初心者でもわかる!PX5の特徴と選定ポイントとは?

材料選定

機械設計や金型設計をしていると、さまざまな「プリハードン鋼(調質鋼)」という材料に出会うことがあります。その中でもPX5(ピーエックスファイブ)は、非常に使い勝手のよい鋼材として知られています。

「PX5って何がいいの?」「どういう場面で使えばいいの?」
この記事では、PX5の特徴と選定ポイントについて、初心者にもわかりやすく解説していきます!


PX5とはどんな材料?

PX5は、大同特殊鋼が開発したプリハードン鋼(調質済み鋼)の一種です。プリハードン鋼とは、あらかじめ焼き入れ・焼き戻し(調質処理)をされた状態で出荷される鋼材のことです。

PX5の硬さはHRC30前後に調整されており、金型や治具、機械部品などの加工にそのまま使える便利な鋼材です。


PX5の主な特徴

特徴説明
加工性が良いフライス加工や穴あけ、ねじ加工がしやすく、加工時間の短縮につながる
溶接性が良好小修正などの溶接後のクラックリスクが少ない
放電加工後も変形しにくい精密部品の加工でも安心
被削性が高い工具の摩耗が少なく、工具寿命が延びる
寸法安定性が高い焼き入れ後の変形がないため、仕上げ精度が出しやすい

どんな用途に向いている?

PX5は、以下のような用途に向いています。

  • プラスチック金型のベースプレート
  • 成形機械のフレームや支持部品
  • 各種治具
  • 切削を多用する精密部品

特に「精度が必要で、焼き入れの変形を避けたい」という場面では、PX5の寸法安定性が大きなメリットになります。


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他の材料との比較(例:NAK55との違い)

材料PX5NAK55
硬さHRC30前後HRC37〜43前後
加工性非常に良いやや良い
放電加工性良好非常に良好
被削性高い中程度
価格やや安価PX5よりやや高め
はじめ
はじめ

NAK55の方が硬さはありますが、そのぶん加工にはやや手間がかかります。
PX5はバランスの取れた扱いやすい材料と言えます。


選定ポイントまとめ

PX5を選ぶときのポイントは以下の通りです。

✅ 焼き入れなしですぐに使いたい部品
✅ 加工が多く、工具の寿命を気にする場合
✅ 焼き入れ後の変形やひずみを避けたい場合
中程度の強度と加工性のバランスを求める場面


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プリハードン鋼といえばNAK55?実は選択肢はもっと広い!

~PX5などの材料を知って設計の幅を広げよう~

機械設計や金型設計の現場で、「プリハードン鋼」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。
中でもNAK55はとても有名な材料で、多くの現場で使われています。

しかし実は、NAK55だけではありません!

材料の知識を広げていくことで、加工しやすくなる、コストが下がる、納期が短縮できるなど、設計の幅がぐっと広がる可能性があります。本項では、NAK55以外のプリハードン鋼の存在と、それを知ることのメリットについて、初心者にもわかりやすく解説します。


プリハードン鋼とは?

まず、「プリハードン鋼ってなに?」という方のために簡単に説明します。

プリハードン鋼(調質鋼)とは、あらかじめ焼き入れと焼き戻し(調質)が済んでいて、すぐに加工・使用できる便利な鋼材のことです。

通常の鋼材は、加工後に焼き入れをして強度を出す必要がありますが、プリハードン鋼ならその必要がなく、時間と手間を大きく削減できます。


NAK55だけじゃない!こんな材料もあります

材料名特徴
NAK55プラスチック金型向けの定番材料。放電加工性・鏡面性に優れる
PX5加工性とコストバランスに優れた材料。治具や構造部品に最適
HPM38高硬度(HRC40)ながら、加工性と耐食性が高い
HPM1高靭性で割れにくく、機械構造部品向けに使われる

このように、用途や加工内容、コスト感に応じて選べる材料はたくさんあります。それぞれに得意・不得意があるため、「とりあえずNAK55でいいや」と考えてしまうと、最適な設計を見逃す可能性もあります。


材料を知ることで得られるメリット

  1. 加工時間の短縮
    • 加工性の良い材料を選べば、切削時間や工具の負担が減り、全体の作業効率がアップします。
  2. コスト削減
    • 用途に対してオーバースペックな材料を使っていると、材料費が無駄になります。
    • 適材適所が大切です。
  3. 品質安定と納期短縮
    • 熱処理による変形リスクがない材料を選べば、精度が出しやすく、後工程もスムーズになります。
  4. 引き出しが増える
    • 「こういうときはこの材料がいい」と選択肢を持つことで、設計の幅が広がります。
    • トラブルにも強くなります。

NAK55は便利。でも、PX5など他の選択肢も知ろう!

NAK55はたしかに便利で、万能な材料のひとつです。でも、他にもPX5のような加工性に優れた材料や、HPM38のように耐食性や強度に優れた材料があります。

材料の知識は、設計者としての武器になります。

はじめ
はじめ

初心者のうちは、「まず知ること」から始めましょう。
そして少しずつ「なぜこの材料が選ばれているのか」「他の選択肢はないか?」と考えるクセをつけていくと、より実践的で効率のよい設計ができるようになります。

まとめ

PX5は、「ほどよい硬さ+優れた加工性+コストバランス」が魅力の材料です。特に金型や治具、精密部品の設計で、納期短縮やコストダウンを実現したいときに非常に有効です。

「焼き入れの手間がいらず、そのまま使えて加工しやすい」――
それがPX5の一番の魅力です。ぜひ材料選定の際に候補として検討してみてください!


はじめ
はじめ

設計において欠かせない材料の特性や用途を解説しています。
適材適所の選定をサポートします。

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