位置決めピンは、部品や機構の位置を正確に固定するために重要な役割を果たします。
代表的な位置決めピンとして「ノックピン」と「テーパピン」がありますが、
それぞれの特徴や適用場面が異なります。
この記事では、ノックピンとテーパピンの使い分けについて、
各ピンの特徴や利点、注意点を交えて解説します。
ノックピンの特徴
ノックピンの基本
ノックピンは、一般的にシリンダー形状をしており、
直径に対して寸法精度が高い位置決めピンです。
特に高精度な位置決めが必要な場面で使用され、
部品間のずれを防ぐために取り付けられます。
強力な固定力と再現性
ノックピンは主にシャフトやフランジの固定、
あるいは接合部の正確な位置決めに使用されます。
ピン径の精度が高いため、挿入後の位置再現性が非常に優れています。
部品の脱着を行った際にも再度精密な位置決めが可能で、
繰り返し作業が求められる場面に最適です。
使用時の注意点
テーパーピンの特徴
テーパーピンの基本
テーパピンは、軸方向に向かって徐々に太くなる
テーパ形状を持つ位置決めピンです。
テーパ形状により、挿入する際にピンが
しっかりと圧入され、非常に強固な締結が可能です。
強い締結力と高精度な位置決め
ピンが圧入される際にその形状が部品間に強い圧力をかけるため、
非常に高い締結力を持ちます。
圧入時に位置決めが精密に行われ、ずれがほとんど生じません。
分解や再組立ての際も同じ位置にピンを
再度挿入することで、位置の再現性が高いです。
使用時の注意点
ノックピンとテーパーピンの使い分け
ノックピンの適用場面
部品の位置決めが最優先される場合
ノックピンは、シャフトやフランジなどの
精密な位置決めが必要な場面で多用されます。
部品を再度組み立てる際にも高い位置再現性が求められる場面に適しています。
容易に脱着する必要がない場合
ノックピンは圧入されるため、取り外しが容易ではありません。
頻繁なメンテナンスや分解が行われない場所で使用されることが多いです。
軽負荷の固定
位置決めが主な目的で、強力な締結力が不要な場合には、
ノックピンが適しています。

部品単位の精密な位置決めが必要な場合は
あらかじめノック穴を加工することにより、
精密な加工精度で位置決めすることができます。
テーパーピンの適用場面
高い締結力が必要な場合
テーパピンは、圧入による高い締結力を発揮するため、
特に強固な接合が必要な箇所で使用されます。
重負荷がかかる部品や機械部品同士の強固な固定が求められる場合に適しています。
精度の高い位置決めと脱着が求められる場合
テーパピンは、精密な位置決めをしつつも、
反対側から叩き出すことで比較的簡単に取り外せます。
部品のメンテナンスや再組立てが頻繁に行われる場面に適しています。
動的な力が加わる場所
テーパピンは、動的な荷重や振動がかかる場所で
しっかりと固定するために適しています。
テーパーピンは大型のフレームや架台に使用することが多いです。
フレームの調整、位置決め後にドリル、テーパピンリーマー等で
現物合わせ加工し位置決めします。

その際、合わせ側のフレームに適切なキリ穴を加工しておくようにしましょう。
その穴をガイドに現合加工すれば工数の削減になります。
ノックピンとテーパーピンの使用用途の違い
機械設計において、ノックピンとテーパーピンは
部品の位置決めや固定に使用されますが、
それぞれの使い方には明確な違いがあります。
ノックピン:設計段階で位置決めを行う
ノックピンは、設計時にあらかじめ位置決め穴を加工しておき、
組立時に正確な位置決めができるようにします。
主に以下の用途で使用されます。
部品の着脱を繰り返す機構で、位置決め精度を維持したい場合
高い精度が求められる部品の位置決め
強度を補助し、ボルトやねじだけでは不足する固定力を確保
テーパーピン:現物合わせでの調整が可能
テーパーピンは、組み立て後に現物合わせで穴を加工することが多く、
以下のような場面で用いられます。
組立後に位置決めを行い再現性が必要な場合
高い抜け防止効果が求められる固定
部品間のガタつきを防ぐための圧入固定

適切なピンを選定することで、
組立精度の向上やメンテナンスの効率化が図れます。
ノックピンとテーパーピンの比較表
| 項目 | ノックピン | テーパピン |
|---|---|---|
| 形状 | シリンダー状の直径一定 | 軸方向に向かって太くなるテーパ形状 |
| 位置決め精度 | 非常に高い | 非常に高い |
| 締結力 | 中程度 | 高い |
| 取り外し | 固定側は取り外しが難しい | 反対側から打ち出して取り外しやすい |
| 使用用途 | 軽負荷の固定 位置決めが重要な箇所 | 重負荷や動的荷重がかかる箇所 高精度な位置決め |
ノックピンとテーパーピンの選定時のポイント
使用環境と負荷
使用する部品の環境や負荷に応じて、どちらのピンを選定するかが決まります。
軽負荷や単に位置決めが必要な箇所にはノックピンが適しています。
重負荷や振動が加わる箇所にはテーパピンを選定するのが適切です。
メンテナンス性
部品のメンテナンス頻度も考慮しましょう。
頻繁に取り外しや再組立てを行う必要がある場合、
テーパピンの方が脱着が簡単で便利です。
頻繁な脱着が不要な場合は、ノックピンでも問題ありません。
ピン穴の加工精度
どちらのピンを使用する場合でも、ピン穴の加工精度が重要です。
特にテーパピンの場合、テーパー角が正確でないと、適切に機能しません。
穴加工の際には細心の注意が必要です。
まとめ
ノックピンとテーパピンは、機械設計における位置決めや締結のための重要な部品です。
それぞれの特性を理解し、使用環境や求められる機能に応じて適切に選定することが、
機械の性能や信頼性を向上させる鍵となります。
ノックピンは位置決めが最優先される箇所に、
テーパピンは強力な締結力やメンテナンス性が求められる箇所に最適です。




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