ミスミでよく見る「相当材」の正体~材料選定と設計への影響を解説~

材料選定

「S45C相当」
「SUS304相当」
「A5052相当」…

ミスミのカタログや3D CADデータでよく見かけるこの“相当材”という表記。
「同じ材料じゃないの?」と思っていたら、ちょっと注意が必要です。

この記事では、相当材とは何か、どう扱えばいいか、
そして設計にどう影響するのかをやさしく解説します。


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「相当材」ってそもそも何?

相当材とは、元の材料(JIS規格など)に性能が近く、
同等の用途に使える材料のことです。

ただし、まったく同じ材料ではないという点が重要です。

よく見かける相当材の例

表中の表記解説内容
S45C相当JIS規格外の中炭素鋼・引張強さは近い
SUS304相当JIS G4303 以外のステンレス鋼で類似材
A5052相当A5052 に近いアルミ合金、性質差あり

ミスミにおける相当材の背景と根拠

S45C(相当)

ミスミの公式情報によれば、「S45C(相当)」とは、
「S45C〜S50Cに相当する材質を使用する可能性がある」ことを意味しています。

相当定義
S45C(相当)とは、S45C~S50Cの相当品を使用する可能性があることを指します。

ミスミ情報サイトより

つまり、JIS 規格の S45C に厳密に該当するとは限らず、
特性が近い広い範囲の炭素鋼(SC 系)を
相当材として使っている可能性があるということです。

  • S45C 実際の性質

S45C は JIS 規格による「機械構造用炭素鋼(SC 材)」と定義されており、
炭素含有量が約 0.45% で、熱処理可能なことで知られます。

S50C のような近似材を含むことから、
ミスミの「相当材」表記が複数の特性を許容している理由になります。


SUS304(相当) & A5052(相当)

ウェブ上では、SUS304 相当や A5052 相当の具体的仕様について
明記された公式情報は確認できませんでしたが、
同等性能を目指した代替材料として利用されるもので、
全く同じ材料ではない可能性がある点に注意が必要です。

なぜ「相当材」を使っているの?

~品質とコストを両立させる材料選定の工夫~

「ミスミで注文したら“S45C相当”とか“SUS304相当”って書いてあるけど、
これって本物のJIS規格材じゃないの?」

そんな疑問を持ったことはありませんか?

実はこの「相当材」には、きちんとした理由とメリットがあります。

本項では、ミスミが相当材を使う理由と、
設計者として知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。


相当材を使う理由

コストを抑えるため

JIS規格の材料は、厳密な成分管理と検査コストがかかります。
一方、相当材は海外規格や社内基準で選定された素材で、
同等性能を保ちつつ安価に調達できるのが特徴です。

はじめ
はじめ

材料コストが下がれば、部品全体の価格も下がり、安く早く入手できます。


安定供給のため(グローバル調達)

日本国内だけでなく海外でも手に入る素材を活用し、
需給バランスの変動に強い仕組みを構築できます。

はじめ
はじめ

相当材を使えば、特定のJIS材に依存せず供給の安定化と短納期化が可能になります。


加工性を考慮して選ばれていることも

材料によっては、JIS材よりも切削しやすい・変形しにくいといった
特性を持つ相当材もあります。

設計意図に合う特性を持つ材料を選定することで、
品質と加工効率を両立する狙いもあるのです。


設計者が注意すべきこと

相当材はあくまで「JISと同等の性能を持つ」素材。
ただし、厳密な材質成分やトレーサビリティが求められる用途(医療・航空など)では、
相当材ではなく正式なJIS材を指定するべき場面もあります。

懸念がある場合は、「JIS材を指定」や「材質証明書の要求」で対応しましょう。


相当材は“現場に優しい選択肢”

観点相当材のメリット
コストJIS材より安価に仕入れられる
納期海外調達や複数調達ルートにより短縮できる
加工性切削や曲げに適した特性のものを選べる

ミスミの「相当材」表記は、単なるコストカットではなく、
品質・価格・納期のバランスをとるための合理的な工夫なのです。

はじめ
はじめ

設計者としては、「相当材=品質が劣る」と誤解せず、
どういう用途で使うか・何が求められているかを意識して、
材料指定を判断しましょう。

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設計者が知っておくべき注意点

相当材でも多くの場合は問題なく使えますが、
次のようなケースではしっかり確認が必要です。

精密部品や強度部品

疲労強度・硬度・靭性などを確認しましょう。
微妙な差が寿命や安全性に影響する可能性があります。

溶接や熱処理が関わる部品

材料の成分組成によって、焼き割れ・溶接性の悪化が起こることがあります。

医療・食品・輸出用などの厳しい規格要求品

→ 正規のJISやISO番号指定が必要な場合、相当材はNGになることもあります。


相当材とのうまい付き合い方

項目対応のヒント
材料指定カタログ記載の材質欄を必ずチェック。
「S45C相当」などの表記は“別物”と認識する
強度・性能必要な機械的特性(引張強さ・硬度など)と比較する。
メーカーにデータシートを確認するのも◎
指定が厳しい場合図面や仕様書に「JIS○○準拠材を使用」と明記することで、
代替を防ぐことが可能
トレーサビリティが必要な場合ロット証明書やミルシートの提出可否を確認する

現場あるある:相当材でこんなすれ違いも…

👷‍♂️ 現場「ミスミでS45Cって書いてあったけど、削ってみたら硬くて変だよ?」
🧑‍💻 設計「しまった、実は“相当材”って書いてあった…」

材料の加工性や硬さが違うことで
工具摩耗や公差不良が発生することもあります。


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まとめ:相当材は“便利な味方”でも“要注意”でもある!

▶ ミスミの相当材は、コストや納期面で大きなメリットがあります
▶ ただし「本物のJIS材と同じだろう」は禁物!
▶ 強度や精度が求められる場面では、材料仕様の確認が設計者の責任です

相当材は「使える場面」と「使ってはいけない場面」を見極めることが大切です。
➡ 材料選定に迷ったら、現場や仕入先、ミスミの仕様書を活用しよう!


はじめ
はじめ

設計において欠かせない材料の特性や用途を解説しています。
適材適所の選定をサポートします。

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