なぜ疲労破壊は突然起こるの?金属疲労のメカニズムと設計者が知っておくべき対策

材料選定

「昨日まで問題なく使えていたのに、突然ポッキリ折れた!」

そんな金属部品の破損は、疲労破壊(ひろうはかい)が原因かもしれません。
疲労破壊は前兆が少なく、突然壊れる
ため、非常に危険です。

この記事では、なぜ金属疲労は起こるのか? そして どのように防げるのか? を、初心者にもわかりやすく解説します。


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疲労破壊とは何か?

金属に繰り返し力(荷重)が加わると、やがて表面に微小なキズ(き裂)ができ、それが成長していきます。
そしてある日、突然「バキッ」と破断します。

これが「疲労破壊」です。

ポイントは以下の3つ

✅ 小さな力でも 繰り返されることで破壊につながる
✅ 見た目には 変化が分かりにくい
✅ 一度破壊が始まると 急速に進行する


疲労破壊のメカニズム

Step1:微小なき裂(クラック)の発生

金属表面の凹み、傷、応力集中(角や穴)などから小さなクラックが発生します。

Step2:クラックの成長

繰り返し荷重によって、そのクラックが徐々に成長していきます。
この段階では、目視ではほとんど確認できません。

Step3:突然の破断

ある日、クラックがある長さを超えると、急に破断します。
このときの破壊は、あっという間で一瞬です。


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疲労破壊の例:どんな場面で起こる?

  • 橋やクレーンの鉄骨
  • 自動車や飛行機の足回り
  • 工場設備の回転軸・ボルト
  • 溶接部やリブ周り

「どれも高い負荷がかかっていないように見えるのに、なぜ?」
実は、「繰り返し」使っていることがポイントです。


疲労破壊の対策は?


疲労破壊は防げます。
以下に代表的な対策を紹介します。


① 応力集中を避ける

角、穴、溝などは応力が集中するポイント。

対策

  • 角を丸くする(R処理)
  • 段差のつなぎにテーパをつける
  • 補強リブで分散させる

② 表面仕上げの向上

粗い表面は小さな傷が入りやすく、クラックの起点になります。

対策

  • 研磨やショットピーニング
  • 表面硬化処理(焼入れ、浸炭など)

③ 荷重の変動を減らす

荷重の大きさや向きが頻繁に変わると、疲労が進みやすくなります。

対策

  • 設計で荷重の変化を小さくする
  • ダンパーなどの吸収構造を取り入れる

④ 適切な材質選定

疲労に強い材質を選ぶことも有効です。

  • バネ用鋼(SUP材)
  • クロムモリブデン鋼(SCM材)

また、異種金属の接合部は特に応力集中しやすいため、慎重な材質と接合方法の選定が必要です。

材料選定についての記事はこちら

⑤ 定期的な点検と交換

どれだけ対策しても、疲労の進行を完全に止めるのは困難です。

対策

  • 定期的な非破壊検査
  • 一定期間ごとの交換や補修スケジュールの策定

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疲労破壊の兆候を見逃すな!

微細なひび・異音・たわみが危険信号!

金属部品が突然折れる「疲労破壊(ひろうはかい)」は、繰り返しの使用によるダメージの蓄積が原因です。

しかし、実は壊れる前に“サイン”が出ていることが多いのです。

本記事では、疲労破壊の兆候とその見抜き方を、初心者の方にもわかりやすく解説します。


疲労破壊の兆候はココを見よう!

疲労破壊は、完全に壊れる前に小さな異変を出しています。
これを見逃さなければ、重大なトラブルを防ぐことが可能です。

① 表面の微細なひび(クラック)

金属表面に髪の毛のように細いひび割れが現れたら要注意!
特に下記のような場所は、疲労クラックが発生しやすいです。

  • ボルト穴のまわり
  • 溶接の継ぎ目
  • 部品の角や段差部分
  • 繰り返し荷重のかかる接合部

🔍 見つけ方のポイント

  • 光を斜めから当てて観察
  • 手で触るとわずかな引っかかりを感じる場合も

② 異音や振動の発生

装置を使っていて、「ガタガタ」「カチャカチャ」といった異音が出始めたら、それは部品が劣化しているサインかもしれません。

  • 緩みや隙間ができる
  • 荷重のバランスが崩れる
  • クラックが振動によって広がる

🛠 対策

  • 異音がしたら即点検
  • 振動が増えていれば要注意

③ 使用年数に対しての変形やたわみ

明らかに無理な力が加わったわけでもないのに、部品が少し曲がっていたり、たわんでいることはありませんか?

  • 長期使用によって金属が劣化
  • 疲労により変形が進行
  • 内部でクラックが進んでいる可能性も

🔧 チェックポイント:

  • 装置の水平や隙間に違和感がないか
  • 同じ部品でも新品と比較して形が変わっていないか

疲労破壊を防ぐには「予防保全」がカギ!

兆候を見つけたとき、最も重要なのは「まだ壊れていないから大丈夫」と思わないことです。

以下のような対策を定期的に行いましょう

定期点検をスケジュール化

  • 使用時間や稼働サイクルに応じた点検
  • 目視・触診・音診を組み合わせて確認

非破壊検査(NDT)を導入

  • 浸透探傷検査(PT)
  • 磁粉探傷検査(MT)
  • 超音波探傷検査(UT)など

見えない内部の異常も検出可能!

トラブル事例を設計に活かす

✅ 過去に破損した部位を重点的にチェック
✅ 同じ構造や材料を使用している箇所を優先確認


小さな違和感が、大きなトラブルを防ぐ

疲労破壊は「突然壊れる」イメージがありますが、実はその前に微細な異常やサインが出ていることが多いです。

  • 表面の小さなひび割れ
  • 異音や振動
  • わずかな変形

これらの違和感に早く気づき、行動することで、安全性・稼働率・信頼性を大きく高めることができます。


はじめ
はじめ

「見逃さない目」と「対処する判断」が、機械設計・保全のプロとしての一歩です。
日々の点検・気づきが、大きな安心と安全につながります。


まとめ:疲労破壊は「静かに近づく爆弾」

✔ 疲労破壊は、目に見えないダメージが蓄積して起きる破壊
✔ 「突然壊れた!」の裏には、長期間の繰り返し荷重がある
応力集中を避ける設計・材質の選定・表面処理・定期点検がカギ

設計者が疲労破壊のリスクを知っているかどうかで、製品の安全性は大きく変わります。

「壊れてから対処」ではなく、「壊れる前に防ぐ」知識を、ぜひ設計に活かしてください!


はじめ
はじめ

設計において欠かせない材料の特性や用途を解説しています。
適材適所の選定をサポートします。

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