精密な位置決めや、高精度な繰り返し位置の再現性が求められる場面では、
「ストリッパーボルト」の活用が非常に効果的です。
一般的なボルトと構造が異なり、
締結と位置決めの両立ができるため、
金型・治具・精密機構の設計において重宝されます。
この記事では、ストリッパーボルトの基本構造から、
設計上のメリット・使い方・注意点まで、初心者にもわかりやすく解説します。
ストリッパーボルトとは?
ストリッパーボルトとは、先端に段付きのガイド部(軸部)を持ち、
一部だけにねじが切られている特殊なボルトです。
主に金型や治具で使われる、
「位置決め兼締結用の高精度ボルト」と理解するとよいでしょう。
ストリッパーボルトの構造と特徴
| 部位 | 概要 |
|---|---|
| 軸部(ガイド部) | 精密な外径(H7相当など)で、 穴とのすきまを最小限にし、位置決め機能を果たす。 |
| ねじ部 | 通常のボルトのように締結力を発揮する。 |
| 肩部(段差) | 部品との接触面。座面として荷重を受ける。 |
図面上では、段付きシャフトとねじを組み合わせたような形状をしています。
なぜ精密な位置決めに向いているのか?
ストリッパーボルトの軸部は、
高精度の円筒面(例:φ10 H7)になっており、
対応する穴にほぼガタなく挿入されます。
これにより、以下のような精度面でのメリットがあります。
高い位置決め精度
位置決めピンと同様のガイド効果が得られ、
±0.01mm程度の精度で繰り返しの組み立てが可能です。
位置ズレ防止
せん断荷重に対しても軸部が抵抗するため、
ボルト単体よりも横ズレしにくい構造です。
締結と位置決めを1本で兼用
通常は「位置決めピン+締結ボルト」と分けて使う設計が多いですが、
ストリッパーボルトは1本でその両方を実現します。
ストリッパーボルト・ショルダーボルト・リーマボルトの違いと使い分け
精密な位置決めに使われる3種類のボルト
機械設計では、高精度な位置決めやスムーズなスライド機構を実現するために、
特殊なボルトを使うことがあります。
代表的なのが次の3つです。
▶ ストリッパーボルト
▶ ショルダーボルト
▶ リーマボルト
名前は違いますが、基本的な用途はすべて同じで、
「位置決め」や「ガイド」を目的としています。
ただし、細かな形状や仕様の違いがあります。
以下で順番に解説していきます。
共通する用途:ガタのない精密な位置決めに使う
これらのボルトは共通して、ストレートな無ねじ部(首部)を持っており、
その部分を相手側のリーマ穴に差し込むことで、正確な位置決めを可能にします。
といったシーンで活用されます。
各ボルトの違い
ストリッパーボルト
ショルダーボルト
- 特徴
- 「ショルダー(肩)」と呼ばれる段差が明確で、
ねじ部より太い無ねじ部(肩部)を持つ - 首部が公差付きなことが多く、高精度の用途がメイン
- 「ショルダー(肩)」と呼ばれる段差が明確で、
- 主な用途
- メリット
リーマボルト
- 特徴
- 首部がリーマ加工された穴にピッタリ嵌まるように
精密公差で仕上げられている - 精密な「H7」公差の穴にフィットする仕様が多い
- ストリッパーボルトに近いが、より精密な位置決めに特化している
- 首部がリーマ加工された穴にピッタリ嵌まるように
- 主な用途
- メリット
用途は同じ、精度と形状で使い分けよう
ストリッパーボルト、ショルダーボルト、リーマボルトはいずれも
「位置決め用途で使われる特殊ボルト」で、役割は同じです。
用途に応じて最適なボルトを選ぶことで、
精度の高い機械設計が実現できます!
使用シーン・活用例
| 使用シーン | 具体例 |
|---|---|
| 金型部品の精密な取付 | 上型・下型の位置決め兼締結 |
| 組立治具の再現性向上 | 部品交換やメンテ後の繰り返し位置精度が必要な治具 |
| 機構部品の固定 | 精密プレート、スライド部のガイド付き固定 |
| センサー・カメラなどの位置出し | 小型で微小ズレが致命的な機器の固定用に有効 |
設計時の注意点
穴径と公差に注意
- 軸部はh7・g6公差で設計されることが多く、
対応する穴側はH7/g6などのすきまはめを推奨。 - 穴加工精度が悪いと、位置決め効果が発揮できません。
軸長と有効ねじ長さを確認
- ガイド長さが十分でないと、位置決め効果が安定しません。
- ねじ込み長さ(2D以上)も確保しましょう。
材質と熱処理
- 摩耗や繰り返し使用を考慮し、
焼入れ品や高硬度ボルト(SCM・SK材など)の使用が望ましいです。
まとめ:ストリッパーボルトは「位置決め+締結」の最適解
| 特徴 | メリット |
|---|---|
| 段付き構造 | 精密位置決めが可能 |
| 軸部ガイド | 横ズレ・位置ズレを防止 |
| 一体構造 | ボルト1本で完結、部品点数削減 |
| 高精度 | ±0.01mm級の再現性も可能 |
ストリッパーボルトは、
「ただの締結」から一歩進んだ精密設計」を可能にする重要な要素です。
機構の剛性・精度を求める場面では、ぜひ積極的に検討してみてください。





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