切削加工を行う上で、「どの材料を使うか」は非常に重要なポイントです。
材料によって加工しやすさ(被削性)やコスト、
仕上がりの精度、工具の摩耗度合いが大きく異なります。
この記事では、機械設計初心者の方でも理解しやすいように、
「材料選定で失敗しないための考え方」や
「コストダウンにつながる工夫」を10個のポイントにまとめてご紹介します。
1. 被削性の良い材料を選ぶ
被削性(ひさくせい)とは、「その材料がどれだけ切削しやすいか」を表す言葉です。
同じ形状でも、被削性の悪い材料を選ぶと
加工時間が長くなり、工具がすぐ摩耗し、コストが上がります。
代表的な被削性の比較(参考)
| 材料名 | 被削性 | 備考 |
|---|---|---|
| アルミ合金 | ◎ | 軽くて加工が速い。※種類によっては難しい場合もあり |
| SS400 | ○ | 一般的な構造用鋼 |
| S45C | ○ | 炭素量が多い分、切削加工や旋盤加工に優れいる。 |
| SUS304 | △ | 硬くて粘る、工具摩耗が激しい |
✅ 工夫ポイント
2. 黒皮材ではなくミガキ材を使う
鋼材の中には、表面に黒い酸化皮膜(黒皮)がついた「黒皮材」と、
表面が平滑な「ミガキ材」があります。
黒皮は安価ですが、表面が粗いため、
後工程で加工が必要になることが多いです。
✅ 工夫ポイント
3. 焼入れ材は避ける or 後加工とする
焼入れ済みの硬い材料(例:HRC60以上のSKD11など)は、
一般の切削工具では加工困難です。
特殊工具(超硬やCBN)が必要で、コストも上がります。
✅ 工夫ポイント
4. 表面処理しやすい材料を選ぶ
アルマイトや亜鉛メッキなどの表面処理を行う場合、材料との相性が重要です。
たとえば、SUS304は一般的なタフトライド処理では錆びやすくなります。
✅ 工夫ポイント
5. 高強度材は「必要な場所」に限定する
「強度が高い=優れた材料」というイメージがありますが、
高強度材ほど加工が難しくコストも高いです。
✅ 工夫ポイント
6. 樹脂材料も加工性を考慮する
樹脂は加工しやすそうに見えますが、
MCナイロンやPOM、PEEKなど、材質ごとに特性が大きく異なります。
切削時に変形したり、寸法が安定しにくい材料もあります。
✅ 工夫ポイント
7. 加工在庫がある材料を使う
材料には「在庫品」と「受注生産品」があります。
受注品は納期がかかり、加工会社での手配コストも増加します。
✅ 工夫ポイント
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8. 内部応力の少ない材料を選ぶ
金属は加工時に「内部応力」があると、切削後に反りや歪みが発生します。
特に大物部品や平板などは注意が必要です。
✅ 工夫ポイント
9. 材料コストと加工コストのバランスを見る
安い材料でも加工が難しければトータルコストは高くなります。
逆に、多少高価でも加工が早く済む材料なら、
結果的にコストダウンにつながることも。
✅ 工夫ポイント
まとめ:設計段階から材料選びを意識しよう!
材料選定は、単に「強度が足りるか」「錆びないか」だけではありません。
加工しやすさ・表面処理との相性・入手性・熱処理性・寸法安定性など、総合的に考えることが重要です。
✅チェックリスト
| 工夫ポイント | コンテンツ |
|---|---|
| 被削性の良い材料を選ぶ | アルミや軟鋼など、加工しやすい材料を優先 |
| 黒皮材ではなくミガキ材を使う | 精度や仕上げ面が必要ならミガキ材が有利 |
| 焼入れ材は加工前に使わない | 加工困難。必要なら後加工で対応 |
| 異種材料の混在を避ける | 一体化せず分割構造で対応 |
| 表面処理と材料の相性を考える | 錆・密着不良を防ぐため、材料の選定が重要 |
| 高強度材は必要部分だけに使う | 全体に使うとコスト増。部分使用や組合せで対応 |
| 樹脂材料の特性を理解して使う | 寸法安定性・摩耗性・耐熱性などに応じた選定 |
| 加工在庫がある材料を選ぶ | 汎用寸法なら納期・コスト面で有利 |
| 内部応力の少ない材料を使う | 精度が必要な大物部品には焼鈍材が効果的 |
| 材料コストと加工コストのバランスを見る | 単価ではなく、トータルコストで判断 |

材料の選び方ひとつで、加工のしやすさやコストは大きく変わります。
ぜひ設計の初期段階から、加工性・コスト・精度のバランスを
意識して材料を選んでみてください!



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