サーボモーターは、高精度な位置制御や速度制御を行う重要なデバイスですが、「過熱」には特に注意が必要です。
過熱を放置すると、モーターの寿命低下や重大な故障に直結します。
この記事では、サーボモーターの過熱問題と、それを防ぐために設けられている過熱アラームについて、初心者にもわかりやすく解説します!
サーボモーターの過熱とは?
サーボモーターが動作する際、内部のコイル(巻線)に電流が流れ、電気抵抗によって自然と熱が発生します。
通常の運転条件であれば、モーター本体や周囲の空気によってこの熱は適切に放散され、問題は起きません。
しかし、以下のような条件が重なると、モーターの温度が許容範囲を超えて上昇してしまいます。
サーボモーターが過熱する主な原因
原因 | 説明 |
---|---|
高負荷運転 | 必要以上のトルクを出し続けると、電流が増えて発熱量が大きくなる |
長時間の最大トルク使用 | 最大トルクは短時間使用が前提。 長時間連続使用すると過熱リスクが高い |
頻繁な加減速運転 | サイクル運転で負荷がかかり続けると、平均発熱量が増加 |
周囲温度が高い | 夏場や密閉空間など、冷却効率が悪い場所で使用すると熱がこもる |
通風・冷却不良 | モーターに十分な風が当たらない設置環境では放熱が間に合わない |
過熱がもたらすリスク
モーター内部の温度が設計許容値を超えると、次のようなトラブルが発生します。
🚫 巻線絶縁の劣化・破壊
絶縁が劣化すると、漏電や短絡(ショート)の原因になり、最悪モーター焼損へ。
🚫 磁石の劣化
サーボモーターに使われている永久磁石は熱に弱く、高温になると磁力が低下。性能が著しく落ちます。
🚫 ベアリングの損傷
過熱による潤滑油の劣化が進み、ベアリング寿命が短くなることも。
これらの問題が進行すると、修理費用の増加や、装置の長期停止といった大きな損失を引き起こしてしまいます。
過熱アラームとは?
過熱によるトラブルを未然に防ぐために、サーボアンプ(ドライバ)には「過熱アラーム」機能が搭載されています。
過熱アラームの基本動作
- モーター内部、またはアンプ内部にサーマルセンサが設置されている。
- 温度が設定された閾値(例:100℃)を超えると、自動的にアラームを発報。
- その時点でモーターへの電流供給を停止して、さらなる温度上昇を防止。
- 同時に、アラームコード(エラー番号)をサーボアンプに表示。
つまり、過熱アラームは「このまま運転を続けると危険だよ!」と教えてくれる、緊急ブレーキシステムのようなものです。
過熱アラームの名称例
メーカーによって呼び方は少し異なりますが、だいたい次のように表記されます。
メーカー | 表記例 |
---|---|
三菱電機 | AL.46(モーター過熱) |
安川電機 | A.862(過熱アラート) |
パナソニック | Err15.0(オーバーヒート保護) |
サーボアンプのマニュアルにアラーム一覧が載っているので、機種ごとに確認が必要です。
過熱アラーム発生時の対策
万一、過熱アラームが出た場合は、単にリセットして再起動するだけでは不十分です。
以下のような原因究明と対策が必要です。
点検・対策ポイント
項目 | チェック内容 |
---|---|
負荷条件 | モーターに過大な負荷がかかっていないか? |
運転パターン | 頻繁な加減速や急停止が連続していないか? |
周囲温度 | 高温環境や、密閉空間での使用になっていないか? |
冷却状況 | ファンの故障、埃による通風不良はないか? |
モーター仕様 | モーター容量が不足していないか?(サイズ選定ミス) |
原因を特定した上で、
- 負荷を軽くする
- 動作パターンを見直す
- 環境改善(冷却ファン設置、周囲温度管理)
- モーター容量をアップする
などの対策を講じることが重要です。
サーボモーターの過熱を防ぐ!初心者向け運用ポイント解説
サーボモーターは高精度な位置制御や速度制御ができる便利な機械部品ですが、正しく運用しないと「過熱」して故障やトラブルの原因になります。
特に初心者の方は、つい性能ギリギリの使い方をしてしまったり、周囲環境を見落としたりしがちです。
本項では、サーボモーターの過熱を防ぐために重要な3つのポイントをわかりやすく解説します。
適切なモーター選定(トルク余裕を持たせる)
なぜトルクに余裕が必要?
サーボモーターには「定格トルク」という、連続して出せる最大のトルク値が定められています。
モーターに負荷がかかると、内部で電流が増え、それに伴って発熱します。
もし負荷が定格トルクギリギリだった場合、
モーターは常に限界近くで動作することになり、発熱量が多くなり過熱のリスクが高まります。
どれくらい余裕を持たせる?
一般的には、
✅ 最大負荷トルクが定格トルクの70〜80%以内
に収まるようにモーターを選定するのが理想です。
ポイントまとめ
- 定格トルクいっぱいで運転しない
- 少し大きめのモーターを選ぶ
- 長時間運転するなら特にトルク余裕は重要!
周囲温度に注意(40℃を超えない環境が望ましい)
周囲温度が高いとどうなる?
サーボモーターは周囲の空気に熱を逃がしながら冷却しています。
しかし、周囲温度が高いとうまく放熱できずモーター内部に熱がこもり、どんどん温度が上昇してしまいます。
特に工場内や密閉筐体(ボックス内)では、想像以上に温度が上がるため注意が必要です。
どんな温度が望ましい?
✅ 周囲温度は40℃以下が理想です。
もし40℃を超える可能性がある場合は、
- クーリングファン(送風機)を取り付ける
- モーター付近にエアコンや冷却装置を設置する
- モーター自体に冷却ファン付きタイプを選ぶ などの対策を検討しましょう。
サーボモータの仕様書にも「使用周囲温度:0~40℃」と記載されていることが多いです。
ポイントまとめ
- モーターは空気で冷やしている
- 暑い場所では熱が逃げにくい
- できるだけ涼しい環境で使う工夫を!
加減速をなだらかに設定(急停止運転を避ける)
急停止するとなぜ熱くなる?
サーボモーターは、加速・減速するたびに大きなトルク(=電流)が必要になります。
特に急停止を繰り返すと、一気に高負荷状態になり、
✅ 瞬間的に発熱
✅ 内部温度が高温化
してしまいます。
さらに、急停止時には回生電力(ブレーキ時に発生するエネルギー)がサーボドライバに戻ってくるため、ドライバも発熱しやすくなります。
なめらかな加減速設定とは?
加減速をなだらかに設定すると、
- 必要トルクが小さくなり
- モーターへの負担が減り
- 発熱も抑えられます
🔍 たとえば、、、
- 加速時間を長めに設定
- 減速時間)もゆるやかに設定 など、急加速・急減速を避ける運転パターンにすることが効果的です。
ポイントまとめ
- 急停止はモーターに負担大
- なめらかな加速・減速設定が重要
- 省エネ・長寿命運転にもつながる
過熱を防ぐために意識すべきこと
項目 | 内容 |
---|---|
モーター選定 | 負荷トルクに対してトルク余裕を持たせる |
周囲温度 | できれば40℃以下、暑い場所では冷却対策を |
運転パターン | 急停止を避け、加減速をなだらかに設定する |

サーボモーターは非常に優れた機械要素ですが、発熱にはとてもデリケートです。
今回紹介したポイントを意識するだけでも、トラブルの発生リスクを大きく減らすことができます。
過熱を防ぐ運用ポイント
最後に、普段から過熱を防ぐためのポイントをまとめておきます。
✅ 適切なモーター選定(トルク余裕を持たせる)
✅ 周囲温度に注意(40℃を超えない環境が望ましい)
✅ 加減速をなだらかに設定(急停止運転を避ける)
✅ 通風・冷却確保(ファン取付やエンクロージャ開放)
✅ 定期的な点検とメンテナンス(ファン・埃掃除など)
これらを意識するだけでも、サーボモーターの寿命延伸と、システムの安定運用に大きく寄与します。
まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
サーボモーター過熱の原因 | 高負荷、最大トルク長時間、加減速頻繁、環境要因 |
過熱アラームとは | モーターまたはアンプの過温時に発報し運転停止する保護機能 |
過熱アラーム発生時の対応 | 原因究明と負荷・冷却・動作条件の見直し |
過熱防止のコツ | モーター選定、冷却対策、運用方法の工夫 |
サーボモーターは精密な位置決めや速度制御に欠かせない重要な部品ですが、過熱により性能低下や故障を引き起こすリスクがあります。過熱の原因は、負荷トルクの過大、周囲温度の上昇、急加減速の頻発などさまざまです。特に、定格トルクを超えた状態での長時間運転は、内部温度を急激に上昇させるため注意が必要です。
これらの過熱リスクを未然に防ぐため、サーボモーターには過熱アラーム機能が搭載されています。過熱アラームは、モーター内部に設置された温度センサーによって監視され、温度が設定された安全限界を超えた際に作動します。アラームが出た場合は、すぐに運転を停止して原因を調査し、適切な対策を講じることが重要です。
コメント