ヒンジピンは、回転運動を支える軸として多くの機械設計で使用されます。
特に、ドアやカバーの開閉部、リンク機構、
ロボットアームの関節部などに不可欠な要素です。
本記事では、ヒンジピンの基本的な特性や用途、
選定ポイントについて詳しく解説します。
ヒンジピンとは?
ヒンジピンは、2つの部品を回転可能に接続するための軸です。
一般的には、ヒンジ(蝶番)やリンク機構と
組み合わせて使用され、スムーズな回転運動を実現します。
ヒンジピンの主な役割
ヒンジピンの特性
耐摩耗性
ヒンジピンは回転運動を繰り返すため、
摩耗に強い材質が求められます。
通常、焼入れ処理を施した鋼材や
耐摩耗性の高いステンレス鋼が使用されます。
強度と剛性
ヒンジピンにはせん断荷重がかかるため、強度の高い材料が必要です。
一般的な材料とその特性は以下の通りです。
| 材質 | 特徴 | 関連記事はこちら |
|---|---|---|
| SS400 | 一般的な鋼材で コストが低いが強度は中程度 | SS400の特性と材料選定のポイント |
| S45C | 炭素鋼で、焼入れ処理を することで高強度化可能 | S45Cの特性と材料選定のポイント |
| SCM440 | クロムモリブデン鋼で、 高強度・高耐摩耗性 | SCM440の特徴と選定ポイント |
| SUS304 | ステンレス鋼で耐食性が高いが、 摩耗にはやや弱い | SUS304の特性と選定ポイント |
| SUS440C | マルテンサイト系ステンレスで、 高硬度・高耐摩耗性 | SUS440Cの特性と選定ポイント |
選定のポイント
軽負荷ならSS400やS45C
高負荷・長寿命が求められるならSCM440やSUS440C
クリアランスとすきま調整
ヒンジピンと軸穴の間には適切なすきま(クリアランス)が必要です。
適切なはめあい公差を設定することで、
スムーズな回転と適切な剛性を両立できます。
ヒンジピンの取付方法(固定方法)について詳しく解説
ヒンジピンは、回転運動を支える重要な軸として
多くの機械装置や構造物に使用されます。
適切な固定方法を選ぶことで、
スムーズな動作や耐久性の向上が期待できます。
本項では、ヒンジピンの代表的な取付方法(固定方法)について、
種類ごとの特徴や選定ポイントを詳しく解説します。
ヒンジピンの固定方法の重要性
ヒンジピンの固定方法を適切に選定することで、
以下のようなメリットがあります。
ピンの抜け防止(安全性の確保)
スムーズな回転運動の実現
部品の摩耗や変形の防止
メンテナンスや交換の容易さ向上
固定方法は、用途や負荷条件、
メンテナンスの頻度によって選ぶ必要があります。
ヒンジピンの主な固定方法と特徴
ヒンジピンの固定方法には、以下のような種類があります。
| 固定方法 | 特徴 |
|---|---|
| ボルト固定 | ピンに平面加工をし、ボルトで固定。 軽荷重向け。 |
| Cクリップ固定 | ピンに溝を設け、Cクリップで固定。 着脱が比較的容易。 |
| Eリング固定 | Cクリップより薄型で、簡単に装着可能。 軽荷重向け。 |
| 割りピン固定 | ピン穴に割りピンを通し、開いて固定。 確実に保持できる。 |
| ねじ付き固定(ナット止め) | ピンの端にねじを切り、ナットで固定。 高い固定力が得られる。 |
| スプリングピン固定 | スプリング性を持つピンを圧入し、抜けを防止。 簡単に抜けにくい。 |
| 圧入固定 | ピン径をわずかに大きくし、圧入で固定。 ガタつきが少ない。 |
| キー付きヒンジピン | 溝を設けてキーを入れ、ピンの回転や抜けを防止。 |
以下、それぞれの固定方法について詳しく解説します。
各固定方法の詳細解説
ボルト固定
Cクリップ(スナップリング)固定
割りピン固定
ねじ付き固定(ナット止め)
- 概要
- メリット
- デメリット
- 用途例
- 油圧シリンダーのピボット部
- 高荷重の回転機構
スプリングピン(ロールピン)固定
- 概要
- メリット
- デメリット
- 用途例
- 小型ヒンジ
- 軽負荷の回転部
ヒンジピンの固定方法選定ポイント
軽負荷・簡易装置向け
→ ねじ固定タイプ、Cクリップ、Eリング
高荷重・確実な固定が必要
→ 割りピン、ねじ付き固定
メンテナンス重視
→ Cクリップ、スプリングピン
高精度な固定
→ 圧入、キー付きピン
ヒンジピンの固定方法は、
用途や負荷条件によって最適なものを選ぶことが重要です。
適切な固定方法を選び、機械の安全性と耐久性を向上させましょう!
ヒンジピンの選定ポイント
荷重と強度を考慮する
ヒンジピンにはせん断荷重や曲げ荷重がかかるため、
負荷条件に応じた強度設計が必要です。
特に高荷重用途では、
直径を大きくするか高強度材を使用すること
で耐久性を向上できます。
使用環境に適した材質を選ぶ
使用環境によって、耐食性や耐摩耗性が求められます。
| 使用環境 | 推奨材質 |
|---|---|
| 一般的な機械装置 | S45C, SCM440 |
| 高湿度・屋外 | SUS304, SUS316 |
| 高摩耗環境 | SUS440C, 焼入れ処理品 |
取り付け・メンテナンス性を考慮する
- 定期的に交換が必要な場合
→ Cクリップ溝付きや割りピン固定が便利 - しっかり固定したい場合
→ ねじ付きタイプが有効
すきま調整と潤滑対策
- ブッシュやベアリングを併用することで摩耗を低減
- グリースやオイルを使用して潤滑性を向上
ヒンジピンの用途例
| 用途 | 具体例 |
|---|---|
| ドアやカバーの開閉機構 | 工場の安全カバー、機械装置の開閉部 |
| リンク機構 | ロボットアーム、クレーン機構 |
| 昇降装置 | 油圧シリンダーのピボット部 |
| 車両部品 | 建設機械、農機具の可動部 |
まとめ:ヒンジピン選定のチェックリスト
▶ 荷重条件を確認し、適切な強度の材質を選定する
▶ 使用環境(湿度・摩耗)に応じた材質を選ぶ
▶ 固定方式を用途に合わせて決める(ストレート・Cクリップ・ねじ付きなど)
▶ 適切なすきま(クリアランス)を確保し、スムーズな回転を実現する
▶ 潤滑対策(グリース・オイル)で長寿命化を図る
ヒンジピンは、単純な部品ながら
機械の動作に大きく影響を与える重要な要素です。
用途に適したヒンジピンを選定し、最適な設計を実現しましょう!






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