機械設計では、材料の硬さ(硬度) を知ることが非常に重要です。
硬度は「どれだけ傷がつきにくいか」
「どれだけ変形しにくいか」を示す指標であり、
用途に応じて適切な硬度の材料を選定する必要があります。
材料硬度にはいくつかの測定方法があり、
代表的なものとして ブリネル硬度(HB)、ロックウェル硬度(HRC)、
ビッカース硬度(HV)、ショア硬度(HS) があります。
それぞれの特徴を簡単に解説します!
材料選定における硬度の重要性
材料を選定する際に、「硬さ(硬度)」は非常に重要な要素の一つです。
硬度は、材料がどれだけ傷つきにくいか、変形しにくいかを示す指標であり、
耐摩耗性や耐久性に直結します。
たとえば、ギアやベアリングなどの摩耗しやすい部品には硬い材料が適しており、
一方で衝撃を受ける部品には適度な硬さと靭性を持つ材料が求められます。
材料の硬度を評価する方法はいくつかあり、
ブリネル硬度(HB)、ロックウェル硬度(HRC)、
ビッカース硬度(HV)、ショア硬度(HS) などが代表的です。
それぞれの試験方法は対象とする材料や用途が異なり、
適切な指標を選ぶことが機械設計の精度向上につながります。
この記事では、各硬度試験の特徴と使い分けについてわかりやすく解説します。
ブリネル硬度(HB):広い面積で測定する硬度
主に金属材料の硬度測定に使用
大きな球を押し当てて測定するため、比較的柔らかい金属に適用
表面の凹みの大きさから硬さを評価する
📌 使われる場面
💡 目安
ロックウェル硬度(HRC):硬い金属の評価に最適
試験片に鋼球やダイヤモンド円錐を押し込んで測定
測定方法が簡単で、素早く硬度を測れる
HRC(Cスケール)は焼入れ鋼の評価に使用される
📌 使われる場面
💡 目安
ビッカース硬度(HV):微細な硬度評価が可能
ダイヤモンドの四角錐を押し付けて測定する方法
非常に小さい部分の硬度評価ができるため、薄膜やコーティングの評価にも使われる
ロックウェル硬度よりも正確だが、測定に手間がかかる
📌 使われる場面
💡 目安
ショア硬度(HS):ゴム・樹脂の硬さを測定
バネ付きの金属ピンを押し付けて測定
ゴムやプラスチックの硬さを評価するために使われる
Dスケール(HS-D)は硬めの樹脂、Aスケール(HS-A)は柔らかめのゴムに適用
📌 使われる場面
💡 目安
4つの硬度の比較まとめ
| 硬度種類 | 測定対象 | 代表的な材料例 |
|---|---|---|
| HB(ブリネル硬度) | 軟らかめの金属 | SS400、アルミ合金、鋳鉄 |
| HRC(ロックウェル硬度) | 硬い金属 | 焼入れ鋼、工具鋼 |
| HV(ビッカース硬度) | 超硬・表面処理材 | 超硬合金、窒化鋼 |
| HS(ショア硬度) | ゴム・樹脂 | ウレタンゴム、シリコン |
どの硬度を使えばいい?
硬度の測定方法には様々な種類があり、それぞれ適した用途があります。
「硬度が高い=すべての面で優れている」わけではなく、
用途に応じて適切な硬度評価を行うことが重要です。
例えば、焼入れ鋼の評価にはHRC(ロックウェル硬度)が適しており、
ゴムや樹脂ならHS(ショア硬度)が使われます。

これらの違いを理解し、適切な硬度測定方法を選択することで、
より精度の高い材料選定が可能になります。
硬度の違いを理解しよう!~硬度の換算目安~
なぜ硬度の換算が必要なのか?
機械設計では、材料の硬度を確認する場面が多くあります。
しかし、硬度の測定方法にはいくつかの種類があり、
測定条件によって数値が異なるため、
異なる硬度の値を比較するのが難しいことがあります。
例えば・・・
「HRC 55の材料を使いたいが、仕様書にはHVしか書かれていない…」
という場面では、硬度の換算表を使って
HRCとHVの対応関係を把握することが重要です。
本項では、ブリネル硬度(HB)、ロックウェル硬度(HRC)、
ビッカース硬度(HV)、ショア硬度(HS)の換算の目安をわかりやすく解説します!
硬度換算の目安
HRC(ロックウェル硬度C)と HV(ビッカース硬度)の換算
一般的に、ロックウェル硬度(HRC)とビッカース硬度(HV)は比較的近い関係にあります。
| HRC(ロックウェルC) | HV(ビッカース) |
|---|---|
| 20 | 約 240 |
| 30 | 約 300 |
| 40 | 約 400 |
| 50 | 約 500 |
| 60 | 約 700 |
| 65 | 約 800 |
💡 ポイント
HRC 20以下の低硬度領域では、HRCよりHVの方が細かい評価が可能
HRC 60以上の超硬合金などでは、HVの方が適切な測定方法になる
HB(ブリネル硬度)と HRC(ロックウェル硬度C)の換算
ブリネル硬度(HB)は、HRCよりも広範囲の材料の硬度を測定できるのが特徴です。
| HB(ブリネル) | HRC(ロックウェルC) |
|---|---|
| 100 | なし(HRC適用範囲外) |
| 150 | なし(HRC適用範囲外) |
| 200 | 約 10 |
| 250 | 約 23 |
| 300 | 約 30 |
| 350 | 約 38 |
| 400 | 約 43 |
| 450 | 約 48 |
| 500 | 約 52 |
💡 ポイント
HBは比較的柔らかい金属(アルミ、鋳鉄、軟鋼など)の測定に適している
HRCは焼入れ鋼の評価に向いており、HBとHRCの換算は硬い金属に限られる
HB(ブリネル硬度)と HV(ビッカース硬度)の換算
HBとHVは、硬度が高くなるにつれてほぼ比例関係になります。
| HB(ブリネル) | HV(ビッカース) |
|---|---|
| 100 | 約 105 |
| 150 | 約 160 |
| 200 | 約 210 |
| 250 | 約 265 |
| 300 | 約 320 |
| 350 | 約 370 |
| 400 | 約 420 |
| 450 | 約 480 |
| 500 | 約 540 |
💡 ポイント
HVの方がHBより細かい硬度の測定が可能
HBは大きな面積の測定に向いているが、HVは小さな部分の硬度測定にも適している
ショア硬度(HS)と 他の硬度の換算(参考値)
ショア硬度(HS)は、ゴムや樹脂の硬度測定に使われるため、
金属の硬度とは換算が難しいですが、以下のような目安が知られています。
| HS(ショア硬度A) | HB(ブリネル) | HV(ビッカース) |
|---|---|---|
| 30 | 約 190 | 約 200 |
| 40 | 約 260 | 約 280 |
| 50 | 約 340 | 約 360 |
| 60 | 約 420 | 約 450 |
| 70 | 約 500 | 約 550 |
| 80 | なし(HB適用範囲外) | 約 700 |
| 90 | なし(HB適用範囲外) | 約 800 |
💡 ポイント
ショアD(硬質樹脂向け)とショアA(ゴム向け)があるため注意!
金属の硬度換算とは異なり、あくまで目安として使用する
硬度換算の注意点
硬度換算にはいくつかのポイントがあります。
🚫 正確な換算は難しい
硬度の測定方法によって、測定する荷重や形状が異なるため、
完全に一致する換算はできません。
換算表はあくまで「目安」として使いましょう。
🚫 材料によって変わる
同じ硬度でも、鋼、アルミ、樹脂などの
材料の種類によって異なる数値になることがあります。
材料の性質を考慮して換算を行いましょう。
🚫 正確な測定が必要な場合は直接測定する
換算表でおおよその値を把握するのは便利ですが、
重要な部品設計では、
実際に硬度試験を行って正確な値を確認することが推奨されます。
機械設計において、硬度の換算は異なる測定方法間で硬度を比較する際に役立つ知識です。
HRCとHVは比較的近い関係にあり、高硬度材料の評価に向いている
HBは軟らかい金属の測定に適しており、HRC・HVとの換算が可能
ショア硬度(HS)は金属とは異なるが、おおよその換算目安がある
換算はあくまで参考値であり、厳密な設計では直接測定を推奨

硬度の種類を理解し、適切に換算することで、
よりスムーズな材料選定が可能になります!
材料硬度を選定するときのポイント

硬度の測定方法は材料の種類や用途によって
適切なものを選ぶ必要があります。
機械設計では、求められる強度や耐摩耗性に応じた
硬度の材料を選定することが重要 です!
まとめ
硬度は材料の耐摩耗性や耐久性を左右する重要な指標であり、
適切な評価方法を選ぶことで、設計の精度や品質を向上させることができます。
✔ 金属の一般的な硬度測定
→ HB(ブリネル硬度)、HRC(ロックウェル硬度)
✔ 表面処理や微細な部品の硬度測定
→ HV(ビッカース硬度)
✔ ゴムや樹脂の硬度測定
→ HS(ショア硬度)
用途に応じた適切な硬度指標を理解し、
最適な材料を選定することで、
製品の性能や寿命を最大限に引き出すことが可能になります。
機械設計においては、硬度だけでなく
靭性や耐摩耗性など他の特性ともバランスを考慮することが重要です。
適切な硬度評価を行い、最適な材料選定を目指しましょう!



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