算 | 歯が摩耗やピッチング(表面破損)を起こさないようにする | 歯面の接触圧力、潤滑状態 |
それぞれの計算について、簡単に説明していきます。
歯元強度計算(歯の折れを防ぐ)
歯元強度計算は、歯が折れないようにするための計算です。歯車の歯は「はり(梁)」のような構造をしているため、歯元(根元)には大きな応力がかかります。
📌 設計のポイント
✅ モジュール(m)を大きくする → 歯が太くなり強度UP
✅ 歯幅(b)を広くする → 強度UP
✅ 高強度の材料を選ぶ → 強度UP
表面疲労強度計算(摩耗やピッチングを防ぐ)
歯車の接触面では、荷重が集中するため、摩耗やピッチング(表面が剥がれる現象)が発生しやすくなります。このため、表面疲労強度の計算が必要です。
📌 設計のポイント
✅ 歯車サイズを大きくする → 接触応力を分散
✅ 適切な潤滑を行う → 摩耗を防ぐ
✅ 高硬度の材料を選ぶ → 表面疲労を防ぐ
平歯車の強度計算とは?
平歯車は、回転運動を伝える重要な機械要素ですが、使用中に歯が折れたり摩耗したりしないよう、強度計算 を行う必要があります。強度計算では、歯にかかる「曲げ応力」や「接触応力」を考え、耐えられる設計になっているかを確認します。
平歯車の強度を評価する方法はいくつかありますが、代表的なものに JGMA 401-01 と ルイスの式 があります。
JGMA 401-01とルイスの式の違い
JGMA 401-01(鋼鉄歯車向けの計算規格)
- 日本歯車工業会(JGMA)の公式規格 で、精密な計算方法。
- 歯の応力や疲労強度 まで考慮し、耐久性の高い設計に適用。
- 主に鋼鉄製の歯車 に使用される。
- 高速回転や大きな負荷を扱う場合に最適。
ルイスの式(樹脂歯車や簡易計算向け)
- 歯車の歯を「はり(梁)」として考え、曲げ応力を計算するシンプルな方法。
- 簡単な手計算が可能 で、樹脂歯車や小型の金属歯車の設計でよく使われる。
- 歯の摩耗や長寿命設計は考慮しない ため、簡易な用途向け。

簡単な樹脂歯車にはルイスの式、高精度な鋼鉄歯車にはJGMA 401-01が適している!
ルイスの式とJGMA 401-01の違いと使い分け
なぜ強度計算が必要なのか?
歯車は回転しながら力を伝える部品ですが、過負荷によって歯が折れる・摩耗すると、機械全体が正常に動作しなくなります。そのため、歯車の強度計算を行い、適切な寸法や材質を選定することが重要です。
強度計算には主に 「ルイスの式」 と 「JGMA 401-01」 の2つの方法があります。
どちらを使うかは歯車の使用環境によって変わります。
ルイスの式とは?
ルイスの式は、歯車の1つの歯を「はり(梁)」とみなして応力を計算するシンプルな方法です。
🔍 ルイスの式の特徴
- 静的な強度計算(動的な影響は考慮しない)
- 単純な形状の歯車に適用しやすい
- 歯の曲げ強度を評価する
✅ ルイスの式が適しているケース
- 低速回転(ゆっくり動く装置)
- 小型の歯車(家電製品や玩具など)
- 簡単な強度計算で十分な場合
🚫 ルイスの式が不向きなケース
- 高速回転(自動車や産業機械)
- 負荷が変動する環境(衝撃や振動がある)
- 摩耗や疲労破壊を考慮する必要がある場合

ルイスの式は簡易的な設計には便利ですが、詳細な評価には不十分なことが多いです。
JGMA 401-01とは?
JGMA 401-01は、日本歯車工業会(JGMA)が定めた動的な影響を考慮した歯車強度計算基準です。
🔍 JGMA 401-01の特徴
- 動的荷重(衝撃や振動)を考慮できる
- 材料の疲労強度(繰り返し荷重)を考慮できる
- 実際の運転条件を反映できる
✅ JGMA 401-01が適しているケース
- 高回転の歯車(エンジン・ギヤモーター)
- 長期間使用する歯車(産業機械)
- 摩耗や疲労を考慮する必要がある設計
🚫 JGMA 401-01が不向きなケース
- 設計がシンプルで、詳細な強度計算が不要な場合
- 短時間しか使わない装置

JGMA 401-01は、より正確な強度評価ができるため、産業用の機械設計では主流となっています。
ルイスの式とJGMA 401-01の比較と使い分け
計算方法 | ルイスの式 | JGMA 401-01 |
---|---|---|
計算の種類 | 静的な曲げ強度計算 | 動的な影響や疲労を考慮 |
適用範囲 | 低速・小型の歯車 | 高速・高負荷の歯車 |
考慮する要素 | 歯の曲げ強度のみ | 摩耗・疲労・動的荷重 |
計算の複雑さ | 簡単 | 詳細で複雑 |
主な使用例 | 玩具・家電 | 自動車・産業機械 |
適切な計算方法を選ぼう!
もし、「簡単な強度チェックをしたい!」という場合は ルイスの式 を使い、
「実際の運用条件まで考慮した設計をしたい!」なら JGMA 401-01 を使いましょう。
設計する歯車の用途に応じて、適切な計算方法を選ぶことが重要です!
✅ ルイスの式 → 簡単な設計向け(低速・小型の歯車)
✅ JGMA 401-01 → 高精度な設計向け(高負荷・高回転の歯車)
平歯車の強度を上げる方法
「強度を計算することも大切ですが、設計の工夫で強度を上げることもできます!」
歯幅を広くする
✅ 歯の幅が広いほど、一つの歯にかかる力が分散し、強度が向上します。
🔍例
▶歯幅を 10mm → 20mm にするだけで、強度が2倍近くになる!
大きなモジュール(歯のサイズ)を選ぶ
✅ モジュール(m)が大きいと、歯が厚くなり、折れにくくなります。
🔍例
▶モジュール 1.5 → 2.0 にすることで、歯の強度が向上!
強度の高い材料を選ぶ
📌鋼鉄歯車:S45C や SCM440 のような強度の高い材質を選ぶと良い。
📌樹脂歯車:MCナイロン や POM(ジュラコン) などの耐摩耗性が高い材質を使うと長寿命化できる。
熱処理や表面処理を活用する(鋼鉄歯車)
浸炭焼入れ:歯車の表面を硬くし、摩耗しにくくする。
✅ 高周波焼入れ:歯の表面だけを硬くし、強度をアップ!
歯車のかみ合いを適切に設計する
✅ 複数の歯で力を受ける設計(歯当たり率を上げる)をすると、1つの歯への負担が減る。
✅ 歯すじ修正(クラウニング) を行うと、均等に力が分散され、局所的な負荷を軽減!
高速回転する場合は潤滑をしっかり行う
- 油潤滑 や グリス潤滑 を適切に選び、摩耗を減らす。
- オイルバス方式(歯車をオイルに浸す方式)にすると、熱や摩耗の影響を大きく軽減!
まとめ
✅ 鋼鉄歯車にはJGMA 401-01、樹脂歯車にはルイスの式がよく使われる!
✅ 歯幅を広げたり、モジュールを大きくすると強度UP!
✅ 材料選びや熱処理で耐久性を向上させることも可能!
✅ 適切な潤滑やかみ合い設計で長寿命化ができる!
強度計算だけでなく、設計の工夫も取り入れて、壊れにくい歯車を作りましょう!
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