ユニクロメッキ(光沢クロメート処理)は、亜鉛めっき後に施されるクロメート処理の中でも最も一般的な表面処理であり、青白く光沢のある外観と優れた防錆性から、機械部品や建築金物など多くの用途で使用されています。
しかし、六価クロムを使用する従来のユニクロメッキは、RoHS指令などの環境規制により使用制限がかかるケースも増えており、三価クロメート処理への移行が進んでいます。
三価処理は環境負荷が低い一方で、外観や耐食性に違いがあるため、用途に応じた選定が必要です。
本記事では、ユニクロメッキの基本構造・三価と六価の違い・RoHS対応の観点からの選定ポイント・図面指示の注意点までを網羅的に解説。設計・調達・品質管理の現場で役立つ情報を、技術的根拠とともにお届けします。
ユニクロメッキの特性
✅ 耐食性の向上
- 亜鉛メッキの表面にクロメート層を形成することで、鉄素材の酸化を抑制し、耐食性を高めます。
- ただし、過酷な環境下では、追加の防錆処理が推奨されることがあります。
✅ 外観の改善
- ユニクロメッキの表面は銀白色の光沢を持ち、見た目が美しく仕上がります。
- 外観が重要視される製品やデザイン性が求められる部品に多用されます。
- 見栄えを良くするだけでなく、製品の高級感も引き立てる効果があります。
✅ コスト効率
- 亜鉛メッキとクロメート処理の組み合わせは、他の耐食処理と比較してコスト効率に優れています。
- 大量生産が求められる場面では、安価かつ信頼性の高い処理方法として評価されています。
- コスト管理に優れた選択肢です。
🚫 寸法の安定性
- ユニクロメッキは表面を均一の厚さで処理することが難しいです。
- はめあい公差など精密な寸法精度が必要な部品には推奨されません。
🚫 耐熱特性
- ユニクロメッキは高温環境下での性能が低下する傾向があります。
- 一般的な使用環境では問題ありませんが、高温にさらされる部品での使用には適していません。
- 耐熱性が必要な場面では、他の表面処理方法を検討することが必要です。

一般的な環境での耐食性は必要十分です!
ただし、はめあい部品などの精密な部品には適しません!
ユニクロメッキの選定ポイント
アルミニウムやステンレスなどの非鉄金属には適用が難しいため、材質選定の際には、その適合性を事前に確認する必要があります。
✅ 使用環境
- 高温環境での使用には注意が必要です。
- ユニクロメッキには六価クロムが含有している為、EUではRoHS規制に含まれます。
✅ 機能要件
- 均一の厚さで処理することが難しい為、はめあい公差など寸法精度が必要な部品に適しません。
✅ コスト管理
- ユニクロメッキは、安価な処理方法であり、
- 大量生産に向いています。
コストパフォーマンスを重視するプロジェクトに最適ですが、用途や環境によっては他の防錆処理と比較して性能が劣る場合があるため、コストと性能のバランスを考慮して選定することが重要です。
✅ 材質の適合性
ユニクロメッキは主に鉄や鋼に対して効果を発揮します。
ユニクロメッキに適した材質とは?迷わないための材料選定ガイド
ユニクロメッキ(光沢クロメート)は、安価で使いやすく、見た目もきれいな防錆処理として、ボルトやナットなどの部品に広く使われています。
本項では、どんな材質がユニクロメッキに適しているのか、また適さない材料には何があるのかを、初心者にもわかりやすく解説します!
ユニクロメッキに適した材質は「鉄系材料」
ユニクロメッキが最も適しているのは、鉄(Fe)を主成分とする金属です。
よく使われる鉄系材料
材料名 | 特徴 | ユニクロ適性 |
---|---|---|
SS400(一般構造用圧延鋼材) | 安価・加工性が良い | ◎ |
S45C(機械構造用炭素鋼) | 強度が高い | ◎ |
SPCC(冷間圧延鋼板) | 板金部品に多用 | ◎ |
鉄系の鍛造品・鋳造品 | 条件次第で可能 | △(※後述) |
これらの鉄・鋼素材は、ユニクロメッキと非常に相性がよく、加工後にメッキするだけで見た目も性能も向上します。
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加工条件によっては注意が必要な材質
同じ鉄系でも、以下のような加工・処理をした素材は、メッキの付きが悪くなったり、変色したりする可能性があります。
ユニクロメッキが不向き・要注意な例
材料・状態 | 問題点 |
---|---|
鋳鉄(FC材など) | 表面に炭素や酸化物が多く、メッキがのりにくい |
熱処理材(焼入れ・焼戻し鋼) | 表面硬化層がメッキに影響 |
ワイヤーカット後の製品 | 切断面に酸化層があり、変色しやすい |
錆びた鉄材 | 表面が荒れているとメッキムラや密着不良の原因に |
前処理(酸洗い・サンドブラスト・研磨など)を行えば、ユニクロメッキが可能な場合もあります。
ステンレスやアルミはユニクロメッキに不向き
ステンレス(SUS304、SUS430など)
- 不動態皮膜があるため、メッキが密着しにくい
- そもそも錆びにくい材料なので、ユニクロメッキの必要性が低い
アルミ・アルミ合金
- 表面が酸化しやすく、亜鉛メッキとの相性が悪い
- 一般的にはユニクロメッキできない
ユニクロメッキに適した材質早見表
材料分類 | ユニクロメッキ適性 | 備考 |
---|---|---|
SS400、S45Cなどの鉄 | ◎ | 加工後そのままメッキ可能 |
SPCCなどの鋼板 | ◎ | 板金部品に最適 |
鋳鉄・熱処理鋼 | △ | 前処理すれば可能な場合もある |
ステンレス | ❌ | 不向き。別の処理推奨 |
アルミ・非鉄金属 | ❌ | ユニクロメッキ不可 |
設計時のポイント
- 図面に「表面処理:ユニクロメッキ」と記載する場合は、素材が鉄であることが前提
- 材料が不明なままユニクロメッキを指定すると、メッキ不可や不良品の原因になることも
- ステンレス・アルミには専用の処理(アルマイトなど)を検討
設計者のアドバイス

「ユニクロメッキを使う前提なら、材料は“鉄”が基本。
鋳造品や熱処理品を使うなら、前処理や変色リスクを考慮しておきましょう!」
RoHS対応ってなに?図面指示で気をつけたいポイント!
RoHS指令とは?
「RoHS(ローズ)指令」とは、EUが定めた電子・電気機器に使ってはいけない有害物質の制限ルールです。
RoHSで使用が制限されている物質の中に、
六価クロム(Cr⁶⁺)
があります。
この六価クロムは、旧来のユニクロメッキに含まれているため、そのままではRoHS非対応です。
ユニクロメッキとRoHSの関係
処理名称 | RoHS対応? | 特徴 |
---|---|---|
通常のユニクロメッキ | ❌ 非対応 | 六価クロムを使用 |
三価クロメート処理 | ✅ 対応 | 有害性の低い三価クロムを使用 |
RoHS対応三価ユニクロ | ✅ 対応 | 三価クロメート仕様のユニクロメッキ |
つまり、「ユニクロメッキ」とだけ書くとRoHS非対応になる可能性があるため、注意が必要です。
図面や部品指定での注意点
ユニクロメッキを使いたい場合、以下のような指示の書き方が大切です。
NG例(RoHS非対応になる可能性)
表面処理:ユニクロメッキ
OK例(RoHS対応を明記)
表面処理:ユニクロ(三価)RoHS対応品
なぜ今「RoHS対応」が必要なの?
- 海外輸出製品では、RoHS非対応だとEUに出荷できない
- 国内製造でも、大手メーカーや電機業界ではRoHS準拠が必須
- RoHS対応品は環境・安全性の観点から今や標準化されつつある
ユニクロメッキを使うなら「RoHS対応かどうか」を確認しよう!
項目 | 内容 |
---|---|
ユニクロメッキ | 安価で防錆性あり、汎用部品に多い |
問題点 | 従来品は六価クロムでRoHS非対応 |
解決策 | 三価クロメートやRoHS対応三価ユニクロを使う |
設計上の注意点 | 図面に「RoHS対応」「ユニクロ(三価)」を明記する |
🔧 設計者のひとことアドバイス

「ただのユニクロ指定では、RoHS非対応の部品が納品されるリスクがあります。
特に輸出や大手との取引では、RoHS対応明記が必須です!」
亜鉛めっきとは?
亜鉛めっきは、金属表面に亜鉛の層を形成する表面処理の一種です。
金属部品、特に鉄鋼製品の腐食を防ぐ目的で広く使用されています。
亜鉛は鉄よりも先に腐食する性質(犠牲防食作用)を持っており、基材を保護する役割を果たします。
建築、自動車、電気製品など、さまざまな分野で活用されています。
亜鉛めっきの表面にさらにクロメート処理を施したものがユニクロメッキです。
「ユニクロ」は、メッキ後の表面にクロム化合物の皮膜を形成することで、耐食性や外観品質を向上させています。ユニクロめっきは、銀白色の仕上がりが特徴で、美観が求められる用途にも適しています。
亜鉛めっきの特性
🔍犠牲防食作用
亜鉛は鉄よりも電気化学的に腐食しやすいため、錆が発生した場合でも亜鉛層が犠牲になり、基材を保護します。
🔍優れた耐食性
特に湿気や塩害が多い環境での使用に効果的。
クロメート処理を加えたユニクロめっきでは、さらに耐食性が向上します。
🔍コストパフォーマンスの高さ
他の高耐食性表面処理と比較してコストが低く、加工効率も良いため、量産品に向いています。
🔍見た目の良さ
ユニクロめっきは銀白色の美しい仕上がりで、装飾用途にも適します。
クロメートメッキの種類と特徴
種類 | 特徴 | 外観 |
---|---|---|
光沢クロメート(ユニクロ) | 青白い色味の膜で、装飾性が高く、一般的な耐食性を持つ。 | 銀白色(青白い反射) |
黒色クロメート | 黒色の外観を持つ膜で、主に装飾目的や外観の意匠性が求められる場合に使用される。 | 黒色 |
有色クロメート(虹色クロメート) | 虹色の光沢がある膜で、非常に高い耐食性を持つ。膜厚が厚めで、過酷な環境下でも使用可能。 | 虹色 |
クロメート処理の注意点
🚫高温環境での性能低下
高温条件下では、クロメート層が劣化し、耐食性が低下することがあります。
🚫環境規制への対応
従来のクロメート処理には六価クロムが使用されていましたが、これは人体や環境に有害とされ、規制が進んでいます。
現在では、三価クロムを使用した代替技術が主流となっています。
🚫耐摩耗性の制限
クロメート層は硬度が低いため、摩擦や衝撃が多い用途には適していません。
必要に応じて他の表面処理との併用が推奨されます。
ユニクロメッキと三価クロメートメッキの比較:特性と使い分け
機械設計における表面処理では、耐食性や外観を向上させる目的でさまざまなメッキが使用されます。その中でも「ユニクロメッキ」と「三価クロメートメッキ」は、亜鉛メッキを施した後にクロメート処理を行うことで、さらなる性能を付与する一般的な選択肢です。これらの処理は一見似ていますが、用途や特性には違いがあります。本項では、それぞれの特徴と使い分けについて詳しく解説します。
ユニクロメッキとは
ユニクロメッキは、六価クロムを使用したクロメート処理の一種で、亜鉛メッキの表面に透明な保護膜を形成するものです。以下の特性があります。
- 外観
- 透明で銀色の仕上がりが特徴。美観を重視する部品に適している。
- 耐食性
- 六価クロムによる高い耐食性を持つが、現在では環境規制により使用が制限される場合がある。
- 用途
- 装飾性が求められる部品や比較的軽度の耐食性が求められる機械部品に多用されてきた。
三価クロメートメッキとは
三価クロメートメッキは、三価クロムを使用した処理で、環境規制に適合した次世代のクロメート処理技術です。以下の特性があります:
- 外観
- 従来のユニクロメッキと似た透明な銀色の仕上がりが得られるが、やや青みがかる場合がある。
- 耐食性
- 六価クロムに匹敵する耐食性を持ちながら、環境に優しい。
- 用途
- RoHS指令などの環境規制に対応するため、多くの分野でユニクロメッキに代わって使用されている。
比較表
特性 | ユニクロメッキ | 三価クロメートメッキ |
---|---|---|
使用クロム種 | 六価クロム | 三価クロム |
耐食性 | 高い | 高い(ユニクロメッキに匹敵) |
環境対応 | 不適合(RoHS非対応) | 適合(RoHS対応) |
外観 | 銀色(透明感が高い) | 銀色(やや青みを帯びる場合あり) |
用途 | 装飾性や軽度の耐食性を求める部品 | 環境対応が必要な部品 |
コスト | 比較的低コスト | やや高コスト(環境規制対応のため) |
選定のポイント
- 環境規制の有無
- 環境規制(RoHS指令)が求められる場合は、三価クロメートメッキを選定する必要があります。
- 耐食性の要求
- どちらの処理も高い耐食性を持ちますが、処理条件によって差が出る場合があります。
- 長期間の防錆が求められる場合は、具体的な試験結果を確認してください。
- コスト
- ユニクロメッキは低コストであるため、環境規制が不要な場合には適した選択肢となります。
- 一方、三価クロメートメッキは若干コストが上昇する傾向がありますが、規制対応が可能です。
ユニクロメッキと三価クロメートメッキは、それぞれに特性と用途がありますが、現在の環境規制を考えると、三価クロメートメッキが主流となりつつあります。

機械設計における表面処理を選定する際には、規制対応、耐食性、コストを総合的に検討し、最適な方法を選ぶことが重要です。
まとめ
ユニクロメッキ処理は、耐食性、外観、コスト効率に優れた表面処理方法です。特に、大量生産が必要な部品に最適です。ただし、耐熱性や環境に応じた適用には注意が必要です。設計時には、使用環境や部品の機能要件を十分に考慮し、最適な表面処理方法を選定することが重要です。
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