機械設計において最も多く使われる鋼材のひとつが「SS400」です。
手に入りやすく、加工性も高いため、さまざまな形状で広く利用されています。
しかし、その一方で「SS400ならどれも同じ」と安易に考えてしまうと、
思わぬ落とし穴に遭遇することもあります。
特に、板厚や幅の規格寸法を正確に把握していないと、
加工時の干渉や組立時のズレ、強度不足といった問題が発生しかねません。
本記事では、SS400の基本的な材質特性に触れつつ、
SS400ミガキ材の代表的な規格寸法についてわかりやすく解説します。
設計段階でのトラブルを未然に防ぐために、
SS400の「寸法の標準」を正しく理解しておきましょう。
これから機械設計を始める方、
あるいは実務で材料手配を行っている方にとって、
実用性の高い知識となるはずです。
代表的な規格寸法【SS400・ミガキ材】
| 板厚 (mm) | 幅(mm) | |||||||||
| 3 | 13 | 16 | 19 | 22 | 25 | 32 | 38 | 50 | ||
| 4.5 | 13 | 16 | 19 | 22 | 25 | 32 | 38 | 50 | 65 | 100 |
| 6 | 9 | 12 | 16 | 19 | 22 | 25 | 32 | 38 | 50 | 60 |
| 65 | 75 | 100 | 150 | 200 | 250 | 300 | ||||
| 9 | 12 | 16 | 19 | 22 | 25 | 32 | 38 | 50 | 65 | 75 |
| 100 | 125 | 150 | 200 | 250 | 300 | |||||
| 12 | 16 | 19 | 22 | 25 | 32 | 38 | 50 | 65 | 75 | 100 |
| 125 | 150 | 200 | 250 | 300 | ||||||
| 16 | 19 | 22 | 25 | 32 | 38 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 |
| 150 | 200 | 250 | 300 | |||||||
| 19 | 22 | 25 | 32 | 38 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 | 150 |
| 125 | 250 | 300 | ||||||||
| 22 | 25 | 32 | 38 | 50 | 65 | 75 | 100 | 125 | 150 | 200 |
| 300 | ||||||||||
ミスミで購入できる代表的なフラットバーの価格(参考)
2025年8月(現在)のミスミで購入できる
SS400フラットバー(ミガキ材:2m)の価格になります。
| サイズ(2m) | 価格(税別) | サイズ(2m) | 価格(税別) | サイズ(2m) | 価格(税別) |
| 3×25 | ¥1,261 | 9×16 | \2,551 | 12×16 | \3,257 |
| 3×32 | ¥1,927 | 9×19 | \2,931 | 12×19 | \3,827 |
| 3×38 | ¥2,191 | 9×22 | \3,382 | 12×22 | \4,327 |
| 3×50 | ¥2,768 | 9×25 | \3,805 | 12×25 | \4,789 |
| 6×32 | \3,265 | 9×32 | \4,640 | 12×32 | \5,946 |
| 6×38 | \3,836 | 9×38 | \5,386 | 12×38 | \6,937 |
| 6×50 | \4,797 | 9×50 | \6,815 | 12×50 | \8,854 |
| 6×65 | \6,038 | 9×65 | \8,682 | 12×65 | \11,487 |
| 6×75 | \6,865 | 9×75 | \10,093 | 12×75 | \13,121 |
| 6×100 | \9,039 | 9×100 | \13,359 | 12×100 | \17,439 |
| 6×125 | \11,403 | 9×125 | \16,610 | 12×125 | \21,757 |
| 6×150 | \13,671 | 9×150 | \19,897 | 12×150 | \27,183 |
| 6×200 | \20,623 | 9×200 | \28,417 | 12×200 | \37,096 |
| 6×300 | \34,000 | 9×300 | \46,990 | 12×300 | \64,413 |
| サイズ(2m) | 価格(税別) | サイズ(2m) | 価格(税別) | サイズ(2m) | 価格(税別) |
| 16×19 | \4,903 | ||||
| 16×22 | \5,574 | 19×22 | \6,487 | ||
| 16×25 | \6,200 | 19×25 | \7,229 | ||
| 16×32 | \7,751 | 19×32 | \9,088 | 22×32 | \15,796 |
| 16×38 | \9,100 | 19×38 | \10,845 | ||
| 16×50 | \11,726 | 19×50 | \13,804 | 22×50 | \24,040 |
| 16×65 | \15,046 | 19×65 | \17,670 | 22×65 | \30,658 |
| 16×75 | \17,219 | 19×75 | \20,247 | 22×75 | \35,335 |
| 16×100 | \23,938 | 19×100 | \28,018 | 22×100 | \46,555 |
| 16×150 | \35,485 | 19×150 | \41,711 | 22×150 | \68,741 |
| 16×200 | \51,288 | 19×200 | \59,967 | 22×200 | \93,345 |
| 16×300 | \80,449 | 19×300 | \98,955 | 22×300 | \164,161 |
機械設計において、部品の形状や強度だけでなく
「コスト感覚」を持つことは非常に重要です。
特に、SS400のミガキフラットバーのような汎用材料は、
設計段階で選定される頻度が高く、価格の把握が設計判断に直結します。
例えば、ミスミのオンラインカタログでは、
サイズや長さを指定するだけで即座に価格が表示されます。
これにより、設計者自身が「この寸法でいくらかかるか?」を
リアルタイムで確認でき、コストを意識した設計が可能になります。
「あとで調達部門が考えること」ではなく、設計段階から価格を見積もることで、
材料費の最適化
無駄な加工の削減
予算内での設計調整
といった判断がスムーズに行えます。

ミスミでの価格確認は、設計者にとって
“コスト感覚を養うツール”でもあるのです。
規格寸法とは
規格寸法とは、JISなどの規格で定められた材料の寸法です。
規格寸法は、材料の製造・流通を効率化し、
品質の安定化を図るために制定されています。
規格寸法を選定するメリット
🔍 入手性の高さ
規格寸法の材料は、多くのメーカーから販売されており、入手が容易です。
🔍 加工の容易さ
規格寸法の材料は、既製の工具や設備で加工できます。
🔍 コストの低減
規格寸法の材料は、大量生産されるため、コストが抑えられます。

規格寸法を選定するデメリット
🚫 選択肢の制限
規格寸法の材料は、限られた寸法しかありません。
設計の自由度が制限される場合があります。
🚫 無駄な材料
規格寸法の材料をそのまま使う場合、
余分な部分が発生する可能性があります。
規格寸法を選定する注意点
規格寸法の確認
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寸法公差
SS400ミガキ材の板厚と幅の寸法公差は「マイナス公差」が基本!
精密設計時の注意点とは?
SS400は、機械構造用炭素鋼材の中でもっとも
一般的に使用される材料のひとつです。
その中でも、ミガキ材(磨き材・冷間仕上げ材)は、
表面が滑らかで見た目も良く、
寸法精度が熱間圧延材(黒皮材)よりも優れているため、
機械部品や金型部品のベース材などに多く用いられています。
しかし、このSS400ミガキ材を使用する際に、注意すべき点があります。
それは、板厚や幅の寸法公差が「マイナス方向」に寄っているという点です。
本項では、ミガキ材における寸法公差の
考え方と注意点、実務での取り扱いのポイントを解説します。
寸法公差は「マイナス側」に寄るのが一般的
SS400ミガキ材の寸法は、
「板厚」や「幅」が公称寸法に対してやや小さめに仕上がっていることが多く、
いわゆる“マイナス公差”が適用されているのが一般的です。
多くの鋼材メーカーや流通業者では
「h13公差程度」に準拠した精度で供給されることが多いです。
つまり、「基準より小さい」寸法で仕上げられていることが基本です。
これは、ミガキ加工の特性上、仕上げ工程での材料削減が避けられないためです。
なぜマイナス公差なのか?
SS400ミガキ材の製造では、
冷間圧延や引抜きなどの加工によって仕上げ寸法が整えられます。
この過程で材料の表面を削るため、
どうしても規定寸法よりも小さめに仕上がる傾向があります。
そのため、ミガキ材では
「マイナス方向の許容差で寸法を保証する」方式が一般的になっています。
精密な公差が必要な場合は注意が必要
ミガキ材は黒皮材よりも精度が高いとはいえ、
“精密仕上げ材”ではありません。
もし、設計において±0.05mmや±0.02mmといった
高精度の寸法公差が求められる箇所にミガキ材を使用する場合、
そのままの使用はリスクが高いと言えます。
対策として考えられる方法
寸法公差を正確に把握したい場合はメーカー確認が必須
ミガキ材の公差は、
流通業者やメーカーによって微妙に異なることがあります。
とくに海外材やノーブランド材の場合、
h13に準拠していないこともあるため、注意が必要です。
図面に寸法公差を厳密に記載する必要がある場合や、
組立や嵌合が重要な設計部品に使う場合は、
かならず以下のような確認を行いましょう。

▶ 材料メーカーの製品規格表を入手する
▶ 購入先に公差範囲を確認する
▶ 現物を実測して管理する
現場でよくあるトラブル事例
以下のようなトラブルは、
ミガキ材の寸法公差に関する知識不足から発生します。
このような事例は、「マイナス公差が当たり前」という知識がないと発生しやすいため、
特に若手設計者や購買担当者にとっては重要なポイントです。
SS400ミガキ材は「マイナス公差」を前提に使おう
SS400ミガキ材は、見た目がきれいで扱いやすく、
寸法も黒皮材に比べて安定している優れた材料です。
しかし、寸法が常に「小さめ」に仕上がっている点を
理解しておかないと、思わぬトラブルの原因になります。
多くはh13公差程度で仕上げられている
精密な寸法が必要な個所には向かない
正確な公差が必要な場合は、メーカーに確認を取ることが大切

設計や製作の現場でSS400ミガキ材を正しく使うためには、
「規格寸法と実寸の違い」を理解することが最初の一歩です。
ぜひ、現場でのトラブル回避に役立ててください。
機械設計における材料規格寸法:SS400の重要性
機械設計において、材料の規格寸法を正確に把握することは
設計の効率化やコスト削減、品質向上に直結します。
その中でも、SS400は汎用性が高く、幅広い用途で使用されるため、
その規格寸法を把握しておくことが特に重要です。
本項では、SS400の規格寸法に焦点を当て、
設計者が注意すべきポイントを解説します。
SS400の規格寸法を把握する重要性
規格寸法を把握しておくことで、設計時に材料の選定が迅速に行えます。
規格外寸法を採用すると、
特注加工が必要になり、納期やコストが増加します。
規格寸法内で設計を行うことで、
余分な加工コストを削減できます。
また、余剰材料を減らすことも可能です。
SS400は広く流通しているため、
規格寸法を把握していれば必要な材料を迅速に調達できます。
規格外寸法を選んだ場合、調達に時間がかかる可能性があります。
規格寸法内の材料は、JIS規格に準拠して製造されているため、
品質や強度が安定しています。
特注品では、品質がばらつくリスクが高まります。
注意点:規格寸法を活用した設計のコツ
📌 最適な寸法を選択する
材料を削減しすぎない寸法を選ぶことで、
強度を維持しつつコスト削減が可能です。
📌 加工性を考慮する
板材や形鋼を選ぶ際は、
加工後の形状や用途に応じて適切な寸法を選びましょう。
📌ストック材料を活用する
規格寸法は在庫として流通している場合が多いため、
設計段階で流通しやすい寸法を選ぶと調達がスムーズです。
機械設計初心者が最初に覚えるべきSS400のポイント
機械設計初心者にとって、SS400の規格寸法や特徴を理解することは非常に重要です。
以下は初心者が特に覚えるべきポイントです。
規格寸法と流通性
SS400は標準規格として広く流通しており、入手が容易です。
設計時には規格寸法を活用することで、材料選定がスムーズに進みます。
初心者は板材や形鋼などの基本的な規格寸法を覚えておくとよいでしょう。
適用用途の理解
SS400は、フレームや構造部品など、強度が必要な部品に適しています。
初心者は、どのような設計にSS400が最適であるかを理解しておくことで、
材料選定に役立てることができます。
加工性と溶接性
SS400は加工性と溶接性が良好なため、初心者にも扱いやすい材料です。
切削加工や溶接を伴う設計に向いている点を覚えておきましょう。
コストと経済性
SS400は他の材料と比べて価格が安く、コストパフォーマンスに優れています。
設計のコスト面を考慮する際に、SS400を優先的に検討することが基本となります。
規格書の確認方法
初心者はJIS規格やメーカーのカタログを確認し、
必要な寸法や特性を把握する習慣をつけることが重要です。

SS400の特徴をしっかり覚え、
実際の設計で活用する経験を積むことが重要です。
また、SS400以外の材料とも比較することで、
選定基準を徐々に広げていきましょう。
まとめ
SS400は、コストパフォーマンスと汎用性の高さから、
多くの設計で採用される材料です。
その規格寸法を正確に把握することで、
設計効率の向上、コスト削減、調達のスムーズ化が期待できます。
機械設計に携わる方は、
設計段階で規格寸法を意識し、最適な材料選定を行いましょう。




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