S45Cは、炭素鋼(カーボン鋼)であり、
JIS規格で代表的な機械構造用炭素鋼の一つです。
炭素含有量が中程度の鋼材であり、
機械的性質と加工性のバランスが良いことから、
機械部品やシャフトなどの多様な用途に使用されています。
焼入れ・焼戻しなどの熱処理によって、
引張強度や硬度を調整できるため、
強度が求められる機械設計において広く採用されています。
以下に、S45Cの特性や選定時のポイントを詳しく解説します。
S45Cの特性

優れた機械的強度
中炭素鋼に分類されるため、適切な熱処理を施すことで、
高い引張強度と硬度を得ることができます。
焼入れや焼戻しによって、
強度を柔軟に調整できる点が、S45Cの大きな特徴です。
機械部品や構造材として、
強度や耐摩耗性が求められる箇所に多用されます。
熱処理による特性の向上
熱処理(焼入れ・焼戻し)を行うことで、
引張強度を大幅に向上させることができます。
焼入れ後には硬度が増加し、耐摩耗性が向上します。
焼戻しを行うことで、硬度のバランスを取りつつ、
材料の靭性(粘り強さ)を確保します。
シャフトやギアなど、摩擦や衝撃が加わる機械要素に最適です。
加工性の良さ
切削加工や溶接加工が容易な材料です。
特に、切削性が良好で、
旋盤やフライス盤などの機械加工に適しています。
焼入れ前の加工がしやすく、寸法精度の高い部品を作成することが可能です。
焼入れ後は硬度が増すため、加工が困難になる場合があります。
寸法変化と熱処理
熱処理を施すと強度や硬度が向上する一方で、
熱処理中に寸法変化が生じる可能性があります。
特に焼入れ後の変形には注意が必要であり、
寸法精度が要求される部品では、
仕上げ加工や追加の調整が必要です。
適度なコストパフォーマンス
S45Cは、炭素鋼の中で広く流通しており、
コストパフォーマンスに優れた材料です。
比較的安価でありながら、熱処理による強度調整ができるため、
大量生産や強度が求められる機械部品において、経済的な選択肢となります。
S45Cに適した加工法
切削加工
S45Cは、中炭素鋼であり、焼入れ前は良好な切削性を持つため、
旋盤やフライス盤を使用した加工が容易です。
工具の摩耗も少なく、仕上げ加工も精密に行うことが可能です。
熱処理
S45Cは、焼入れ・焼戻しなどの熱処理を施すことで、
引張強度や耐摩耗性を高めることができます。
焼入れは通常、水冷や油冷で行われ、硬度を上げます。
その後、焼戻しを行うことで靭性を確保しつつ、硬さを調整します。
溶接加工
S45Cは炭素鋼のため、溶接性は良くありません。
溶接を行う際は、予熱や後熱処理を適切に行い、
ひび割れや強度低下を防ぐことが重要です。
S45Cの機械的性質と物理的性質
下は、S45Cの機械的性質を表形式でまとめたものです。
| 項目 | 焼きならし | 焼入れ/焼戻し |
|---|---|---|
| 引張強さ | 570MPa以上 | 690MPa以上 |
| 降伏点 | 345MPa以上 | 490MPa以上 |
| 伸び | 20% | 17%以上 |
| 絞り | – | 45%以上 |
| 硬さ (HBW) | 167-229 | 201-269 |
| 縦弾性係数 | 約205 GPa | |
| 密度 | 約7.85 g/cm³ | |
| 熱膨張係数 | 約11.9 × 10⁻⁶ /°C | |
| 熱伝導率 | 約45 W/m・K | |
🔍 数値は参考値になります。
この表を参考に、S45Cを使用する際の機械的性質を理解し、
適切な設計や加工条件を選定してください。
S45Cの選定ポイント
使用環境
S45Cは、機械的強度が高く、
特にシャフトやギアなどの回転部品に適しています。
耐食性は高くないため、湿度の高い環境や腐食性のある環境では、
錆びや腐食が問題となる場合があります。
防錆対策として、
表面処理(メッキや黒染め処理)を施すことが推奨されます。
熱処理の適用
S45Cの強度を引き出すためには、熱処理が不可欠です。
特に焼入れや焼戻しを適切に行うことで、
部品の耐久性や寿命を大幅に向上させることができます。
寸法精度や表面硬度のバランスを取るため、
熱処理後の仕上げ加工が必要になる場合があります。
コスト管理
S45Cは、強度が高い割に比較的低コストで利用できるため、
大量生産の機械部品において経済的です。
製品全体の強度とコストのバランスを考慮して選定することが重要です。
加工後の寸法安定性
S45Cは、熱処理後に寸法変化が発生する可能性があるため、
寸法精度が要求される部品では、仕上げ加工や追加の調整が必要です。
特に、焼入れ後に発生するひずみや変形を考慮した加工設計が求められます。

S45Cは、高い強度と靱性を持ち、
熱処理による硬さの調整が可能であるため、
シャフトやギアなどの高強度部品に適しています。
S45Cに適した表面処理・熱処理
炭素鋼とは?
炭素鋼は、鉄と炭素を主成分とする金属材料で、
炭素含有量が約0.02~2.1%の範囲にある鋼のことを指します。
この範囲内で炭素量を調整することで、
強度や硬さ、加工性をコントロールできるため、
幅広い用途で使用される非常に汎用性の高い材料です。
炭素鋼の分類
炭素鋼は、炭素含有量に応じて以下のように分類されます。
| 分類 | 炭素含有量 | 特長と用途 |
|---|---|---|
| 低炭素鋼 | 0.02~0.25% | 軟らかく加工しやすい。 自動車部品、配管、建築材料などに使用される。 |
| 中炭素鋼 | 0.25~0.60% | 強度と靭性のバランスが良い。 機械構造部品やシャフト、歯車などに使用される。 |
| 高炭素鋼 | 0.60~2.1% | 非常に硬く、耐摩耗性が高い。 工具、刃物、ばねなどに使用されるが、加工性は低い。 |
炭素鋼の特長
✅ 汎用性が高い
種類が豊富で、さまざまな加工法
(溶接、切削、鍛造、圧延など)に対応可能です。
✅ 強度と硬さの調整が容易
炭素含有量を増やすと、引張強さや硬さが向上します。
一方、炭素量が少ないと加工性や靭性が向上します。
✅ 熱処理による特性の変更が可能
焼き入れや焼き戻しなどの熱処理を施すことで、
硬さ、耐摩耗性、靭性を調整できます。
✅ コストが低い
炭素鋼は製造が容易で原材料費も安いため、
コストパフォーマンスに優れています。
まとめ
S45Cは、機械設計において非常に汎用性の高い中炭素鋼です。
熱処理によって強度や硬度を調整でき、
機械的強度が要求される部品に広く使用されます。
コストパフォーマンスも優れ、加工性が良いことから、
シャフトやギア、工具など、多岐にわたる用途で利用されています。
S45Cを使用する際には、
適切な熱処理と加工後の寸法安定性を考慮し、
最適な部品設計を行うことが重要です。




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