~液体や気体の流れを見える化するセンサー~
製造装置や機械設備の中で、液体や気体が「どれだけ流れているか」を正確に把握することは非常に重要です。
その流れの量を検出・監視するのが「流量センサー(フローメーター)」です。
機械設計者にとって、適切な流量センサーを選ぶことは、「工程の安定」「異常検知」「エネルギー管理」のために欠かせません。この記事では、流量センサーの基礎から種類別の特性、選定時の注意点までを詳しく解説します。
流量センサーとは?
流量センサー(flow sensor)は、液体または気体が「どれだけの量」「どれだけの速度」で流れているかを検出・出力するセンサーです。
測定方式の種類
測定方式 | 測定対象 | 特徴 |
---|---|---|
質量流量計 | 液体・気体 | 実際の質量を検出、温度や圧力の影響が少ない |
容積流量計 | 主に液体 | 体積ベースで検出、配管条件に依存 |
流速型 | 気体・液体 | センサー内部の流速から演算して流量を算出 |
主な流量センサーの種類と特性
熱式流量センサー(サーマル式)
📌 仕組み
加熱素子と温度センサーを内蔵し、流体による熱移動量から流量を計測。
✅ 特徴
- 小流量、微流量に強い
- 動作部がないため耐久性が高い
- 温度補正あり(気体測定に強い)
🔍 用途例
空気の流量制御、窒素・酸素などのガスモニタリング
電磁式流量センサー
📌 仕組み
導電性の流体が磁場を横切ると電圧が発生(フレミングの法則)。その電圧を検出して流量を計算。
✅ 特徴
- 可動部なし、摩耗が少ない
- 導電性流体に限定(蒸留水・油不可)
- 高粘度にも対応可能
🔍 用途例
冷却水ライン、薬液供給、上下水処理
コリオリ式流量センサー
📌 仕組み
振動するパイプに流体を通すと、質量流量に応じたコリオリ力が発生。それを検出。
✅ 特徴
- 質量流量を直接測定可能(精度が非常に高い)
- 温度・圧力変動に強い
- 高価でサイズが大きめ
🔍 用途例
高精度な液体充填、化学薬品の定量供給
タービン式流量センサー
📌 仕組み
流体によってタービンを回転させ、その回転数から流量を検出。
✅ 特徴
- 構造がシンプルでコストが安い
- 可動部あり → 摩耗や汚れに注意
- 粘性が高い流体には不向き
🔍 用途例
オイル・冷却水などの簡易管理、装置内組み込み
超音波式流量センサー
📌 仕組み
配管の外または中に取り付けたセンサーで、超音波の伝播時間差から流速を求める。
✅ 特徴
- 非接触計測が可能(衛生的)
- 配管の内側に触れないため清掃性◎
- 高価・設置にやや工夫が必要
🔍 用途例
食品・医薬品ライン、配管後付け計測
流量センサー選定時のチェックポイント
測定対象の種類
- 液体か?気体か?
- 導電性の有無(電磁式)
- 粘度・温度・腐食性の程度
使用環境
項目 | ポイント |
---|---|
温度範囲 | 高温流体や冷却水ラインでは耐熱性が必要 |
圧力条件 | 高圧ガスや負圧下で使用する場合は耐圧確認 |
接液材質 | 腐食性液体にはSUSやフッ素樹脂など耐食性を考慮 |
流量レンジと精度
- 最大流量・最小流量のレンジにセンサーが対応しているか
- 精度:±1%以内か、それ以上必要か?
- 微小流量(数mL/min)であれば熱式やコリオリ式が有利
出力仕様と接続方式
- アナログ出力(4-20mA / 0-5Vなど)
- パルス出力(タービン式など)
- 通信方式(Modbus、IO-Link、EtherNet/IPなど)
流量センサー選定時の注意点
- エア混入やキャビテーションがあると誤動作の原因に
- 粘性の高い液体ではセンサーの流路が詰まりやすい
- 清掃やメンテナンスが頻繁なラインでは、非接触式が有利
応用例・導入メリット
導入先 | 効果 |
---|---|
自動充填機 | 定量制御による精度向上、歩留まり改善 |
コンプレッサ管理 | エア消費量の可視化による省エネ |
化学プロセス | 有害・腐食性薬液の定量供給で安全性向上 |
工場ユーティリティ | 水・冷却水・エア・スチームの配管管理 |
「流体の流れを見えるようにすることで、装置の“内部の健康状態”がよくわかるようになります。

異常の予兆を検知したり、省エネにもつながるので、うまく使えば“守り”にも“攻め”にもなる優秀なセンサーです。」
流量と流速の違いとは?
~流量センサーの基礎知識~
機械設計や設備設計の中で、「流量」と「流速」という言葉はよく登場します。
どちらも「液体や気体の流れ」に関係する用語ですが、それぞれ意味が異なります。
本項では、流量センサーを理解する上で必須となる
👉 「流量」と「流速」の違い
👉 関係性・単位・使い分け
について、初心者の方にもわかりやすく解説します。
流速(りゅうそく)とは?
▶ 定義
「流速」は、液体や気体がどれだけの速さで流れているかを表すものです。
▶ 単位
通常は以下のような単位が使われます。
- m/s(メートル毎秒)
- cm/s(センチメートル毎秒)
▶ イメージ
水道管の中を水が「秒速1メートル」で流れていたら、流速は「1m/s」です。
流量(りゅうりょう)とは?
▶ 定義
「流量」は、一定時間内に流れる液体や気体の「量(体積 or 質量)」のことを表します。
▶ 主な種類と単位
種類 | 内容 | 単位(例) |
---|---|---|
容積流量 | 体積の流れ | L/min(リットル/分)、m³/h(立方メートル/時) |
質量流量 | 重さの流れ | g/s(グラム/秒)、kg/h(キログラム/時) |
▶ イメージ
水が1分間に20リットル流れていれば、流量は「20L/min」です。
流速と流量の関係
実は「流量」と「流速」は、管の太さ(断面積)を介して、密接に関係しています。
数式で表すと
【容積流量 Q(m³/s)】=【断面積 A(m²)】×【流速 v(m/s)】
💡つまり…
- 配管が太い(Aが大きい) → 同じ流速でもたくさんの流量が流れる
- 配管が細い(Aが小さい) → 同じ流速でも少ない流量しか流れない
具体例で比較
項目 | 太い配管 | 細い配管 |
---|---|---|
配管径 | 50mm | 10mm |
流速 | 1m/s | 1m/s |
流量 | 約117L/min | 約5L/min |
※どちらも同じ「1m/s」の流速ですが、配管が太ければ流量が圧倒的に多くなります。
なぜ流量センサーは「流速」だけでは足りないの?
一部の流量センサー(熱式・超音波式など)は、流速を測定し、そこから流量を計算しています。
ですが、「流速が分かっても、配管の断面積が分からないと流量は分かりません」。
そのため、実際の設計では以下のような情報を組み合わせて使います。
測定値 | どう使う? |
---|---|
流速(m/s) | 配管内の流れの勢い・摩耗や騒音の指標にも |
流量(L/min) | ポンプ能力や供給量、定量制御に直結 |
間違いやすいポイント
- 「速い=たくさん流れる」とは限らない
- 配管が細ければ流量は少ない
- 単位を混同しやすい
- m/s ≠ L/min
- 熱式センサーは「流速」測定型が多い
- 流量に変換には断面積が必要
違いをおさらい
用語 | 意味 | 単位 | 関係性 |
---|---|---|---|
流速 | 流れる「速さ」 | m/s | 流速 × 面積 = 流量 |
流量 | 流れる「量」 | L/min, m³/h | 流速に面積をかけて求める |

「配管のサイズや流体の性質に応じて、流量センサーの出力をどう使うかが設計のポイントです。“流速”と“流量”を正しく理解していないと、誤った選定や制御ミスにつながるので注意!」
まとめ
流量センサーは、液体・気体の流れを「見える化」する重要なセンサーで、機械設計や制御に欠かせない存在です。
測定対象の性質や条件に合わせて、方式(熱式・電磁式・超音波式など)を選定することが重要。
精度や出力方式、設置環境、コストバランスも考慮しながら最適なセンサーを選びましょう。
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