【軸要素を徹底解説】基礎知識と選定ポイントのまとめ

機械要素

機械設計において、軸は回転運動や直線運動を支える重要な要素です。適切な軸設計を行うことで、機械の性能向上や耐久性の向上につながります。本記事では、軸要素の基本から応用までを体系的に解説し、各種部品の特性や選定ポイントについてまとめました。

機械設計において軸要素の適切な選定と設計は、機械全体の安定性や寿命に直結します。本記事を通じて、軸設計に関する知識を深め、より良い設計を行うための参考にしてください。

スポンサーリンク

シャフトの基礎と選定ポイント

シャフトは、機械の回転運動を支える基本的な要素です。用途に応じて適切な種類を選定することが重要です。

シャフトの機能の選定ポイント

シャフトは機械の回転運動や直線運動を支える重要な要素であり、適切な選定が性能や耐久性に大きく影響します。シャフトの選定においては、以下のポイントを考慮することが重要です。

  • 材質の選定
    • S45CやSCM440など、用途に応じた強度や耐摩耗性を考慮
  • 表面仕上げ
    • ミガキ棒や研磨棒を選択し、摺動部の摩擦や寿命を最適化
  • 寸法と剛性
    • 必要なトルクや荷重を支えるための太さや長さを検討

適切なシャフトを選定することで、機械の安定した動作や寿命の延長が可能になります。

シャフトの選定ポイントについての詳細記事はこちら

回転軸(シャフト)の軸径の選定方法

軸径選定の基本的な考え方

シャフトの太さ(軸径)を決めるには、主に以下の2つの観点があります。

  1. 動力(トルク)から求める
    • モーターの出力と回転数から軸トルクを算出し、それに基づいて必要な軸径を決める方法。
  2. 負荷(外力や曲げモーメント)から求める
    • プーリやギヤの張力・反力によって発生する曲げモーメントを考慮する。
    • その強度に耐える軸径を決める方法。
回転軸の軸径計算についての詳細記事はこちら

ミガキ棒と研磨棒の違いと使い分けのポイント

ミガキ棒と研磨棒は、機械設計においてシャフトやガイドなどに使用される棒材ですが、それぞれの特性を理解し、適切に使い分けることが重要です。

  • ミガキ棒
    • 冷間引抜加工によって仕上げられた棒材で、寸法精度が高く、コストパフォーマンスに優れる
  • 研磨棒
    • さらに研磨仕上げが施された棒材。
    • 表面粗さが小さく、高い寸法精度が求められる用途に適する。
  • 用途の違い
    • ミガキ棒は一般的な回転軸や支持軸に使用される。
    • 研磨棒はリニアブッシュや高精度な摺動部に適する。
  • コストと性能のバランス
    • 要求される精度や摩擦特性に応じて適切な材料を選定し、コストと性能を最適化
はじめ
はじめ

適切に使い分けることで、機械の性能向上やコスト削減を実現できます。

片持ち軸の固定方法と設計ポイント

片持ち軸は、一方の端のみが固定され、もう一方が自由に動く構造の軸であり、適切な固定方法と設計を行うことが重要です。設計の際には以下のポイントを考慮する必要があります。

  • 固定方法の選定
    • 圧入、ボルト締結、支柱クランプの使用など、負荷条件に応じた固定方式を選択。
  • 曲げモーメントの対策
    • 片持ち軸はたわみが発生しやすいため、支持部を強化する設計が必要です。
  • 支持部の剛性確保
    • 固定部との接続部分は応力集中が発生しやすいため、適切なR処理や段付き軸を採用する。

適切な固定方法と設計を行うことで、片持ち軸の耐久性と安定性を向上させ、
機械全体の信頼性を高めることができます。

片持ち軸についての詳細記事はこちら

段付きシャフト設計の基本的な考え方

段付きシャフトの設計では、次の3つの観点が特に重要です。

  1. 部品の取付条件を満たす寸法設計
    • プーリ、ギヤ、ベアリングの内径に合わせた段付き部を設ける
    • はめあい(すきまばめ、しまりばめ)を考慮し、過不足ない寸法を設定
  2. 応力集中の回避
    • 段差部は応力集中が発生しやすいため、丸み(フィレットR)を設ける
    • 適切なR寸法を採用することで疲労破壊を防止
  3. 強度と加工性のバランス
    • 必要以上に大きな段差を避ける
    • 部品の着脱や加工性を考慮して設計する

1回転シャフトの特徴と活用法

1回転シャフトとは、機械の動作サイクルを1回転(360°)を基準として管理するために設定する回転軸のことです。一定の回転動作を繰り返すカム機構やロータリーインデックステーブル、クラッチを用いた駆動システムなどに多く用いられます。

  • 動作サイクルの基準
    • 回転軸の位置を常に一定の範囲(0°〜360°)で管理できる
  • タイミング制御をシンプルにできる
    • 回転角度を基準に動作を設定することで、設定ミスを防ぐことができます。
  • カム機構やセンサー制御に適してい
    • エンコーダやレゾルバと組み合わせることで、高精度な制御が可能になります。

適切な1回転シャフトを選定することで、機械の安定した動作や寿命の延長が可能になります。

1回転シャフトについての詳細記事はこちら

軸の締結と固定方法

シャフトを適切に固定し、動作を安定させるためには、適切な締結方法を選択する必要があります。

ストップリングとセットカラーの比較と特性

ストップリングとセットカラーは、シャフト上の部品の位置決めや抜け防止に使用される固定要素です。用途や必要な固定力によって適切な選定が求められます。

  • ストップリング(止め輪)
    • シャフトに溝を加工し、スナップリングなどを取り付けることで部品を固定
    • 軸方向の負荷に強く、コンパクトな固定が可能
    • 分解・組み立てが容易だが、溝加工が必要
  • セットカラー
    • シャフトに締め付けることで固定するリング状の部品
    • 溝加工が不要で取り付けが容易
    • 摩擦力で固定するため、大きな軸方向荷重には不向き
    • スラスト荷重の選定

適切な固定方法を選定することで、シャフト上の部品の確実な位置決めや、機械の安定した動作が可能になります。

ストップリングとセットカラーについての詳細記事はこちら

回転軸におけるボルト締結の工夫

回転軸のボルト締結は、軸方向のズレや空転を防ぐための重要な要素です。確実な締結を行うことで、機械の安定性や耐久性を向上させることができます。

  • シャフトに平面加工を施す
    • 六角穴付きボルトやセットスクリューを確実に固定するため、シャフトにフラット面を設ける
    • ねじの接触面積を増やし、締結力を向上
  • キー溝との併用
    • ボルトだけでなく、キー溝を設けることで、トルク伝達能力を向上
    • ボルトの緩みによる空転を防止
  • ロック剤やスプリングワッシャーの使用
    • ボルトの緩みを防ぐために、ねじロック剤やスプリングワッシャーを使用
    • 振動や衝撃が加わる環境でも安定した締結を維持

適切なボルト締結の工夫を施すことで、回転軸の安定性を高め、機械の性能を向上させることが可能になります。

ボルト締結についての関連記事はこちら

ヒンジピンの特性と選定ポイント

ヒンジピンは、2つの部品を回転可能に接続するための軸です。
一般的には、ヒンジ(蝶番)やリンク機構と組み合わせて使用され、スムーズな回転運動を実現します。

  • ヒンジピンの主な役割
    • 部品の回転軸として機能
    • 一定の範囲でスムーズな動きを実現
    • 荷重を分散し、軸受け部の摩耗を軽減

ヒンジピンは、単純な部品ながら機械の動作に大きく影響を与える重要な要素です。

ヒンジピンについての詳細記事はこちら
スポンサーリンク

軸受(ベアリング)の選定ポイント

軸受はシャフトを支え、摩擦を低減する重要な要素です。荷重の方向や用途に応じて適切なベアリングを選定しましょう。

軸受けにかかる荷重方向について

軸受け(ベアリング)は、シャフトを支えながらスムーズな回転運動を実現する重要な機械要素です。適切な軸受けを選定するためには、荷重の方向と特性を理解することが重要です。

シャフトは機械の回転運動や直線運動を支える重要な要素であり、適切な選定が性能や耐久性に大きく影響します。軸受けの荷重方向を考慮する際には、以下のポイントを押さえることが重要です。

  • ラジアル荷重(軸に対して垂直方向の荷重)
    • 回転運動中の外力やベルト、ギアなどによる力を受ける
    • 深溝玉軸受や円筒ころ軸受が適している
  • アキシアル荷重(軸方向の荷重)
    • シャフトの押し引きや、スラスト力が加わる場合に発生
    • スラスト玉軸受やアンギュラ玉軸受が適している
  • 複合荷重(ラジアル荷重 + アキシアル荷重)
    • ベルトやチェーン駆動、傾斜した取り付け位置などで発生
    • アンギュラ玉軸受や円すいころ軸受が適している
はじめ
はじめ

適切な軸受けを選定し、荷重方向を考慮した設計を行うことで、機械の寿命を延ばし、
安定した運転を実現できます。

荷重方向についての詳細記事はこちら

ボールベアリング・ローラーベアリング・スラストベアリングについて

ベアリングは、回転運動をスムーズに行うためにシャフトを支える重要な機械要素です。用途に応じて適切な種類のベアリングを選定することが、機械の性能や耐久性に大きく影響します。

シャフトは機械の回転運動や直線運動を支える重要な要素であり、適切な選定が性能や耐久性に大きく影響します。ベアリングの選定においては、以下のポイントを考慮することが重要です。

  • ボールベアリング(玉軸受)
    • 低摩擦で回転速度が高い用途に適する
    • ラジアル荷重や軽いアキシアル荷重に対応
    • 深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受などの種類がある
  • ローラーベアリング(ころ軸受)
    • 接触面積が広く、高荷重に強い
    • ラジアル荷重を主に受けるが、アキシアル荷重対応のタイプもある
    • 円筒ころ軸受、円すいころ軸受、ニードルベアリングなどがある
  • スラストベアリング(スラスト軸受)
    • アキシアル荷重を支えるために設計されたベアリング
    • 低速で高い推力がかかる用途に適する
    • スラスト玉軸受、スラストころ軸受などの種類がある
  • 適切なベアリングの選定
    • 使用環境や荷重方向に応じた種類を選ぶ
    • 高速回転ならボールベアリング。
    • 重荷重ならローラーベアリング。
    • アキシアル荷重ならスラストベアリングを選択。

適切なベアリングを選定することで、機械の安定した動作や寿命の延長が可能になります。

ベアリングユニットについて

ベアリングユニットは、ベアリングとハウジングが一体となった機械要素で、回転軸をスムーズに支える役割を果たします。特に、組み付けやメンテナンスが容易であり、広範な産業機械で使用されています。

  • 材質の選定
    • 鋳鉄製やステンレス製のハウジングを用途に応じて選択し、耐久性や耐食性を確保
  • 取り付け方式
    • フランジ形、ピロー形、テンション形など、設置環境に適した形状を選定
  • 軸の固定方法
    • セットスクリュー、偏心カラー、アダプタスリーブなど、シャフトとの結合方法を考慮
  • 潤滑管理
    • 密閉型グリース封入タイプや再潤滑可能なタイプを選択し、メンテナンス性を向上

適切なベアリングユニットを選定することで、機械の安定した動作や寿命の延長が可能になります。

ベアリングユニットについての詳細記事はこちら

リニア運動を支える軸要素

リニアブッシュやボールスプラインは、直線運動をスムーズに行うための重要な要素です。

無給油ブッシュについて

無給油ブッシュは、自己潤滑性を持ち、長期間メンテナンス不要で使用できる軸受部品です。
主に樹脂系や含油焼結金属、複合材などの素材が使われており、摺動部の摩耗を抑えながらスムーズな動作を実現します。

  • 潤滑不要
    • 自潤性を持つため、潤滑剤が不要であり、潤滑不足による故障のリスクを低減します。
  • 耐摩耗性
    • 摺動面が耐摩耗性に優れており、長期間の使用が可能です。
  • コストパフォーマンス
    • 構造が簡素なため製造コストが低く、初期投資を抑えられます。
はじめ
はじめ

適切な無給油ブッシュを選定することで、メンテナンスフリーな軸受機構を実現し、
機械の安定した動作や寿命の延長が可能になります。

無給油ブッシュについての詳細記事はこちら

リニアブッシュについて

リニアブッシュは、シャフト上を直線的に滑らかに移動するための軸受で、ボールを内蔵することで低摩擦かつ高精度な直線運動を実現します。

主に搬送装置や工作機械などで使用され、シャフトとの組み合わせにより高精度なガイド機構を構成できます。

  • 低摩擦
    • ボールがシャフトとの接触面で転がる構造のため、滑らかで軽い動作を実現。
  • コンパクトな設計
    • 小型で軽量な設計が可能であり、省スペースな機械設計に適します。
  • 高精度な直線運動
    • 高い位置決め精度が得られます。

適切なリニアブッシュを選定することで、高精度かつ低摩擦の直線運動が可能になり、
機械の性能向上や寿命の延長につながります。

リニアブッシュについての詳細記事はこちら

ボールスプラインについて

ボールスプラインは、スプラインシャフトの溝に沿ってボールが転がる構造を持ち、低摩擦で高精度な直線運動を可能にする軸受機構です。回転と直線運動を同時に行える特性を持ち、ロボットアームや搬送装置、精密機械などの高精度なガイド機構に使用されます。

  • 直線運動とトルク伝達の両立
    • トルクの伝達も可能で、ねじり剛性が高い。
  • 高精度・低摩擦
    • 摩擦が小さくスムーズな動作が実現します。
  • 高負荷容量と長寿命
    • 高負荷条件下でも安定した性能を発揮します。

適切なボールスプラインを選定することで、高精度かつスムーズな直線運動と回転動作を両立し、機械の性能向上や耐久性の向上につながります。

ボールスプラインについての詳細記事はこちら
スポンサーリンク

軸の締結要素とキー

シャフトと他の機械要素を確実に接続するために、キーやパワーロックなどの締結要素を適切に選定することが求められます。

キーについて

キーは、シャフトとハブ(歯車、プーリー、スプロケットなど)を締結し、回転運動を伝達するための重要な要素です。キー溝を加工することで、軸方向のズレを防ぎながら、トルクを効率的に伝達できます。

  • 動力伝達の仕組み
    • キー溝により摩擦ではなく機械的な接触で動力を伝達する。
  • 簡単な構造
    • 加工が容易でコストが低い。
  • 高い信頼性
    • 標準化されており、多くの機械で使用される。
  • 荷重対応
    • 中程度のトルク伝達に適している。

適切なキーを選定し、精度の高い加工と適切な締結方法を採用することで、安定したトルク伝達と機械の長寿命化を実現できます。

キーレスブッシングについて

キーレスブッシングは、シャフトとハブ(歯車、プーリー、スプロケットなど)をキー溝なしで締結するための要素で、摩擦力を利用してトルクを伝達します。キー溝加工が不要なため、設計やメンテナンスの自由度が高く、高精度な締結が可能です。

  • トルク伝達
    • キーレスブッシングは、摩擦力を利用してトルクを伝達します。
  • 位置調整の自由度
    • 軸と回転体の取り付け位置を自由に調整することができます。
  • 振動吸収と衝撃緩和
    • 軸と回転体の間で適度な弾性を持ち、振動や衝撃を吸収する効果があります。

キーレスブッシングを適切に選定することで、加工コストを削減しながら高精度な締結を実現し、機械の性能向上やメンテナンスの効率化が可能になります。


まとめ

軸要素は機械の回転運動や直線運動を支える重要な構成部品であり、適切な選定が機械の性能や耐久性に大きく影響します。シャフトやベアリング、ブッシュ、スプライン、締結要素など、それぞれの特性を理解し、用途に応じた適切な組み合わせを選ぶことが求められます。

選定時には、材質の強度や耐摩耗性、表面仕上げの精度、寸法や剛性、取り付け方法などを総合的に検討することが重要です。さらに、メンテナンス性やコスト、使用環境(温度、湿度、粉塵など)も考慮することで、より最適な設計が可能になります。

適切な軸要素を選定することで、機械の安定した動作を実現し、長寿命化やトラブルの防止に繋がります。設計段階で十分な検討を行い、最適な機械要素を選びましょう。


はじめ
はじめ

ボルトやナット、軸受け、ギアといった基本的な要素部品の機能と選び方を詳しく紹介します

コメント