機械設計で材料を選ぶ際、「強度」や「コスト」だけでなく、法的・規格的な要件を満たしているかどうかもとても大切です。これらの基準を無視してしまうと、製品が出荷できなかったり、事故やトラブルの原因になることがあります。
以下では、代表的な基準や規格について紹介します。
よく使われる基準・規格
JIS(日本産業規格)
- 日本国内で広く使われる材料や寸法、性能などの標準規格。
- 例)S45C、SS400などの材料名称はJISで定義されています。
- ポイント:国内での製造や取引には必須レベルの基本規格。
ISO(国際標準化機構)
- 世界中で共通の設計基準を定める国際規格。
- 多国籍取引やグローバル展開する製品において重要。
- 例:ISO 2768(一般公差)などは海外製品設計に必須。
RoHS(ローズ指令)
- 「有害物質の使用制限」に関するEUの法規制。
- 電子・電気製品に含まれる鉛やカドミウム、水銀などの特定有害物質の使用を制限。
- ポイント:RoHS非対応の材料を使うと、ヨーロッパで製品が販売できなくなる場合も!
RoHSで制限される代表的な物質(※RoHS2対応)
物質名 | 上限値(重量比) | 主な用途・問題点 |
---|---|---|
鉛(Pb) | 0.1% | はんだや塗料に使用、神経毒性がある |
カドミウム(Cd) | 0.01% | メッキや顔料に使用、発がん性あり |
水銀(Hg) | 0.1% | スイッチや蛍光灯に使用、毒性が高い |
六価クロム(Cr⁶⁺) | 0.1% | 防錆処理に使用、強い酸化性がある |
PBB・PBDE | 0.1% | 難燃剤として使用、環境ホルモンの疑い |
※現在はさらに4種類のフタル酸エステル類も追加されています(RoHS2対応)
なぜRoHSが重要なのか?
- ヨーロッパで製品を販売するにはRoHS対応が必須!
- 輸出時に証明書や材料証明の提出が求められることがある
- 違反すると、販売停止や罰則のリスクがある
設計者が注意するポイント
材料・部品の選定時にチェック
- ネジや端子、樹脂、塗装などにも有害物質が含まれていないか確認
- 「RoHS対応品」と明記された部品や材料を選ぶのが基本
材料証明書(RoHS適合証明書)を保管
- 部品メーカーから発行されるRoHS適合証明書を製品ごとに管理
- 社内の品質保証部門と連携することも重要です
材料変更のときは再確認を!
- 材料や仕入先を変えると、非RoHS材料になる可能性もあるため注意が必要
RoHSは「環境と製品の信頼」を守る大切なルール
RoHSは、製品に含まれる人体や環境に有害な物質の使用を制限するルールです。
とくに電子・電気製品を扱う設計者は、RoHSを理解して、材料や部品の選定段階から意識することが大切です。

はじめ
「知らなかった」では済まされない時代だからこそ、早めに知っておきたい基礎知識です。
なぜ守らないといけないの?
🚫製品が出荷できない・輸出できない
🚫法的責任を問われるリスクがある
🚫社内外の信頼を失う
🚫リコールや修理コストなど、大きな損失につながる
設計者としての対応ポイント
- 材料表を作成するときは、JIS・ISO番号を記載
- 環境規制(RoHSなど)対象製品の場合は、材料の成分証明書を確認
- 海外展開する製品では、現地の法規制にも注意
まとめ:材料選定は「法的・規格」もセットで考える!
材料選定は、強度やコストだけでなく、JIS、ISO、RoHSなどの法的・規格的な基準を満たすことが大前提です。製品を安心して市場に出すためにも、こうした要件をしっかり理解して、正しい材料を選ぶことが設計者に求められています。
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