【オイルレス】無給油ブッシュの種類と選定ポイント【直動・回転】

機械要素

無給油ブッシュは、潤滑剤を使わずにスムーズな摺動を可能にする直動部品です。主に自潤性のある材料(ポリマー、焼結金属、複合材など)で構成されており、摺動面に潤滑成分を含んでいます。これにより、メンテナンスフリーで使用できる点が大きな特徴です。簡易な構造と高い耐摩耗性から、産業機械、自動化装置、食品機械などさまざまな分野で使用されています。

無給油ブッシュの特性

潤滑不要

自潤性を持つため、潤滑剤が不要であり、潤滑不足による故障のリスクを低減します。

耐摩耗性

摺動面が耐摩耗性に優れており、長期間の使用が可能です。

環境適応性

潤滑油が使用できない環境(食品機械、クリーンルームなど)や粉塵が多い環境に適しています。

コストパフォーマンス

構造が簡素なため製造コストが低く、初期投資を抑えられます。

静音性

金属同士の接触音が少なく、静音性が求められる用途に適しています。

選定のポイント

無給油ブッシュを選定する際には、以下のポイントに注意が必要です。

  1. 荷重と速度
    • 軽荷重・中速の運動に適しています。重荷重や高速運動には、リニアガイドやリニアブッシュの選択を検討する必要があります。
  2. 温度条件
    • ポリマー系の無給油ブッシュは高温環境に弱いため、使用温度を確認します。高温環境では焼結金属系や複合材系が適します。
  3. 摺動距離
    • 長距離の運動よりも短距離での往復運動に適しています。
  4. 環境条件
    • 粉塵、水、食品環境などに応じて適切な材料を選ぶ必要があります。
  5. コスト
    • 使用頻度や耐久性を考慮し、トータルコストを最適化します。

設計時のポイント

軸のはめあい

  • 軸と無給油ブッシュのクリアランスは、適切な摺動を確保するために重要です。
  • 設計時に推奨されるクリアランス値を確認し、軸径を調整してください。
  • 一般的に、過剰なクリアランスはガタつきを引き起こし、摩耗を促進します。

ハウジングのはめあい

  • 無給油ブッシュを固定するためのハウジングとのはめあいは、圧入が基本です。
  • 推奨されるはめあい公差(例:H7/r6)を守ることで、確実な固定と適切な応力分散を実現します。

ねじによる回り止めと抜け止め

  • 高い振動や回転が発生する環境では、無給油ブッシュが回転したり抜けたりする可能性があります。
  • この場合、ブッシュのフランジ部分や本体にねじ止め加工を施すことで、回り止めや抜け止め対策を行います。
  • 特に、負荷が高い場合や頻繁な動作が求められる場合は、ねじ固定が有効です。

注意点

潤滑不要の特性を過信しない

自己潤滑層が摩耗すると性能が低下するため、寿命を超えて使用しないようにしてください。

取り付け時の精度

ハウジングの寸法精度や圧入方法が不適切だと、取り付け時にブッシュが破損することがあります。


無給油ブッシュの種類

無給油ブッシュは、その材料や構造によって以下のような種類に分けられます。それぞれに特性があり、用途に応じた選定が必要です。

金属系無給油ブッシュ

金属基材に潤滑剤を含ませたタイプで、一般的には焼結金属が使用されます。

  • 特性:
    • 優れた耐摩耗性と耐熱性を持つ。
    • 高荷重や中温度の環境に適している。
    • 金属製のため剛性が高い。

複層系無給油ブッシュ

金属基材に樹脂や潤滑剤をコーティングした複層構造のブッシュです。

  • 特性:
    • 金属の強度と樹脂の自潤性を併せ持つ。
    • 高荷重・高温環境に対応可能。
    • コストパフォーマンスが良い。

樹脂系無給油ブッシュ

樹脂材料(ポリマー)で構成された軽量なタイプで、自潤性に優れています。

  • 特性:
    • 非金属のため耐腐食性に優れる。
    • 軽荷重・低速用途に適している。
    • 静音性が高く、クリーン環境に適合。

各種類の比較表

種類耐荷重耐熱性耐摩耗性耐腐食性用途
金属系中~高重荷重用途
複層系中~高中~高汎用用途
樹脂系低~中低~中軽荷重用途

選定のポイント

  • 高荷重や高温環境では「金属系」または「複層系」を選定。
  • 耐腐食性や軽量性が求められる場合には「樹脂系」が適している。
  • 使用環境(清浄度、湿度、粉塵など)や運動条件(速度、摺動距離)を考慮することが重要。

無給油ブッシュとリニアブッシュの比較

機械設計において、回転運動や直線運動をスムーズに行うために使用される部品としてブッシュがあります。その中でも、無給油ブッシュは潤滑が不要でメンテナンスが簡易であり、幅広い用途で使用されています。一方、リニアブッシュは精密な直線運動に特化した構造を持ち、リニアガイドと並んで選択肢となる部品です。本項では、無給油ブッシュとリニアブッシュの特性や使い道を比較し、それぞれの用途における選定ポイントを解説します。


無給油ブッシュの特性

無給油ブッシュは、自己潤滑性を持つ素材(例:オイル含浸ブロンズや樹脂材など)を使用しており、潤滑剤の補給が不要です。

主な特徴

  • 潤滑不要: 内部に含まれる潤滑成分により、長期間にわたりスムーズな動作を維持。
  • メンテナンス性: 潤滑の追加が不要なため、保守の手間が大幅に軽減。
  • 耐環境性: グリースやオイルが使用できない環境(食品製造ラインや粉塵環境)で活躍。
  • 運動種類: 回転運動や低速の直線運動に対応。
主な用途
  • 摺動部品の支持やガイド(例えば、プレス機や産業機械の軸受部)。
  • 食品加工機械、医療機器などの潤滑が制限される環境。

リニアブッシュの特性

リニアブッシュは、軸(シャフト)を使用して直線運動を実現するための軸受部品で、ボールを内蔵しています。

主な特徴

  • 高精度直線運動: ボールが摩擦を大幅に軽減し、高精度の直線運動が可能。
  • 摩擦係数の低さ: 滑りではなく転がりによる運動のため、負荷が小さい。
  • 軽量設計可能: 材料や構造次第で軽量化が容易。
  • 制約: シャフトの直線性や剛性が必要。
主な用途
  • CNCマシンや3Dプリンターの直線ガイド。
  • 精密機械、半導体製造装置の直線運動部。

無給油ブッシュとリニアブッシュの比較

項目無給油ブッシュリニアブッシュ
運動種類回転運動、低速の直線運動高精度な直線運動
潤滑の必要性不要(自己潤滑)必要(定期的なグリース供給が推奨)
摩擦係数やや高い非常に低い
耐環境性高い(粉塵や水分の影響を受けにくい)やや低い(粉塵や異物がベアリングに影響する可能性あり)
荷重高荷重に対応可能中~高荷重に対応
直線精度中程度(シャフトの精度に依存)高精度
メンテナンス性メンテナンスフリーグリース注入が必要
コスト一般的に低コスト比較的高コスト

使い分けのポイント

無給油ブッシュが適する場合

  • 潤滑剤の使用が制限される環境(食品、医療分野など)。
  • メンテナンスの手間を減らしたい用途。
  • 高荷重かつ回転運動や緩やかな直線運動が求められる場面。

リニアブッシュが適する場合

  • 精密な直線運動が必要な場合。
  • 軽い負荷でスムーズな直線運動を実現したい場合。
  • 高速運動や低摩擦が求められる環境。

無給油ブッシュとリニアブッシュは、用途や運動の種類、環境条件に応じて使い分けるべきです。無給油ブッシュは潤滑不要で耐環境性が高く、メンテナンスを簡素化できるため、特に産業用機械の支持部に向いています。一方、リニアブッシュは直線運動を精密に制御したい場面で不可欠な部品であり、高速かつ正確な機械動作が必要な用途に最適です。設計時にはこれらの特性を理解し、使用環境や要求性能に合った選定を行うことが重要です。


主なメーカー

オイレス工業株式会社     メーカーページはこちら

三協オイルレス工業株式会社  メーカーページはこちら

まとめ

無給油ブッシュは、潤滑剤を使用できない環境やメンテナンスの手間を減らしたい場合に非常に有効な直動部品です。潤滑不要で耐久性が高いため、食品機械やクリーンルームなど特定の環境条件下で特に活躍します。選定時には、荷重、速度、温度条件、環境要因を考慮し、用途に合った材料と仕様を選ぶことが重要です。適切な選定により、効率的で信頼性の高い機械設計を実現することができます。


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