おねじ加工の「逃がし加工」とは?目的・設計ポイント・実例を解説!

設計の基礎知識

ネジは機械設計で最も多く使用される締結要素の一つですが、
その中でも「おねじ(外ねじ)」を加工する際には、
逃がし”と呼ばれる重要な加工が関係します。

この記事では、

なぜ逃がし加工が必要なのか?
どんな形状や寸法が適切なのか?
逃がし加工を省略した場合に起こる問題とは?

といったポイントを、
図解イメージや実務例を交えてわかりやすく解説します。


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そもそも「逃がし加工」とは?

逃がし加工とは、おねじ(外ねじ)の根元に設ける“段差や溝”のことを指します。

ねじ切りの端部、特にボルト先端やシャフトの端で
「ねじ山が立たない部分」や
「工具が届きにくい部分」に余裕を持たせるための加工です。

代表的な形状の例

幅広の段付きストレート逃がし(直角逃がし)

丸み(R)付きの逃がし


逃がし加工が必要な理由

逃がし加工が必要になる理由は、
以下のような加工上・組立上の問題を防ぐためです。

ねじ切り工具の構造的限界

タップやダイス、旋盤用バイトには「逃げ」が必要です。

工具の先端には切り込みできない部分(丸まった先端部)があるため、
根元まできっちりねじ山を立てることができません。

そのままだと、ナットやめねじが最後まで入らず締結不足になります。


ねじ山の干渉防止

おねじの根元部分が、相手部品の角に接触してしまうと、
ねじが斜めに入りやすくなり、破損や偏心の原因になります。

逃がしを設けておけば、相手部品とのスムーズな組立が可能です。


応力集中の低減

ネジ山の終端には応力が集中しやすく、
特に繰返し荷重下では疲労破壊の起点になることがあります。

逃がし部を滑らかに仕上げることで、
応力集中を緩和できます。
(特に回転軸や振動環境では重要)


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逃がし加工の代表的な形状と用途

形状の種類特徴主な用途・メリット
ストレート逃がし
(段付き)
根元に径の小さな段差部を設ける組立時の干渉防止
ナット完全締結に有効
丸逃がし
(R逃がし)
半径R形状の逃がし
(例:R0.5〜1.5)
応力集中が少ない
主に回転軸・精密部品に多い

寸法の目安と設計時のチェックポイント

逃がしの寸法には明確なJIS標準はありませんが、
以下のような実務上の目安があります。

逃がしの径(φ)

ねじ径-(ねじのピッチ+0.2mm~0.5mm)程度が一般的
(例:M10ならφ8程度)

ただし、加工工具に応じて調整が必要

幅(長さ)

少なくとも1.5山〜2山分の幅
(ピッチ×1.5〜2)

M10×1.5なら
→ 逃がし幅 約2.25〜3mm

逃がし形状の推奨

  • スムーズな組立重視
    ストレート逃がしが有効
  • 回転部・高応力部
    → 丸逃がし

逃がしの目安寸法

ねじ径ピッチ(mm)逃がし径(mm)逃がし幅(mm)
M30.521
M40.731
M50.841.5
M61.04.51.5
M81.256.52
M101.583
M121.759.53.5
M162.013.54
M202.5175
M243.0205
M303.5265
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逃がし加工を設けない場合のリスク

逃がしを省略してしまうと、
以下のようなトラブルや不具合が発生する可能性があります。

問題内容
締結不足ネジ山が途中で止まり、ボルトが最後まで締められない
組立不良部品同士が干渉し、無理な押し込みで斜めネジが発生
工具破損バイトやタップが途中で干渉して折損するリスク

図面での指示例と注意点

設計図面で逃がし加工を明示する際は、以下のように記載します。

  • 【逃がし部 φ9.5×3(丸みR1.0)】など寸法と形状を明記
  • JISに準拠した寸法公差を与える場合もあり
  • 特殊な逃がし形状を使うときは「断面図」や「詳細図」で補足

「ねじ部端まで加工」とだけ書いてあると、
現場が判断に困ることがあるため、
逃がし形状・寸法は必ず具体的に指示するのがベストです。


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強度が必要なねじ部では“めねじ側で逃がす”のが有効!

おねじ(外ねじ)の端部には、通常「逃がし加工」が施されます。

これは工具の制約や締結性向上のために必要な加工ですが、
一方で逃がし部分が“応力の弱点”になるケースもあります。

本項では、

  • なぜ逃がし加工を行わない方が良い場合があるのか?
  • その代わりに“めねじ側にC面取り”を設けるとはどういうことか?
  • 実際の設計上の注意点は?

という点を中心に、わかりやすく説明します。


逃がし加工は便利だが、強度的には弱点になることも

逃がし加工は、おねじの根元部分にRや段差を設けることで、
以下のようなメリットがあります。

  • 工具の逃げを確保できる
  • 組立がスムーズになる
  • 応力集中を緩和できる
    (※ただしR形状に限る)

しかし、実務では以下のような設計ニーズも存在します。

「ねじ部にできるだけ応力の弱点をつくりたくない」
「引張荷重や衝撃荷重がかかるため、ねじ部の根元は極力太く、段差をなくしたい」

はじめ
はじめ

このようなとき、逃がし加工による
“段付き部”や“削り込み”が強度的なリスクになります。


逃がし加工を行わずに済ませる方法:めねじの口元にC面取りを設ける

このようなケースでは、おねじ側に逃がし加工を設けない代わりに、
めねじ側(ナットや部品側)に以下のような工夫をします。

めねじの口元に「C面取り(または面取り)を設ける」

🔍 例)

  • C1.0
  • 60°の面取り(先端角付き)など

この方法により、おねじのねじ山が立っていない端部が、
めねじにうまく納まるようになります。

つまり、「逃げる側を“相手側”に持たせる」という発想です。


なぜこの方法が有効なのか?

この設計方法には以下のようなメリットがあります。

  • おねじのシャフト径を逃がしで削らず、断面強度を維持できる
    • 引張りや曲げに強く、
      ねじの根元での破断リスクを抑えられます。
  • 回転部や高負荷部でも、段差や応力集中を避けられる
    • 特に中実シャフト・細径軸・
      クランクピン等の強度設計に有効。
  • ねじ加工がシンプルで、旋盤加工やNC加工でも効率がよい
    • 工程削減につながるため、
      コスト的にも◎

設計上の注意点とポイント

この方法を使う際には、いくつかの重要な設計ポイントがあります。

項目内容
C面の寸法少なくとも「ピッチの2山分」以上
(例:M10×1.5ならC3.0以上)
C面の角度標準45°が多いが、機械加工の工具やタップ形状に応じて調整可能
組立時の公差めねじ側のC面がしっかり形成されていることが前提
(C面なしの穴だと組立不可)

適用例:どんな場面で有効か?

この設計法が特に効果を発揮するのは、以下のような場面です。

  • 高強度が要求されるシャフト部品
    • アクチュエーターの出力軸
    • ピンジョイント部
    • クランクピンなど
  • 高荷重がかかる引張ねじ
    (特にボルトよりも軸側ねじ)

逃がし加工は万能ではない!用途に応じて設計を変えるのがコツ

項目内容
通常の逃がし加工工具の都合、組立性、応力緩和には有効だが、
強度は若干低下
めねじ側のC面取りで逃がすおねじ側の断面強度を維持しながら、
ねじ組み付けも可能
設計の使い分け回転部や高荷重部では
「逃がしなし+C面取り」が安全なケースもある

逃がし加工は設計者にとって基本的な考慮事項ですが、
状況によっては「あえて逃がさない設計」の方が合理的な場合もあります。

はじめ
はじめ

強度設計や応力解析を行う場面では、
こうした代替手段を知っておくと、
より柔軟な図面設計が可能になります。
ぜひ今回の内容を、今後の設計業務にお役立てください。


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まとめ

ポイント要点
逃がし加工とは?おねじ端部の段差やRで、工具・組立・耐久性を考慮した加工
必要な理由工具の限界、組立性、応力集中の緩和のため
推奨形状軸にはR逃がし、ボルトにはストレートや面取りが多い
設計の注意ねじ径・ピッチに応じた幅と径を設計し、図面指示を明確に

逃がし加工は地味な要素ですが、
正しく設けることで加工トラブル・不具合・破損を防ぐ
非常に重要な設計ポイントです。

とくに繰り返し負荷がかかる機械や精密機構においては、
逃がしの有無が寿命を大きく左右します。

設計時にはぜひ、「ねじ端部には逃がしを入れる」という基本を意識して、
より高品質な図面づくりに役立ててください。



はじめ
はじめ

ボルトやナット、軸受け、ギアといった
基本的な要素部品の機能と選び方を
詳しく紹介します。

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