機械設計や金型設計の現場では、「切削工具」や「金型部品」など、
硬くて摩耗しにくい鋼材が求められる場面が多くあります。
そんなときによく名前があがるのが「SKS3」と「SK3」です。
どちらも「硬くて強い」材料ですが、
実は成分や特性、用途には明確な違いがあります。
この記事では、初心者でも理解しやすいように、
SKS3とSK3の違いと使い分けのポイントをわかりやすく解説していきます!
SK3とは?【炭素工具鋼】
SK3は、炭素含有量が高い工具鋼で、
日本工業規格(JIS)では炭素工具鋼の一種に分類されます。
SK3のメリット
安価で手に入りやすい
高い硬度と耐摩耗性
SK3のデメリット
焼き戻しによる靭性(粘り強さ)にやや難あり
耐衝撃性や複雑形状には不向き
SKS3とは?【合金工具鋼】
SKS3は、SK3にクロムやタングステンなどの
合金元素を加えた合金工具鋼です。
JISでは「合金工具鋼:SKSシリーズ」に分類されます。
SKS3のメリット
高硬度と高靭性のバランスが良い
破損リスクが低く、安全性が高い
寸法精度が要求される部品に適している
デメリット
SK3に比べて価格が高め
加工時にやや工具摩耗が大きい(硬いため)
SKS3とSK3の比較表
特性 | SK3(炭素工具鋼) | SKS3(合金工具鋼) |
---|---|---|
硬度(焼入れ) | ◎ 非常に高い | ◎ 非常に高い |
靭性(粘り強さ) | △ やや脆い | ○ 比較的強い |
耐摩耗性 | ○ 十分あり | ◎ 高い |
コスト | ◎ 安価 | △ やや高価 |
用途例 | 刃物、木工工具 | 金型、精密部品、プレス工具 |
材料選定のポイント
使用条件・目的 | おすすめ材料 |
---|---|
コスト重視 | SK3 |
高精度な金型、強い衝撃がかかる部品 | SKS3 |
焼入れ後の変形を避けたい | SKS3 |
耐摩耗性を優先したい | SKS3 |
SK3は中途半端な材料?
〜機械設計における材料選定の落とし穴〜
機械設計において材料選定は非常に重要なステップです。
中でも「硬さ」と「コスト」のバランスが取れているように見える
SK3(炭素工具鋼)は、手軽に選ばれることが多い材料です。
しかし実際には、
「中途半端な材料」として扱われることがあるのをご存知でしょうか?
本項では、なぜSK3が“中途半端”とされるのか、
その理由と注意点についてわかりやすく解説します。
なぜ“中途半端”と言われるのか?
靭性が低く、割れやすい
SK3は炭素量が多く、焼入れで高硬度が出せる反面、
靭性(粘り強さ)が低く、割れやすいのが弱点です。
強い衝撃や繰り返し荷重に対しては破損しやすく、
設計の自由度が制限されてしまう場面も。
寸法安定性が悪く、精密部品に不向き
熱処理後に歪みや寸法変化が起こりやすいため、
精密な金型部品やゲージ部品には使いにくいという課題があります。
耐摩耗性もそれなり
焼入れをすればある程度の摩耗には耐えられますが、
SKS3やSKD11のような高耐摩耗材料に比べると見劣りするため、
長寿命設計には向きません。
コストは安いが、性能差も小さくない
確かにSK3は安価ですが、
少しコストをかければより靭性や耐摩耗性に優れた
SKS3や合金工具鋼を選べることが多く、
結果的にコスパが悪くなる可能性もあります。
SK3を選んでも良いケース
もちろん、SK3が悪い材料というわけではありません。
以下のような条件がはっきりしている場面では有効です。
迷ったら他材も検討すべき
SK3は「安い・硬い」が特徴の材料ですが、
耐久性・精度・安全性の面では不安要素が多く、
結果的に中途半端な材料となることも。
設計の目的が曖昧なままSK3を選んでしまうと、
後から割れ・摩耗・精度不良といった問題に直面するリスクがあります。
代替候補の例
用途 | おすすめ代替材料 |
---|---|
高精度な金型部品が必要な場合 | SKS3、SKD11 |
高耐摩耗性が求められる場合 | SKD11、SKH51 |
コスト重視+靭性も少し必要 | S50C、S55C |
小型部品や焼入れ不要な部品 | S45C、NAK55 |
材料選定では「価格」だけでなく、
使う場面・求める性能・寿命を明確にしておくことが重要です。
SK3は硬さと価格のバランスが取れているようで、
実は用途が限定される“中途半端な材料”

靭性・寸法精度・耐摩耗性が求められる場合は、
他の材料を検討した方が確実。
SKS3とSKD11の比較検討も重要!
―機械設計での材料選定に迷ったら―
機械設計において、高硬度・高耐摩耗性を求める部品では
「SKS3」や「SKD11」といった工具鋼がよく使われます。
しかし、似たように見えるこれらの材料にも
はっきりとした違いがあり、
適切に選ばないと性能不足やコストオーバーの原因になります。
本項では、SKS3とSKD11の特性の違いと選定時のポイントについて、
初心者にもわかりやすく解説します。
SKD11の特徴(冷間ダイス鋼・合金系)
特性 | 内容 |
---|---|
硬さ | HRC60〜62程度(焼入れ後) |
靭性 | SKS3より比較的粘り強い |
耐摩耗性 | 高い(Cr成分が多く、長寿命) |
寸法安定性 | 熱処理による変形が少ない |
加工性 | 硬くて加工が難しい |
コスト | やや高価 |
SKD11のメリット
寸法が安定し、精密な金型部品に向いている
高い耐摩耗性で長寿命化が図れる
SKD11のデメリット
加工が大変(工具摩耗も大きい)
材料費も加工費もコストは高くなりがち
迷ったら「寿命」と「精度」で判断しよう!
つまり、「短期使用」「コスト重視」「簡単な加工」であればSKS3を選び、
「高精度」「長寿命」「高負荷環境」ならSKD11が向いています。

材料選定は、設計目的・加工方法・使用環境を明確にした上で、
コストと性能のバランスを見極めることが重要です。
まとめ
✔ SK3は炭素工具鋼で、安価かつ高硬度だが、靭性や加工性にやや難あり。
✔ SKS3は合金工具鋼で、靭性・耐摩耗性・寸法安定性に優れ、精密部品や金型向け。
✔ コスト・精度・強度など、用途や要求性能に応じて使い分けることが重要です。
設計での迷いどころである材料選定。SK3とSKS3は似ているようで、
性能差は大きいので、製品の目的や使用環境を考慮して、最適な材料を選びましょう!
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