角パイプ(STKR)は、強度や剛性が求められる構造物やフレーム部品に多く使用される材料です。形状が正方形または長方形であることから、「角形鋼管」や「角パイプ」とも呼ばれます。本記事では、角パイプの基本的な規格寸法や特性、選定ポイントについて解説します。
角パイプ規格寸法
以下は、角パイプの正方形および長方形の代表的な規格寸法の一覧です。具体的な寸法はメーカーや製造条件によって異なる場合がありますので、参考値としてご活用ください。
代表的な角パイプの規格寸法表
正方形断面(単位:mm)
外寸(幅 × 高さ) | 肉厚(t) | 備考 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
16 × 16 | 1.2 | 1.6 | 小型部品や軽量用途 | |||
20 × 20 | 1.6 | 2.3 | 軽量構造物向け | |||
25 × 25 | 1.2 | 1.6 | 2.3 | 汎用フレーム構造 | ||
30 × 30 | 1.6 | 2.3 | 3.2 | 設備フレームや装置に適用 | ||
40 × 40 | 1.6 | 2.0 | 2.3 | 3.2 | 4.5 | 中荷重構造物向け |
50 × 50 | 1.6 | 2.3 | 3.2 | 4.5 | 6 | 汎用性が高い用途に適用 |
60 × 60 | 1.6 | 2.3 | 3.2 | 6 | ||
75 × 75 | 2.3 | 3.2 | 4.5 | 6 | 高剛性フレーム向け | |
80 × 80 | 2.3 | 3.2 | 4.5 | |||
90 × 90 | 2.3 | 3.2 | ||||
100 × 100 | 2.3 | 3.2 | 4.5 | 6 | 9 | 重量物用の構造体向け |
125 × 125 | 3.2 | 4.5 | 6 | 9 | ||
150 × 150 | 4.5 | 6 | 9 |
長方形断面(単位:mm)
外寸(幅 × 高さ) | 肉厚(t) | 備考 | |||
---|---|---|---|---|---|
40 × 20 | 1.2 | 1.6 | 2.3 | 3.2 | 軽量構造物向け |
50 × 30 | 1.6 | 2.3 | 3.2 | 中程度の荷重用途 | |
60 × 30 | 1.6 | 2.3 | 3.2 | 中荷重のフレームや装置 | |
75 × 45 | 2.3 | 3.2 | 中荷重用途で汎用的 | ||
100 × 50 | 2.3 | 3.2 | 4.5 | 6 | 剛性を重視する用途 |
125 × 75 | 2.3 | 3.2 | 4.5 | 6 | 重荷重構造物向け |
150 × 50 | 2.3 | 3.2 | 大型機械のフレーム | ||
150 × 75 | 3.2 | 4.5 | 6 | ||
150 × 80 | 4.5 | 6 | |||
150 × 100 | 3.2 | 4.5 | 6 | 9 |
使用上の注意点
設計強度の確認
肉厚によって曲げ剛性や耐荷重が異なります。必要な強度や剛性を確認して選定してください。
- 溶接性と加工性
肉厚が薄い場合、溶接時に変形が生じやすい点に注意しましょう。 - 寸法公差
製造時の寸法公差(幅、高さ、肉厚)があるため、設計においては余裕を持たせる必要があります。 - 腐食対策
屋外や腐食環境で使用する場合は、表面処理(防錆塗装やメッキ)を施すことを検討してください。
角パイプ(STKR)の基本特性
STKRは「Steel tube K Rectangular」の略で、日本工業規格(JIS G 3466)で定義された構造用角形鋼管です。以下は主な特性です。
- 高い剛性
中空構造により軽量でありながら、優れた曲げ剛性とねじり剛性を持っています。 - 加工性
切断、溶接、穴あけ、曲げ加工が容易で、多様な形状設計に対応可能。 - コストパフォーマンス
汎用性が高く、他の構造用材料と比較して安価。 - サイズの多様性
規格化された寸法が豊富に用意されており、設計の自由度が高い。
STKRの規格と寸法
JIS G 3466に基づく角パイプには、さまざまなサイズが規格化されています。以下はその例です:
標準的な断面寸法と肉厚
- 角形(正方形):断面寸法が等しい
例:50×50 mm、100×100 mm - 長方形:断面寸法が異なる
例:50×100 mm、75×150 mm
肉厚(t)
- 一般的には2.3 mm、3.2 mm、4.5 mmなどが標準的。
- 用途に応じて、薄肉(軽量化目的)から厚肉(高負荷対応)まで選択可能。
長さ
- 標準長さは6,000 mmが多いが、特注で異なる長さも可能。
材質
STKR材質の例:
- STKR400:引張強度400 MPa以上
- STKR490:引張強度490 MPa以上
強度が異なる材質が用意されており、用途に応じた選定が可能。
角パイプの選定ポイント
角パイプを選定する際には、以下の要素を考慮します:
必要な強度と剛性
- 構造物の使用環境や荷重条件に応じて、STKR400やSTKR490などの適切な材質を選択します。
- 静的荷重や動的荷重の条件を評価し、断面積や肉厚を決定します。
軽量化の必要性
- 軽量化が重要な場合は、肉厚を薄くするか、長辺と短辺の比率を調整します(例:長方形断面)。
- 軽量化により、材料費の削減や取り扱いの容易化が期待できます。
加工性
- 溶接部の強度を確保する必要がある場合、適切な溶接性を持つ材質を選びます。
- 穴あけや曲げ加工が多い場合、加工性の良いSTKR400を採用すると効率的です。
コストパフォーマンス
- 材料費と加工費のバランスを考慮し、必要以上に高強度の材料を選ばないようにします。
環境条件
- 屋外使用や腐食環境では、表面処理(防錆塗装やメッキ)が必要になる場合があります。
- 耐候性を考慮して選定することが重要です。
角パイプの用途例
角パイプは、以下のような用途で幅広く使用されています:
- フレーム構造
- 機械のフレームや支柱として使用され、剛性が求められる部分で活躍。
- 建築構造物
- ビルや倉庫の骨組みとして採用。
- 輸送機器
- トラックの荷台や自転車のフレームなど。
- 治工具や架台
- 生産設備や実験装置の架台として利用。
まとめ
角パイプ(STKR)は、機械設計や建築設計において非常に汎用性の高い材料です。規格化された寸法と材質が豊富であるため、用途に合わせた最適な選定が可能です。
選定時には、強度、加工性、軽量化、環境条件などを総合的に評価し、適切な断面寸法と材質を選びましょう。また、防錆対策や表面処理の計画も重要なポイントです。角パイプを効果的に活用することで、設計の効率と信頼性を向上させることができます。
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